一番妊娠しやすい日はいつ?オギノ式での排卵日の計算方法や体の変化で予測する方法
妊活を始めたばかりの頃や体外受精(顕微授精)のお休み期間に、一番妊娠しやすい日を特定し、そのタイミングで性交渉を行おうと思っても
「一番妊娠しやすい時期がいつなのか知らない」
「排卵日の計算方法がわからない」
「月経周期が一定ではなく、一般的な計算で排卵日を特定することができない」
等の疑問も持たれる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、古賀文敏ウイメンズクリニックの古賀院長に
・オギノ式を活用した排卵日の計算方法
・体の変化から排卵日を予測する方法
・タイミング法で妊娠の確率を高める方法
等について、お話をうかがいました。
目次
一番妊娠しやすい時期は「排卵期」
妊娠を希望される場合の最初のステップは、最も妊娠しやすいタイミングに合わせ、性交渉を行うことです。
女性のからだは、通常、月に一度、成熟した卵子が卵胞をやぶり、卵巣の外に排出(=排卵)されます。排卵された卵子の寿命は24時間ほどのため、そのタイミングに合わせて性交渉を行い、受精・着床できると妊娠成立となります。
そのため、まずは、ご自身の排卵期や排卵日がいつかを予測することから始めます。
排卵日は月経開始から2週間後ごろが目安
女性は「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」というサイクルで、からだに異なる変化が訪れます。
月経期
月経、いわゆる生理は、約1か月の周期で訪れます。
妊娠が成立しないと、不要になった子宮内膜がはがれ落ち、3~7日間かけ血液とともに排出されます。これが月経です。
月経期は妊娠の成立や継続に欠かせないホルモンである「プロゲステロン」、そして子宮に作用して子宮内膜を増殖させ妊娠の準備を整えるホルモンである「エストロゲン」も減少しているため、妊娠しにくい時期と言えます。
なお、
正常な月経周期は25〜38日間とされています。周期がこれよりも短い、あるいは長い場合は一度医療機関を受診されるとよいでしょう。
卵胞期
卵胞期は、月経終了から1週間程度の期間です。
卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞が大きくなると同時にエストロゲンの分泌も増えていきます。それに伴い、新しい子宮内膜が増殖していきます。
排卵期
卵胞期を経て、エストロゲンの分泌量がピークに達すると、卵巣内にある卵胞から卵子が排出されます。これが排卵です。
月経が28日周期の場合、排卵日は月経開始から2週間後ごろが目安となります。
なお、
排卵日の2日前頃から排卵日にかけてが、最も妊娠しやすい時期です。
(詳細は後述)
黄体期
排卵が終わってから、次の月経がはじまるまでの期間が黄体期です。
黄体期は、受精卵が着床しやすくなるように、子宮内膜が厚くなる時期です。
黄体期は、月経前の期で、「月経前症候群(Premenstrual syndrome/PMS)」と呼ばれるイライラ感や緊張、不安、眠気、注意力散漫、抑うつ、攻撃性、食欲の変化、甘味や塩分の渇望などが起こりやすくなる時期でもあります。
【重要!】排卵日の性交渉が、一番妊娠率が高いわけではない
『タイミング法の場合、「排卵日に性交渉をするのが良い」と思っている患者さんも多いのですが、妊娠率は、排卵日が一番高いわけではありません。下図で示されているように、
排卵1日前~2日前が、一番妊娠率が高いことがわかっています。この時期は、透明な伸びるおりものが出ているときで、精子が子宮に向かって登っていきやすい状態になっています。
なお、卵子の寿命は排卵後24時間ほどですが、精子は2~3日生きることができるため、
排卵日の2日前頃から排卵日に向け、性交渉の回数を重ね、常に精子が女性の体の中にいる状態にしていただくのが良いでしょう。
(古賀院長)』
精子の寿命は長いが、デリケート?
精子の寿命は2~3日と、卵子の寿命よりは長いですが、人工授精を行う際に、精子を機械にかけ、細菌などを取り除く処理をすると弱ってしまい、半日程度しか生きることができません。
『人工授精を行う場合は、排卵にタイミングを合わせた方が良いと言えますが、タイミングを合わせられない人工授精であれば、タイミング法による性交渉の方が妊娠の確率は高いと言えます。(古賀院長)』
自分で排卵日を計算/予測する方法
どの女性も月経開始から2週間後ほどが排卵日というわけではありません。そのため、妊活においては、まずご自身の排卵日を予測することが重要になります。
排卵日をご自身で計算/予測する方法としては、以下4つの方法が挙げられます。
1. オギノ式で排卵日を予測
2. 排卵日予測検査薬を活用し、排卵日を予測
3. おりものの状態から予測
4. 基礎体温の変化から予測
1.オギノ式で排卵日を予測
オギノ式は、1924年に産婦人科医の荻野久作氏が『日本婦人科学会雑誌』にて発表した排卵日の予測方法です。
オギノ式では、「月経開始日から14日後に排卵が起こる」と考えます。
つまり月経予定日から14を引けば、月経から何日目に排卵が起こるかを推定できます。
例)
月経周期が28日の場合
「28-14=14」
月経予定日の14日後を排卵予定日と考えます。
月経周期が30日の場合
「30-14=16」
月経予定日の16日後を排卵日と考えます。
前述のとおり、オギノ式で導いた排卵予定日にだけ性交渉をするのではなく、前後数日を含めた期間に性交渉を行うと良いでしょう。
2.排卵日予測検査薬を活用し、排卵日を予測
薬局などで購入できる排卵日予測検査薬は、排卵の前に分泌量が急激に増加する尿の中の「黄体形成ホルモン(LH)」の濃度を測り、排卵を予測します。
排卵日予測検査薬は、基本的に排卵日を約1日前に予測できるものです。
タイミング法を行う場合、排卵の2日前から妊娠率が高くなるため、排卵日予測検査薬で陽性が出た場合は、なるべく早くタイミングをとることが重要です。
『
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は、そもそもLHの値が高いため、排卵と全く関係のない時に排卵日予測検査薬を使用しても陽性(偽陽性)となってしまいます。
PCOSの場合、排卵が安定せず、いつ排卵するか知りたいという気持ちもあると思いますが、排卵日予測検査薬で予測することは難しいと言えます。(古賀院長)』
3.おりものの状態から予測
排卵期が近づくにつれ、おりものの量は多くなり、形状も普段のサラっとした形状から、透明でよく伸びるおりものに変化します。
おりものの変化は、排卵日が近づくのを知らせる目に見える変化でもあるため、日ごろから、おりものの変化には目を向けるようにすると良いでしょう。
4.基礎体温の変化から予測
基礎体温とは、活動による体温の変化などの影響を受けない、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していない状態にあるときの体温のことです。そのため、目覚めてすぐ、体を寝かせたまま測ることがポイントとなります。
また、使用する体温計も一般的な0.1単位(小数点第一位)で表示される体温計ではなく、0.01単位(小数点第二位)まで表示される基礎体温計を使うようにしましょう。
毎日の基礎体温をグラフにつけていくと、低温期と高温期があり、生理開始~排卵前までの低温期のあと、基礎体温が0.3~0.5℃ほど高くなる時があることがわかります。このタイミングに排卵が起こったと考えます。
『排卵日の1~2日前の妊娠率が一番高いということから考えると、その時はまだ基礎体温は上がってない状態です。つまり、
基礎体温は、未来の排卵日を知ることはできず、排卵があったという結果を知ることができる方法
とお考えいただくと良いでしょう。
実際、アメリカなどでは、基礎体温は測らない流れになってきていますが、基礎体温を測ることが無意味かというとそうではありません。基礎体温で低温期と高温期の差がしっかりしている方や月経周期が規則的な人は、過去の基礎体温から排卵日を予測することができるので、その1~2日前くらいからタイミングをとっていただくと良いでしょう。ただ、
基礎体温だけを頼りに厳密にタイミングをとるのではなく、そろそろ排卵しそうというあたりで2~3回くらいタイミングを取っていただくのが理想です。
(古賀院長)』
排卵日は月経周期が正常の範囲内で、規則正しい方であれば、ある程度計算をして予測することができますが、不規則な方の場合、計算での予測が難しくなります。そういった場合は不妊治療クリニックでタイミング法/タイミング療法の指導をしてもらうという方法もあります。
不妊治療クリニックで進めるタイミング療法とは
タイミング療法とは、一番妊娠しやすいタイミングに合わせて性交渉を行う、不妊治療の方法です。
自己流で一番妊娠しやすい排卵期に性交渉を行うのと、不妊治療クリニックで行うタイミング療法では異なる点があります。
違い①事前に不妊検査を行う
不妊治療クリニックでは、事前に不妊検査を行い、卵巣や子宮、精子などに不妊につながる問題がないかを調べます。主だった所見がない場合は、タイミング療法を進めます。ただし、この段階で治療が必要な原因がみつかった場合、治療を優先します。
検査を通し、より正確に排卵日を予測
月経周期や基礎体温を付けている場合は過去の排卵日から、直近の排卵日を予測します。
排卵日が近づいてきたら、より正確に排卵日を予測するため、以下の検査を行います。
卵胞の大きさや子宮内膜の厚みを測る経腟超音波検査
経腟超音波検査では、卵胞の大きさや子宮内膜の厚みを測ります。
自然周期においては、毎月一つの卵が排卵されます。排卵される卵は、月経後、毎日1.5~2mm程度のペースで成長し、卵胞径が18~22mm程度になると排卵されると予想します。
経腟超音波検査によって、測定した卵胞径の大きさや成長ペース、子宮内膜の厚みから医師が排卵日を予測します。
卵胞の熟成により大量に分泌されるLHを尿検査で調べる
経腟超音波検査で卵胞の大きさや子宮内膜の厚みを確認し、ある程度、排卵日が予測できた段階で、尿検査によりLH (黄体形成ホルモン)の分泌量を測ります。一般的には、LHの分泌量がピークを迎えた12時間後くらいに排卵が起こるとされています。
これらの検査結果をもとに、あと何日で排卵するかを予測し、より妊娠率が高まる性交渉のタイミングを医師がアドバイスしてくれます。患者様は、そのタイミングに合わせて性交渉を行い、妊娠判定を待ちます。
タイミング法による妊娠率と次のスタップに進む目安期間
原因不明不妊における治療別の累積妊娠率を調べた研究では、原因不明の不妊症患者において
・タイミング療法による月経周期あたりの妊娠率は当初はおよそ5%
・累積妊娠率は経過観察6ヶ月でおよそ50%
・24ヶ月でおよそ60%、それ以降横ばい
という結果でした。
この結果から、タイミング法を開始し、1年を経過しても妊娠できない場合、不妊治療のステップアップを検討されたほうが良いでしょう。
ただし、年齢や個々人の体の状況に応じては、1年を待たずに、次のステップへ移行したほうが良いケースもあります。自己判断せず、医師に相談することをお勧めします。
知っておきたい排卵のこと①~月経周期が短いあるいは長い場合、トラブルが隠れていることも
正常な月経周期は25日~38日とされています。これよりも月経周期が短い、あるいは長くなってきている場合、排卵に関係するトラブルや不妊要因がある可能性があります。
月経周期が短くなるのは、卵の残数が少なくなっているサイン
『28日くらいの周期で月経が来る方は、基本的に排卵していると考えてよいと思います。ただし、もともと月経周期が28日だった方が、25日より短くなってきた時は注意信号とお考え下さい。これは、
残りの卵の数が少なくなってきているサインです。残りの卵の数が少なくなってきているサインです。
この場合、年齢に関係なく、できるだけ早い段階で医療機関の受診をされたほうがよいでしょう。(古賀院長)』
月経周期が長くなる場合、40歳以降では更年期の影響で排卵していない可能性も
『月経周期が長くなる場合、若い方は色々と要因が考えられますが、
40歳をすぎている方の場合、更年期の影響が考えられます。
特にそれまで月経周期が正常だったのに、長くなったという場合は更年期の影響で、排卵しなくなってしまった可能性が考えられます。(古賀院長)』
これらの場合、自己流で排卵期に合わせた性交渉に取り組み続けるのではなく、不妊治療クリニックを受診し、不妊検査を受けるようにしましょう。
知っておきたい排卵のこと①~月経症状はあるのに、排卵していないこともある?無排卵月経とは?
排卵期に合わせて性交渉を行うことが、妊娠を目指すうえでは重要ですが、排卵したかどうかは目で確認することができません。実は、月経はあっても、排卵はしていないというケースもあります。
それが無排卵月経(無排卵症)です。
無排卵月経とは、排卵せずに月経(実際には月経ではない)が来る状態のことを言います。たまに起こる方もいれば、慢性化している方もいます。
無排卵月経の原因
無排卵月経は、様々な要因が考えられます。
・ホルモンバランスの乱れ
・卵巣機能の低下
・PCOS
・甲状腺疾患高プロラクチン血症などの病気
・体重の大幅な増減
無排卵月経の症状
以下の症状がある場合、無排卵月経の可能性があります。医療機関を受診し、詳しく検査することをお勧めします。
・月経周期が25日より短い、あるいは月経周期が以前より長くなってきている
・月経時の出血が少ない、あるいは多い
・月経周期が不規則
・月経時以外に、出血がある(=不正出血)
・基礎体温を測ると、高温期がない
『基礎体温において、低温期と高温期の差があまりないという方も中にはいらっしゃいます。例えば、低温期が36.5度くらいの方もいますが、筋肉質の方や栄養が整っている方の場合、低温期にこれくらい体温がある方もいます。ただし、何かしら不妊につながる要因がある場合もあるので、一度、専門のクリニックで卵の発育や高温期のホルモンを測ってもらうとよいでしょう。これらの検査で問題なければ、体温についてはあまり気にしなくても良いと思います。(古賀院長)』
一番妊娠しやすい日の計算や予測方法に関するまとめ
一番妊娠しやすい日や、その日を調べる方法、また月経期間が変化した場合、その背景には不妊につながる要因がある可能性もあることについてご紹介しました。
・一番妊娠しやすい時期は「排卵期」。
・排卵日は月経開始から2週間後ごろが目安。排卵日の2日前頃から排卵日にかけてが、最も妊娠しやすい時期。
・排卵日を自分で計算/予測する方法としては、「オギノ式で排卵日を予測」「排卵日予測検査薬を活用」「おりものの状態から予測」「基礎体温の変化から予測」といった方法がある。
・不妊治療クリニックで進めるタイミング療法の場合、事前に不妊検査を行い、卵巣や子宮、精子などに不妊につながる問題がないかを調べ、主だった所見がない場合、排卵日が近づいてきたら、経腟超音波検査や尿検査などを行い、より正確な排卵日を予測し、性交渉のタイミングをアドバイスする。
・月経はあっても、排卵はしていない無排卵月経(無排卵症)というケースもある。
この記事の監修者
古賀文敏ウイメンズクリニック
古賀 文敏 院長
1996年 大分医科大学(現大分大学)卒業
久留米大学産婦人科入局
1999年 国立小倉病院周産期病棟医長
2004年 久留米大学病院不妊・内分泌部門主任
2007年 福岡市中央区大名に古賀文敏ウイメンズクリニック開院
2014年 福岡市中央区天神に移転・拡張、胎児診断部門併設
2021年 事業構想大学院大学卒業、事業構想修士(MPD)
[役職]
日本生殖心理学会理事長、日本レーザーリプロダクション学会副理事長、
日本IVF学会理事、日本受精着床学会評議員、日本生殖内分泌学会評議員
[資格]
日本産科婦人科学会専門医、日本人類遺伝学会専門医、
福岡大学産婦人科臨床教授