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    【専門家に聞く】子宮内フローラと妊娠率・生児獲得率の関係

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    今回は、子宮内フローラと不妊の関係にいち早く着目し、世界で初めて子宮内フローラ検査の実用化に成功したVarinosのCEO桜庭さんに直接話を聞きました。

    子宮内フローラとは?

    編集部:
    「腸内フローラ」は健康やメンタルと深い関係があるとして、もう何年も前から注目されていますが、「子宮内フローラ」は、まだそこまで知られていないですよね。

    桜庭さん:
    そうかもしれません。実は「子宮内フローラ」が発見されたのも最近のことなんです。

    つい最近まで、子宮内は無菌と考えられていた

    桜庭さん:
    2015年、米ラトガース大学の研究者により、子宮内に細菌はいないという常識が覆されました。無菌だと思われていたのは、子宮内の細菌が超微量で、それまでの技術では検出できなかったというところが大きいと考えられます。

    子宮内にどのような細菌がいるかは、ゲノム解析により調べることができるのですが、ゲノム解析技術の向上で、超微量な菌まで解析できるようになったことが、この発見につながっています。

    編集部:
    無菌と思われていたくらい超微量な細菌を検出するというのは、すごく技術的に難しそうですね。

    桜庭さん:
    そうなんです。私たちも起業当初、そこに一番苦戦しました。最初は、腸内フローラと同じような手法で解析しようと思ったのですが、子宮内の超微量な細菌を検出しようとすると検査試薬中の細菌まで一緒に検出されてしまうなど、なかなかうまくいきませんでした。
    試行錯誤を重ね、Varinosの開発チームが、これまでにない独自の方法で実用化できる検査を開発し、医療機関に提供できるようになりました。

    それが、世界で初めて実用化に成功した「子宮内フローラ検査」です。

    非常に高度な技術が必要とされるので、まだ世界でも数社しか子宮内フローラの検査を実用化できていません。ちなみに、子宮内フローラの検査といっても、検査方法や解析の結果がどの検査会社でも同じということではありません。これはまた別の機会にお話しますね。

    子宮内フローラの環境が妊娠率にも影響

    編集部:子宮内には、そもそも超微量しか細菌がいないということでしたが、それなのに妊娠や着床に影響するのですね?

    桜庭さん:近年の研究で、子宮内フローラの菌環境が妊娠率や生児獲得率に影響することがわかってきました。それが下図です。

    子宮内フローラにおいては、善玉菌の「乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)ラクトバチルス」がどれくらいいるかが重要と考えられています。子宮内フローラにおける細菌の存在比で、ラクトバチルスが90%以上いると望ましいと考えられています。

    ラクトバチルスが90%以上いる方の妊娠率は70.6%、生児獲得率は58.8%に対し、90%未満の方の妊娠率は33.3%、生児獲得率は6.7%という結果がでています。

    「微量しかいないのに妊娠や着床に影響するか」という質問をいただきましたが、正確に言うと、研究からわかっていること(論文として発表されていること)は、子宮内にいる細菌の「量」ではなく、「割合」が影響するということです。

    なので、わたしたちVarinosの「子宮内フローラ検査」では、ラクトバチルスの割合が少なかった場合、医師が適切な治療計画を立てられるよう、非常に微量しかいない菌の割合までも検出し、結果を医師にレポートしています。

    子宮の中の菌が微量しかいないから妊娠や着床に影響がないという研究結果は今のところありません。医師も患者さんもできるだけ詳しく子宮内フローラの状態を知りたいと思われているので、我々はその期待に応えるべく検査技術を磨いた結果、「どこよりも精度の高いレポートが上がってくる」と医師たちから評価いただき、多くの医療機関に導入いただいています。

    編集部:
    なるほど!子宮内フローラの検査といっても、検査会社によって検査の方法が異なるから、どのくらいの精度で超微量な細菌まで検出できるか違ってくるんですね!

    善玉菌・ラクトバチルスの「割合」が少ないと、なぜ妊娠率・生児獲得率が下がるのか

    編集部:
    ラクトバチルスが90%以上いると望ましいということでしたが、ラクトバチルスの割合が少ないと、なぜ妊娠率や生児獲得率が低くなってしまうのでしょうか。

    桜庭さん:
    ラクトバチルスの割合が少ないということは、それ以外に細菌性腟症の原因となる菌など、悪玉菌がいる環境になっている場合もあるからです。

    一般的に
    ①悪玉菌により生殖器内に炎症が起こると、免疫細胞が活発に働くようになり、受精卵まで異物として攻撃されてしまう
    ②悪玉菌の中には、早産や流産につながると考えられている菌もいる
    と考えられています。

    そのため、ラクトバチルスの割合を高い(90%以上)状態にしておくことが望ましいとされています。

    編集部:
    そこで出てくるのが、「子宮内フローラ検査」なのですね。

    桜庭さん:
    そうです。「子宮内フローラ検査」で、ご自身の子宮内の菌環境を把握いただくことができます。

    ※次回は、「子宮内フローラ検査」がどのようなもので、何がわかるのかをお届けします。

    専門家プロフィール

    Varinos株式会社
    創業者 代表取締役CEO
    桜庭 喜行

    埼玉大学大学院で遺伝学を専攻。博士取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターでのゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。その後、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べるNIPTと呼ばれる「新型出生前診断」を導入したほか、医療機関や研究機関に対し、NIPTやPGT-Aと呼ばれる着床前診断などの技術営業を経て、2017年2月にゲノム技術による臨床検査サービスの開発と提供を行うVarinos株式会社を設立。同年、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化するなど、生殖医療分野の検査に精通。