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    “卵の質と数”の観点でも注目を集める「ビタミンD」とは~充足群では流産率低減も

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    ビタミンCやビタミンA、ビタミンBなど、ビタミンは非常に身近な栄養素だと思いますが、ビタミンDはどうでしょうか?

    実は最近、各方面から注目を集めているビタミンD。
    妊娠や出産においても医師たちからの注目を集めています。

    そこで、今回は、古賀文敏ウイメンズクリニック院長・古賀 文敏先生に、ビタミンDの重要性を教えていただきました。

    血中ビタミンD濃度は「卵の質」に関係

    ―近年、ビタミンDと着床率や妊娠率、流産率との関係が注目を集めているようですね。

    古賀先生:
    ビタミンDは、妊娠・出産という領域において、「葉酸」とともに世界的にもエビデンスがあり注目を集めている栄養素です。

    ☟葉酸についても古賀先生にお話を聞いています。詳細はこちらから
    知ったら絶対摂りたくなる!?~「葉酸」が妊娠前から妊娠中ずっと大切な理由とは?

    私たちのクリニックでは、不妊外来の初診時に血液検査でAMHや葉酸とともに25-OHビタミンDの血中濃度も調べています。

    ビタミンDは一般的に
    ・20ng/mL未満…欠乏
    ・20-29ng/mL…不足
    ・30ng/mL以上…充足
    と分類されます。

    下記は、私たちのクリニック内でのデータです。

    古賀文敏ウイメンズクリニックでのデータをもとにVarinosが作成

    483名の患者様のうち、465名(約96%)もの方がビタミンD不足という結果でした。18名は充足群となっていますが、ほとんどがサプリメントを摂取している方です。
    なお、この傾向は私たちのクリニック内だけの話ではなく、日本人においては、妊娠が考えられるすべての年代において、ビタミンDが摂取目安量を下回っていることがわかっています。ビタミンDは食べ物からだけではなく、日光に当たることで生成することもできるのですが、お住いの地域によっても十分な量が生成できるか異なりますし、また日本人女性は、紫外線対策をしっかりされている方も多いので、日光だけでは十分な量に達しないのかもしれません。

    そして、このデータで注目いただきたいのが、D3良好胚率です。
    3日目の良好胚率を調べたところ、30ng/mLの不足群が66.5%に対し、31-40ng/mLの群は72.4%、50ng/mL以上の群では95.8%という結果でした。

    つまり、このデータは、ビタミンDの血中濃度が高いほど、有意差を持って良い卵ができることを示しています。

    質だけではない!「卵の数」とも関係が

    ―ビタミンDは卵と関係するということなのですね!

    古賀先生:
    ちなみに、私たちのクリニックでは、卵巣予備能検査(AMH)との関係から、コレステロール値も調べています。といいますのも、診察をしていると、痩せすぎの方は、卵の数がすごく少なく、少し体格の良い方は卵の数が多いということがよくあるからです。そこから、コレステロールとAMHの関連に着目するようになり、コレステロール値とAMHの関係を調べると、見事に有意差を持って相関していることがわかったのです。

    そして、ビタミンD3もコレステロールを原料としてできています

    健康診断などで、コレステロール値を気にされると思いますが、こういった観点からも栄養学的には、コレステロールというのは、決して悪いものではありません。

    ただ、日本人女性は、年々痩せ型になってきています。妊娠という点でいえば、少し注意すべき事象です。

    ―そうなのですね、やはり妊娠・出産と栄養は非常に関わりが深いのですね。

    古賀先生:
    その通りです。
    私が2020年に、世界中の論文をもとに書いた妊娠しやすい食生活についての論文「Relationship between nutrition and reproduction」を書きました。

    栄養素ごとのART(生殖補助医療)への影響は、下記の通りです。

    この表の見方ですが、タンパク質で言うと、地中海式ダイエット(魚とか鶏肉)は妊娠率を上げますが、赤身肉などは、妊娠率が下がるということを示唆するデータが多いです。

    そして、ビタミンでは、ビタミンDや葉酸が妊娠率を上げるということで一定の見解を得ています。

    ビタミンの不足に関しては、ビタミンCが欠乏すると壊血病、ビタミンB1は脚気、ビタミンAは夜盲症、葉酸は二分脊椎、ビタミンDはくる病といったように、極度に欠乏した場合の疾患がクローズアップされてきました。

    でも現代は食べ物も豊富な時代です。栄養についても考え方が少し変わってきていると思います。

    ビタミンDと妊娠・出産の関係を示す多数の論文

    ―ビタミンDと妊娠率については、具体的にどのようなことがわかってきているのでしょうか。

    古賀先生:
    ビタミンDが充足していると良好胚率が高いことはお話しましたが、それ以外に
    ・着床率・妊娠率・出産率が高く、化学流産率・自然流産率が低い
    ・ 40歳以上の女性ではAMHが高い

    ビタミンDが不足していると
    ・習慣流産の原因となりうる

    といったことがわかってきています。

    いくつか論文を紹介します。

    Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort study
    ビタミンD欠乏群(20ng/mL未満)、不足群(20-29ng/mL)、充足群(30ng/mL以上)の3つの群に分け、着床率・妊娠率・出生率・化学流産率・自然流産率を調べた結果、ビタミンD充足群が、最も着床率・妊娠率・出産率が高く、化学流産率・自然流産率が低いことが示されています。

    Circulating vitamin D correlates with serum antimüllerian hormone levels in late-reproductive-aged women: Women’s Interagency HIV Study
    40歳以上の女性では、血中のビタミンD濃度が高いほどAMHが高いことを示しています。

    Vitamin D deficiency may be a risk factor for recurrent pregnancy losses by increasing cellular immunity and autoimmunity
    ビタミンD不足は習慣流産の原因になりうるということが示されています。

    Replete vitamin D stores predict reproductive success following in vitro fertilization
    血中のビタミンD濃度が高いと体外受精の成功率が上昇することが示されています。

    Effect of Vitamin D Supplementation on In Vitro Fertilization Outcomes: A Trial Sequential Meta-Analysis of 5 Randomized Controlled Trials
    ビタミンD欠乏症の不妊症女性の体外受精の成績を改善するためには、ビタミンDの補充をすべきということが書かれています。

    ビタミンDはどの程度摂取すればよい?過剰摂取はほとんど心配なくてよい?

    ―ビタミンDは、最近妊活に取り組む方に向けたサプリメントなどでも少量配合されているものもありますが、どのくらい摂取するのがよいのでしょうか。
    ビタミンDは脂溶性ビタミンということもあり、過剰摂取を心配される方もいらっしゃるようですが…。

    古賀先生:
    私がみている限り、少なくとも25㎍/日は摂取いただかないと血中濃度の変化はほとんどありません。欧米では妊婦・授乳婦へのビタミンD投与上限は100㎍/日とされています。乳がんや大腸がんの予防にはビタミンD濃度は50ng/mLとされていますから、ある程度のビタミンDの摂取が必要です。

    サプリメントに使われる非活性型ビタミンであるビタミンD3は、体内でコントロールされるので過剰摂取はあまり心配いただく必要はないと思います。心配なら一度血中濃度を測ってみることをお勧めします。気にかけているつもりでも、多くの方が不足しています。

    ビタミンDはこの2~3年で非常に注目を集め始めているのですが、不妊治療に詳しい先生ほど、過剰摂取を心配していないように思います。

    ―古賀先生、ありがとうございました!
    世界的に妊娠率や出産率に関係する栄養としてエビデンスがでているのは、ビタミンDと「葉酸」ということで、葉酸については以下の記事で古賀先生にお話を伺っています。ぜひ本記事と合わせてご覧ください!
    知ったら絶対摂りたくなる!?~「葉酸」が妊娠前から妊娠中ずっと大切な理由とは

     

    ≪古賀 文敏(こが ふみとし)医師≫プロフィール

    略歴
    1996年 大分医科大学(現大分大学)卒業
         久留米大学産婦人科入局
    1999年 国立小倉病院周産期病棟医長
    2004年 久留米大学病院不妊・内分泌部門主任
    2007年 福岡市中央区大名に古賀文敏ウイメンズクリニック開院
    2014年 福岡市中央区天神に移転・拡張、胎児診断部門併設
    2021年 事業構想大学院大学卒業、事業構想修士(MPD)

    日本生殖心理学会理事長、日本レーザーリプロダクション学会副理事長、
    日本IVF学会理事、日本受精着床学会評議員、日本生殖内分泌学会評議員

    資格
    日本産科婦人科学会専門医、日本人類遺伝学会専門医、
    福岡大学産婦人科臨床教授

    ≪古賀文敏ウイメンズクリニックについて≫

    クリニック名:古賀文敏ウイメンズクリニック
    院長:古賀 文敏 医師
    住所:〒810-0001
    福岡県福岡市中央区天神2-3-24 天神ルーチェ5F
    HP URL:https://koga-f.jp/