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    自然妊娠も含め、選択肢をできるだけ広げ、不妊治療を総合的に考える_高橋ウイメンズクリニック・高橋敬一院長

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    不妊治療に向き合う医師に直接お話を聞かせていただくインタビュー企画。

    今回は、体外受精だけではなく、自然妊娠も含め“総合的に”治療を行われている高橋ウイメンズクリニック・高橋院長に
    ◇不妊治療で重視している「基本検査」
    ◇不妊因子として一番多い卵管へのこだわり
    ◇子宮内フローラ検査について、どのように考えているか
    ◇患者さんに指導している食生活について

    などを伺いました。

     

     

    体外受精と一般不妊治療、どちらの可能性も追求

    ―高橋ウイメンズクリニックの特徴を教えてください。

    高橋先生:
    当クリニックは、不妊治療を専門としていますが、体外受精専門のクリニックではありません。患者さんの真の望みは、体外受精をすることではなく妊娠・出産することです。それを叶えるためには、体外受精だけを推し進めるのではなく、自然妊娠の可能性も追求し、選択肢を広げることが重要と考えています。

    当然、体外受精の技術も追求していますし、一回あたりの妊娠確率でみれば体外受精で妊娠する確率の方が一般不妊治療より高いですが、個人で見た場合、一般不妊治療で妊娠する方も少なくないのです。不妊治療クリニックに通院しているからと自然妊娠の可能性を捨ててしまうと妊娠できる可能性を低くしてしまっているということになります。

    だからこそ、“選択肢をできるだけ広げ、不妊治療を総合的に考える”、というのが当クリニックの特徴と言えます。

    ―総合的に診るというのは、幅広い知識や経験が必要になってくるのではないでしょうか。

    高橋先生:
    それはあると思います。私が体外受精だけではなく総合的に診断・治療ができるのは、日本で体外受精が本格的に始まる前から、様々な不妊の原因を追究していたことや、卵管にもこだわりを持ち卵管のマイクロサージェリーといった手術も含め、多様な経験を積んできたからこそだと思います。

     

    不妊原因として最も多い「卵管因子」

    ―卵管にこだわりを持たれているというお話は、YouTubeの「不妊治療に対する院長の想い」でも拝聴しました。その理由を教えてください。

    高橋先生:
    卵管にこだわっている理由は2つです。一つは、女性の不妊原因として一番多いのが卵管因子だからです。二つ目は、私自身、クラミジア感染の研究で海外に留学もしていましたが、クラミジア感染は卵管の癒着を起こし、不妊症の原因にもなります。
    このようなエビデンスやバックグラウンドから、卵管にはこだわりを持っています。

    当クリニックでは卵管造影検査に重きを置いており、検査件数は日本で5本 の指に入るくらい多いと聞いています。そのほかに、卵管鏡下卵管形成術という手術も行っていますし、選択的卵管造影開通術という独自技術も提供し、自然妊娠の可能性も追求しています。

    もちろん、不妊の要因はそれだけではないので、精子検査や着床に影響のあるポリープや粘膜下筋腫の有無を調べる「子宮鏡検査」などにもこだわりを持ち、体外受精と一般不妊治療を対立させるのではなく、併せて考えることで、その方にとってベストな方法を提案しています。

    ※卵管造影検査とは:
    造影剤を使ったレントゲン撮影で、子宮と卵管の通り具合を検査するための検査。

    ※卵管鏡下卵管形成術とは:
    卵管の間質部が閉塞している方に、バルーンで卵管を拡張/開通する手術

    ※選択的卵管造影開通術とは:
    卵管造影検査で、卵管(間質部)閉塞がある場合、即座に卵管開口部に特別のカテーテルをあてて、卵管を開通する手術。高橋ウイメンズクリニック独自の技術。

    【不妊治療に対する院長の想い】 千葉県の不妊治療 高橋ウイメンズクリニック
    https://youtu.be/mpX74gyhSZk

     

    妊娠に有効とされている「基本検査」からはじめ、治療計画を検討

    ―貴クリニックでは、どのような流れで不妊治療を進められているのでしょうか。

    高橋先生:
    まず、以下の「基本検査」を受けていただきます。

    ・AMH(アンチミューラリアンホルモン)
    ・LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、プロラクチン
    ・卵管造影検査
    ・精液検査

    上記の他に
    ・甲状腺機能、貧血、ビタミンDを調べる検査
    ・子宮鏡検査
    などを勧めています。

    当クリニックでは、これらの検査を1か月ですべて行うことができます。
    そして、結果を踏まえ、その方に合った治療方針を提案するという流れです。

    ただ、中には、基本検査というネーミングのせいか、レベルが低い検査なのではないかと思われている方もいるようです。基本検査というのは、経験や医学的なエビデンスの蓄積で一番重要とされている検査です。もっと言えば、今までの評価から一番妊娠に直結する有効なものということです。それをおろそかにして、いきなり体外受精をはじめるというのは逆に非効率です。実際、重症の卵管水腫など卵管造影検査をするとわかる疾患もあるのですが、それに気づかないまま治療を進めると妊娠率が1/2~1/3に下がってしまいます。

    ※アンチミューラリアンホルモン(AMH)とは:
    卵巣にどのくらい卵子が残っているかを調べる検査。採血により、血中のAMH値を測定。卵巣内に蓄えられている初期の卵胞の数が少なくなると、AMHの値が低くなる。抗ミュラー管ホルモンともいう。

     

    良い胚を3回戻しても妊娠・着床しない方には、子宮内フローラ検査を

    ―子宮内フローラ検査については、どのようにお考えでしょうか。

    高橋先生:
    まず、「子宮の中」を調べることはとても大切だと思っています。そのため、先ほどこだわっていると話した子宮鏡検査は初期、そしてルーティンで行い、子宮内筋腫や子宮内膜ポリープといった肉眼でわかるものがあれば、手術で対応します。
    一言で子宮の中といってもこれら肉眼でわかる異常については、従来からわかっていましたが、着床の障害となっている目に見えない要因については解明されていませんでした。

    それが5年前頃より、研究が進み
    ・慢性子宮内膜炎
    ・子宮内フローラ
    ・免疫(Th1/Th2)
    ・着床の窓
    が着床に関係しているのではないかと考えはじめられるようになりました。これらはまだ評価の途中ですが、個人的に着床という観点で重要なのではないかと考えているのは「慢性子宮内膜炎」と「子宮内フローラ」です。慢性子宮内膜炎と子宮内フローラは関係しており、子宮内フローラが乱れると慢性子宮内膜炎になりやすいのではないかと。そういう意味で子宮内フローラには注目しています。

    ―子宮内フローラ検査はどういった方に行われているのでしょうか。

    高橋先生:
    現状は、主に体外受精をされている方で、良い卵(胚)を3回戻しても妊娠・着床しない方というのを一つの目安とし、検査を勧めています。それ以外には、慢性子宮内膜炎や感染による流産既往の方に子宮内フローラ検査をお勧めしています。

    子宮内フローラ検査というのは、子宮内の菌環境を調べる検査です。従来、子宮の中は無菌と考えられていましたが、PCR検査ができるようになったことや検査機器の進歩により、子宮の中の詳しい環境が調べられるようになりました。
    通常、子宮の中は、ラクトバチルスという乳酸菌が多いことがわかってきており、不妊治療に役立てています。

    今後、子宮内フローラが着床障害に関係しているという、より良いデータが得られれば、一般不妊治療を行っている方で原因不明の不妊の方や、子宮鏡検査でマイクロポリープや発赤など子宮の中に異常がある方に対しても、より積極的に子宮内フローラ検査を活用していきたいと考えています。

    ※PCRとは:
    生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる検査のこと。細菌にもDNAがあり、Varinos社の子宮内フローラ検査は、医療機関で採取した子宮内腔液から細菌のDNAだけを取り出し、それを増幅させ、高速でDNA配列を解読できる機器を用い、どのような細菌がどのくらいの割合で存在しているかを調べている。

    子宮内フローラ検査について、わかりやすく解説!

     

    ラクトバチルスが80%未満の場合は、乳酸菌製剤等を用いた治療を実施

    ―子宮内フローラ検査の結果が良くなかった場合、どのような治療をされているのでしょうか。

    高橋先生:
    当クリニックでは、現状、ラクトバチルスの存在比が80%以上か未満かを目安とし、治療をすべきかの判断をしています。これまでの患者さんの傾向としては、ラクトバチルスが十分いるか極端に少ないかです。

    子宮内フローラ検査の結果で、ラクトバチルスが80%未満、あるいは治療が必要な細菌がいるとわかった場合、
    ・乳酸菌製剤の内服や腟剤
    ・抗生物質
    により治療
    しています。

    乳酸菌製剤については、妊娠するまで継続して飲んでいただいています。腟剤は毎日入れるのも大変ですので、胚移植の5日前から入れていただき、妊娠された場合はその後2~3週間継続してもらうようにしています。

    なお、子宮内フローラが改善されたかを調べるため、再検査も行っていますが、必須ではありません。子宮内フローラ検査は結果がでるまで1か月程度かかるため、再検査より胚移植を優先することも多いです。

    ―子宮内フローラ検査の結果が良くない方の共通点はありますか。

    高橋先生:
    現時点では、はっきりとしたことは言えませんが、私自身は腸内細菌と子宮内フローラの関係に注目しており、腸内細菌が乱れている人は子宮内フローラもよくない可能性があるのではないかと考えています。そういった観点からも乳酸菌製剤を処方していますが、そう簡単に腸に生着しないため、飲み続けてもらっています。

    ―患者さんに対し、生活習慣のアドバイスをされることもあるのでしょうか。

    高橋先生:
    食事の話はよくしています。実は私は、抗加齢学会(アンチエイジング)の専門医でもあります。現代人は炭水化物を摂り過ぎています。AGE(終末糖化産物)という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、たんぱく質と糖が結び付くと老化物質になります。グリコーゲンが減りシワもできやすくなってしまうのですが…。
    不妊治療において、からだを老化させないということも大切なので、炭水化物を控え、たんぱく質や食物繊維をしっかり摂ってくださいと指導しています。

     

    通算妊娠数は約2万名!保険適用から治療を開始した方の結果も出始め増加傾向に

    ―不妊治療実績について教えてください。

    高橋先生:
    1999年4月に開院してからの通算妊娠数は1万9848名で、月間でみると先月は今年最多の118名でした(2022年9月取材時点)。今年4月に不妊治療の保険適用範囲が拡大し、それをきっかけに検査や治療を始めた方の結果が出始めているように思います。
    2022年10月には、2万例に達する見込みです。(2022年10月5日 妊娠2万例達成

    ―体外受精だけではなく、自然妊娠も含め“総合的に”治療をされているということが、とてもよくわかりました!高橋先生、ありがとうございました。

    高橋先生の人柄がわかる「院長ブログ」や「Twitter(@takahashiwc)」もぜひご覧ください。
    院長ブログ:https://www.takahashi-w-clinic.jp/clinic/feature/oneday.html
    Twitter:https://twitter.com/takahashiwc

     

    ≪高橋敬一(たかはし けいいち) 医師プロフィール≫

    千葉県出身
    1985年 国立金沢大学医学部卒
    1985年~1989年 国立病院医療センター
    (現:国立国際医療研究センター)
    1989年~1995年 虎の門病院
    1995年~1996年 米国ワシントン大学(シアトル)に留学
    1996年~1999年3月 虎の門病院産婦人科に復帰
    1999年4月 千葉市に不妊治療専門『高橋ウイメンズクリニック』開院

    2013年8月 妊娠1万例達成
    2014年 ベストドクター認定(ベストドクターズ社)
    2017年2月 著書:「専門医が答える 不妊治療Q&A」 幻冬舎 発刊

    ≪「高橋ウイメンズクリニック」について≫

    クリニック名:高橋ウイメンズクリニック
    院長:高橋敬一 医師
    住所:〒260-0028
    千葉県千葉市中央区新町18-14 千葉新町ビル6階
    HP URL:https://www.takahashi-w-clinic.jp/