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    体外受精の治療法別プロセスとスケジュール

    体外受精のプロセスとスケジュール

    2022年4月から、不妊治療の体外受精が保険適用となりました。年齢による回数制限などはありますが、費用面での負担が軽減されたことで、体外受精を検討しやすい環境になりました。

    一方で、体外受精は体への負担や通院回数が増えるため、特にお仕事をされている女性は、不妊治療と仕事を両立できるか不安に思われることもあるかもしれません。

    そこで、排卵誘発や体外受精の方法別に、どのようなステップ・スケジュールで治療が進められるのかを詳しくご紹介します。

    ※以下のプロセスは一般的なものとなります。各医療機関の方針により異なる場合もございますので、ご了承ください。

    本記事「体外受精のプロセス」の監修医 杉山産婦人科 新宿 石山俊輔医師

    「体外受精のプロセス」執筆者 Varinos編集部

    体外受精の8つのプロセス~妊娠判定までおよそ1~2か月必要

    体外受精を行う場合、大きくわけると8つのプロセスがあります。

    体外受精の8つのプロセス

    体外受精の8つのプロセス

    ①事前検査
    ②排卵誘発(卵巣刺激)
    ③採卵・採精
    ④体外受精(顕微授精)
    ⑤培養
    ⑥胚移植(新鮮胚移植、凍結融解胚移植)
    ⑦黄体補充
    ⑧妊娠判定

    採卵準備から妊娠判定までの期間

    治療方針によりスケジュールは異なってきますが、初回採卵周期開始から妊娠判定までがおよそ1〜2ヶ月間かかります。なお、1回の胚移植で妊娠できなかった場合、残りの凍結胚があれば移植周期から開始できます。ない場合は再度、採卵周期から開始となります。

    体外受精のプロセスの中でも「②排卵誘発(卵巣刺激)」の方法がスケジュールに大きく影響します。そこで、卵巣刺激方法について詳しくご紹介します。

    体外受精における「卵巣刺激法」別スケジュール

    体外受精は、文字通り体の外で卵子と精子を出会わせ、受精させる方法です。卵子を回収するため、採卵が必要となります。通常、毎月1個の卵子が排卵されますが、生殖補助医療(ART:Assisted reproductive technology)においては、妊娠率を高めるために一回の採卵で複数の卵子を採卵できるよう「調節卵巣刺激法」がとられることがあります。

    複数の卵子を採卵するためには、薬でホルモンを調整します。
    使用する薬により、卵巣刺激の方法は大きく高刺激法・低刺激法に分けられます。なお薬は使わない自然周期法による採卵方法もあります。
    高刺激法・低刺激法は、その中でもいくつかの方法があり分類すると以下になります。

    卵巣刺激法は大きく「高刺激法」と「低刺激法」に分けられる

    なお、投薬の期間などは、医療機関により異なることがあります。実際、卵巣刺激を行う場合は、かかりつけの医療機関で詳細なスケジュール等をご確認ください。

    排卵誘発剤の注射で卵巣に働きかける高刺激法

    ロング法のスケジュールとメリット・デメリット

    スケジュール:
    採卵予定の前の周期の高温期から、採卵予定日の2日前まで、排卵を抑制させるためアゴニスト点鼻薬を毎日投与します。その後、月経3日目から6~10日間、卵胞を育てるhMG(human menopausal gonadotropin/ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン)またはFSH(Follicle stimulating hormone/卵胞刺激ホルモン)注射を打ちます。卵胞が育ったことをホルモン検査や超音波検査で確認できたら、排卵を促すためのhCG(human chorionic gonadotropin/ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射を打ちます。hCG注射を打った後、35時間前後に医療機関で採卵を行います。

    卵巣刺激法の一つ「ロング法」のスケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]
    ・多くの卵子を得られる可能性がある
     →卵子の数だけではなく、卵子の質や発育状態も揃いやすくなる
    ・採卵前に排卵してしまうことがほとんどなく、排卵日もコントロールしやすい
     →お仕事などの都合で、排卵日を予め決めておきたい方には特にメリットがある

    [デメリット]
    ・ロング法という名前の通り、薬の投与期間が長く投薬量も多くなる
     →費用も高くなる
    ・卵子成熟にアゴニスト点鼻薬を使用できず、排卵を促すhCG注射を使用するため、OHSS(ovarian hyperstimulation syndrome/卵巣過剰刺激症候群)になるリスクもある
     →PCOS(polycystic ovarian syndrome/多嚢胞性卵巣症候群)がある方はOHSSのリスクが高い
    ・卵巣に残っている卵子の数が少ない方(AMH:Anti-Müllerian Hormoneが低い方)や年齢が高い方には向いていない
    ・採卵の前周期から避妊を行う必要がある

    ロング法での卵巣刺激が向いている方:

    上記の特徴やメリット・デメリットから、ロング法は、20~30代でAMHの値もある程度あり、かつPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などリスクが高くなる要因がない方、そして排卵日をコントロールしながらできるだけ多くの卵子を採卵したいという方に向いていると言われています。

    卵巣刺激法の一つ「ロング法」が向いている方

    ウルトラロング法のスケジュールとメリット・デメリット

    ロング法との違いは、アゴニスト点鼻薬をさらに長い期間投与し、完全にFSH(卵巣刺激ホルモン)の分泌を抑えてから採卵する点です。アゴニスト点鼻薬により月経を止めることで、子宮内の炎症が抑えられ着床環境が整うことが期待されることから、子宮内膜症などがある方に使われます。

    スケジュール:
    アゴニスト点鼻薬を採卵予定周期の数か月前から採卵予定日の2日前まで投与し、完全に月経が始まらない状態にします。そして、採卵予定日の11日前を目安に卵胞を育てるhMGまたはFSH注射を打ちます。卵胞が育ったことをホルモン検査や超音波検査で確認できたら、排卵を促すためhCG注射を打ちます。hCG注射を打った後35時間前後に医療機関で採卵を行います。

    卵巣刺激法の一つ「ウルトラロング法」スケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    (ロング法でのメリットに加え)
    ・子宮内の炎症が抑えられ、着床環境が整う

    [デメリット]
    (ロング法でのデメリットに加え)
    ・薬の投与期間がさらに長くなるため、薬の費用がより高くなる。
    ・卵子成熟にアゴニスト点鼻薬を使用できず、排卵を促すhCG注射を使用するため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になるリスクもある

    ウルトラロング法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、ウルトラロング法は、ロング法が実施できる条件がそろっている方で、かつ子宮内膜症などの疾患がある方に向いていると言われています。

    卵巣刺激法の一つ「ウルトラロング法」が向いている方

    ショート法のスケジュールとメリット・デメリット

    ロング法と同様に、アゴニスト点鼻薬を使用する卵巣刺激方法ですが、ロング法よりも短期間の使用で採卵できる状態にしていく方法です。そのため、ショート法と呼ばれています。卵巣刺激法の中でも強い刺激法と言えます。

    スケジュール:
    月経初日(*)から採卵予定日の2日前まで毎日アゴニスト点鼻薬を投与し、排卵を抑制します。そして、月経3日目から卵胞を育てるhMGまたはFSH注射を打ちます。卵胞が育ったことをホルモン検査や超音波検査で確認できたら、排卵を促すためhCG注射を打ちます。hCG注射を打った後35時間前後に医療機関で採卵を行います。
    *月経の2日目あるいは3日目から開始する医療機関もあります。

    卵巣刺激法の一つ「ショート法」スケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    ・ロング法に比べ、短期間で多くの卵子を採卵できる
     →投薬期間が短くなるため、薬剤費用も抑えられる
    ・アゴニスト点鼻薬を開始してから2~3日間は、下垂体ホルモンが上昇する「フレアアップ」を卵胞発育に利用でき、卵巣刺激が強くなる

    [デメリット]
    ・ロング法に比べて排卵スケジュールをコントロールしづらい
     →自然排卵する可能性が高くなる
    ・卵巣予備能(AMH)が低い場合、卵胞の発育が不十分になることがある
    ・卵子成熟にアゴニスト点鼻薬を使用できず、排卵を促すhCG注射を使用するため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になるリスクもある

    ショート法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、ショート法は、卵巣機能が低下している、あるいはロング法では発育卵胞数が少なかった方に向いていると言われています。

    卵巣刺激法の一つ「ショート法」が向いている方

    アンタゴニスト法のスケジュールとメリット・デメリット

    その他の高刺激法である、ロング法やウルトラロング法、ショート法と異なり、アンタゴニスト注射を打つこと、また卵子の熟成を促すためにアゴニスト点鼻薬を使用できるのがアンタゴニスト法の特徴です。

    スケジュール:
    アンタゴニスト法では、まず月経3日目から卵胞を育てるhMGまたはFSH注射を打ち始めます。卵胞がある程度育ったことをホルモン検査や超音波検査で確認できたら、自然排卵を防ぐためにアンタゴニスト注射打ち始めます。hMGまたはFSH注射とアンタゴニスト注射は採卵予定日の3日前まで使用します。そして、卵胞が一定の大きさに達したところで、卵子を成熟させるアゴニスト点鼻薬もしくはhCG注射を投与します。そして翌々日、医療機関にて採卵を行います。

    卵巣刺激法の一つ「アンタゴニスト法法」のスケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    ・卵子の成熟を促すトリガーとして、アゴニスト点鼻薬を使えるため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを軽減できる
    ・ロング法やウルトラロング法、ショート法に比べ、はじめから下垂体ホルモンの抑制をしないため、卵胞が発育しやすい
    ・他の高刺激法と同様に、一度に多くの卵子を得ることができる
    ・高刺激法の中では、比較的体への負担が軽い

    [デメリット]
    ・薬(アンタゴニスト注射)の費用が高額
    ・わずかではあるが、排卵してしまう可能性がある

    アンタゴニスト法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、アンタゴニスト法は、ロング法やショート法で思うような結果がでなかった方や卵胞が成熟する前に排卵してしまう体質の方、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある方などに向いている卵巣刺激法と言われています。

    卵巣刺激法の一つ「アンタゴニスト法」が向いている方

    PPOS法(黄体ホルモン併用法)のスケジュールとメリット・デメリット

    PPOSとは、Progestin-primed Ovarian Stimulationの頭文字をとっており、黄体ホルモン併用による卵巣刺激法のことを指します。新しい卵巣刺激法であるPPOS法は、この名の通り、排卵抑制に黄体ホルモンの飲み薬を使用する点が特徴です。
    黄体ホルモンは排卵後の黄体から分泌されるホルモンです。生理後から排卵前までに増殖した子宮内膜を維持し、着床しやすい環境に整えてくれるホルモンでもありますが、PPOS法では、黄体ホルモンの排卵抑制効果を期待し投与します。

    スケジュール:
    月経3日目からhMG注射またはFSH注射で卵胞を育てると同時に、黄体ホルモンの飲み薬も服用し、排卵を抑制します。卵胞がある程度育ったことを超音波検査で確認できたら、アゴニスト点鼻薬もしくはhCG注射を投与します。そして翌々日、医療機関にて採卵を行います。

    卵巣刺激法の一つ「PPOS法」スケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    ・採卵の前周期からの準備が不要なため、ロング法、ウルトラロング法などと比較すると治療期間が短い
    ・黄体ホルモンの飲み薬を使うため、費用が比較的安く、また通院回数も少なくできる
    ・卵子の成熟を促すトリガーとして、アゴニスト点鼻薬を使えるため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを軽減できる

    [デメリット]
    ・黄体ホルモンの飲み薬の影響で、採卵の周期は着床環境が整わないことから、新鮮胚移植はできず、一旦すべて凍結保存(全胚凍結)が必要となる。次周期以降に融解胚移植を行うことになる。

    PPOS法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、PPOS法は、治療期間や通院回数が少なく済むため、忙しく時間があまり取れない方や費用をできるだけ抑えたい方、またOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある方などに向いている卵巣刺激法と言われています。

    卵巣刺激法の一つ「PPOS法」が向いている方

    飲み薬で脳にホルモン分泌を促す低刺激法

    主に飲み薬で卵胞を育てる方法です。

    クロミフェン法のスケジュールとメリット・デメリット

    スケジュール:
    クロミフェン(商品名:クロミッドやセロフェンなど)を月経3日目前後より内服開始します。
    保険診療の場合内服開始から5日間、自費診療の場合採卵日2日前まで内服します。

    脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)は、卵巣に働きかけて卵胞を育て、排卵させる役割を担っています。 クロミフェンは、視床下部に働きかけてFSHとLHの分泌を促すことで排卵誘発作用を発揮します。

    主に飲み薬で卵胞を育てる低刺激法「クロミフェン法」のスケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    ・体への負担が少なく、費用も比較的安い
    ・OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが低い
    ・連続周期での採卵が可能

    「デメリット」
    ・採卵できる卵子の数が少ない
    ・採卵日をコントロールしづらく、採卵前に排出してしまうことがある
    ・子宮内膜が薄くなることがあり、新鮮胚移植には向かない
    ・服用時に、卵巣の軽い痛みやお腹の張り、頭痛やかすみ目などの症状がでることがまれにある
    ・保険診療では5日間のみ処方が可能

    クロミフェン法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、クロミフェン法は、薬をできるだけ控えたい方や年齢の高い方、高刺激法を行っても採卵個数が少ない方などに向いている方法と言われています。
    なお、クロミフェン法に卵胞を育てるhMG注射を加え卵巣を刺激し、より多くの成熟卵を得ようとするクロミフェンhMG法などもあります。

    飲み薬で卵胞を育てる低刺激法「クロミフェン法」が向いている方

    レトロゾール法のスケジュールとメリット・デメリット

    体外受精においては、レトロゾールを使用すると体の中の卵巣刺激ホルモンが促進され、卵巣の感受性を高めることからマイルドな排卵誘発剤として使用されます。クロミッドのような副作用はないとされています。

    スケジュール:
    月経3日目から5日間、レトロゾールを服用します。卵胞の状態を見ながら、卵子の成熟を促すアゴニスト点鼻薬もしくはhCG注射を投与し、翌々日に採卵します。

    低刺激法「レトロゾール法」スケジュール例

    メリット・デメリット:
    [メリット]

    ・身体への負担が少なく、通院回数も少ない
    ・比較的費用が安い
    ・クロミフェンのような副作用がない
    ・新鮮胚移植が可能

    [デメリット]
    ・採卵できる卵子の数が少ない
    ・排卵を抑制できず、自然排卵してしまうことがある

    レトロゾール法での卵巣刺激が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、レトロゾール法は、年齢の高い方や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方、新鮮胚移植を考えている方などに向いていると言われています。
    なお、卵胞の発育状況をみながらFSHもしくはhMG注射を追加する「レトロゾール-FSH(hMG)法」もあります。

    低刺激法「レトロゾール法」が向いている方

    主な卵巣刺激方法をご紹介しましたが、薬の量や種類、使用期間などは患者様に合わせ医師が提案します。上記記載の内容は目安とお考え下さい。

    薬に頼らない自然周期法

    排卵誘発剤や内服薬は使わずに、自然に育った卵子を採卵する方法です。基本的に1周期で採卵できる卵子の数は一つです。

    スケジュール:
    月経3日目頃に超音波検査での卵胞チェックとホルモン検査を行います。卵胞がある程度の大きさになったら、卵子の成熟を促すhCG注射あるいはアゴニスト点鼻薬を投与します。その翌々日が採卵日となります。

    不妊治療における採卵の「自然周期法」スケジュール

    メリット・デメリット:
    [メリット]
    ・体への負担や費用面での負担が少ない
    ・連続周期で採卵できる
    ・新鮮胚移植が可能

    [デメリット]
    ・1個のみ採卵のため下記3点のデメリットが特に目立つ
    ①採卵時にすでに排卵されてしまっていることもある
    ②採卵しても卵子を得られないこともある
    ③卵子が一つ採取できても、受精しない、あるいは育たなかった場合、移植ができない

    自然周期法が向いている方:
    上記の特徴やメリット・デメリットから、自然周期法はAMHがとても低く高刺激法が向いていない方や薬をあまり使いたくない方、新鮮胚移植を考えている方に向いていると言われています。

    不妊治療における採卵の「自然周期法」が向いている方

    ③体外受精における採卵・採精スケジュール

    採卵のスケジュールは卵巣刺激法の種類や自然周期で行うかにより決まります。体の状況やお仕事などの都合を考慮し、医師と相談の上、ベストな採卵スケジュールを決めていくことになります。
    採卵は、専用の採卵針を使用し採取します。医療機関によっては、麻酔を行い採卵します。
    採精については、2通りの方法があります。
    1.採卵当日、パートナーも来院し、院内で採精する
    2.採卵当日、自宅など院外で採精した精子を持ち込む
      持ち込む場合は2-3時間以内を目安としている医療機関が多いようです。

    なお、事前に精子を凍結しておくこともできます。

    精子については、前回の射精から長く期間が空くと運動率が低下し、前回の射精から期間が短いと濃度が回復しない可能性があるため、1日から5日程度の禁欲期間がよいと言われることが多いです。

    ④体外受精(顕微授精)のスケジュール

    体外で行う受精方法は2種類ある

    体外受精とは、卵子と精子を体の外で受精させる方法です。
    受精の方法は二通りあります。


    1.体外受精(IVF)
    精子の数も運動性も問題ない場合、培養液の中に卵子と精子を入れ、自然に近い形で出会わせ受精させます。これがいわゆる「体外受精」と呼ばれる方法です。
    2.顕微授精(ICSI)
    精子の数が少ない場合や精子の運動性が低い場合、あるいは体外受精(IVF)で受精しなかった場合、一つの精子を一つの卵子に直接注入する顕微授精が行われます。
    卵子への侵襲が少ないPiezo-ICSI(ピエゾ)という技術を採用している施設もあります。

    体外で行う2種類の受精法「体外受精」と「顕微授精」

    ⑤体外受精の培養スケジュール

    体外受精(IVF)あるいは顕微授精(ICSI)によって、受精した受精卵はインキュベーターという専用機器の中で培養されます。より受精卵へのストレスが少ないタイムラプスインキュベーターで培養している施設もあります。

    受精卵は、培養することで細胞分裂をくり返し、2分割、4分割、8分割と成長していきます。分割を始めると受精卵は「胚(はい)」と呼ばれるようになります。
    そして、受精後2~3日目までの胚を「初期胚」、5日目ごろになり将来赤ちゃんになる部分(内細胞塊)と胎盤になる部分(栄養外胚葉)に分かれた状態の胚を「胚盤胞」と呼びます。
    胚盤胞は、胚培養士がガードナー分類という方法で「グレード」をつけます。
    ガードナー分類は、胚盤胞の発達段階により6段階の評価をつけ、さらにスコア3以上の胚盤胞については、内部細胞塊と栄養外胚葉の状態からそれぞれA〜Cの3段階の評価をつけます。
    例えば「6CC」という評価のついた胚盤胞と「6AA」の胚盤胞があった場合、「6AA」のほうが着床や妊娠継続の可能性が高いため、優先的に移植されることになります。

    着床前診断(着床前胚染色体異数性検査:PGT-A)とは

    ガードナー分類による評価は、基本的に目に見える情報から判断します。そのため、見た目は良い胚であっても実は染色体異常がある可能性もあります。染色体異常があると、流産を引き起こす、あるいは、赤ちゃんが先天性異常をもって生まれくるなどの影響がでてきます。
    体外受精の場合、PGT-Aにより、胚の染色体の数の異常を調べることができますが、すべての方に適応できないのが現状です。先進医療Bに認定されています。(2024年2月時点)

    タイムラプスインキュベーターとは

    インキュベーターに内蔵カメラと顕微鏡を備えたタイムラプスインキュベーターが登場しています。一定間隔で撮影した胚の様子が動画のように見ることができる技術です。胚培養士が胚の評価をする際に役立ちます。タイムラプスインキュベーターは不妊治療の先進医療にも認定されている技術です。保険診療で行う不妊治療と併用することが可能です。(2024年2月時点)

    ⑥体外受精の胚移植スケジュール

    体外受精における胚移植とは、受精卵(胚)を妊娠しやすい時期に子宮に戻す方法です。
    胚移植には、採卵と同じ周期に移植する新鮮胚移植と凍結した胚を融解して移植する凍結融解胚移植の二通りがあります。移植方法により、スケジュールは変わってきます。

    不妊治療における胚移植には「新鮮胚移植」と「凍結融解胚移植」の2通りがある

    なお、卵巣刺激方法によっては、新鮮胚移植ができないこともあります。
    ただし、新鮮胚移植と凍結融解胚移植を比較した際、胚移植は採卵した次の周期以降での移植になりますが、日本では凍結融解胚移植のほうが、妊娠率が良いという報告が多くあります。
    凍結融解胚移植では、ご自身の排卵を利用した排卵周期法と、ホルモン剤ですべてコントロールを行うホルモンコントロール法があります。ご自身の月経周期や治療施設の方針等でどちらかを選択します。

    体外受精における黄体補充のスケジュール

    黄体ホルモンが不足していると、子宮内膜の環境が着床に適さない状態になります。
    排卵周期では排卵後に黄体ホルモンを補充することで、子宮内膜を着床しやすい状態に整えます。
    ホルモンコントロール周期では妊娠成立後も妊娠8~11週頃までの比較的長期間の投与が必要となります。

    ⑧体外受精における妊娠判定のスケジュール

    胚移植後、着床が成立すると胎盤から hCG と呼ばれるホルモンが分泌されます。そのため、排卵日の14日後頃に、採血を行い hCGの値が上昇しているかを測定します。妊娠判定が陽性となった場合、妊娠5週前後で胎嚢の確認を、妊娠6週~7週で胎児の心拍の確認をします。不妊治療の卒業のタイミングは医療機関により多少異なりますが、8〜9週目頃に超音波検査で問題がなければ卒業・産院へ紹介となります。

    体外受精と子宮内フローラ

    体外受精のプロセスの中でも特に卵巣刺激は様々な方法があり、中には身体的にも費用面でも負荷がかかる方法もあることがお分かりいただけたと思います。
    大変な思いをして、得ることができた受精卵(胚)は、とても貴重です。着床・妊娠・出産においては、胚の質だけではなく、子宮内の環境も大切です。子宮内の菌環境は子宮内フローラと呼ばれており、子宮内フローラにより妊娠率や生児獲得率に差がでることがわかってきています。
    子宮内の菌環境は、子宮内フローラ検査によって調べることができます。医療機関で子宮あるいは腟から検体を採取し、そこから細菌のDNAを抽出し、ゲノムテクノロジーを応用した技術により、どの菌がどのくらいの割合で存在するかを調べることができます。

    妊娠・出産においては、子宮内に善玉菌・ラクトバチルスが90%以上か未満かで妊娠率や生児獲得率が大きく異なることが報告されています(下図)。

    子宮内ラクトバチルスの妊娠・出産への影響報告データ

    早い段階で子宮内フローラを把握し、着床や妊娠継続に悪影響を及ぼす菌が子宮内にいる場合、治療行うことが効率的な不妊治療につながります。

    体外受精のスケジュールまとめ

    体外受精のスケジュールをご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?

    ・体外受精は①事前検査②排卵誘発(卵巣刺激)③採卵・採精④体外受精(顕微授精)⑤培養⑥胚移植(新鮮胚移植、凍結融解胚移植)⑦黄体補充⑧妊娠判定という8つのプロセスがある
    ・8つのプロセスの中でも、スケジュールに一番大きく影響するのが「②排卵誘発(卵巣刺激)」
    ・卵巣刺激方法は、ロング法やウルトラロング法、ショート法、アンタゴニスト法、PPOS法などの「高刺激法」とクロミフェン法やレトロゾール法など飲み薬をメインとした低刺激法がある。その他、排卵誘発剤を使わず自然に育った卵子を採取する「自然周期法」もある
    ・胚移植の方法は新鮮胚移植と凍結融解胚移植があり、新鮮胚移植は採卵と同じ周期に行うが、凍結融解胚移植は採卵を行った次の周期以降での移植となるため、胚移植ができるまでに時間を要する

    この記事の監修者

    杉山産婦人科 新宿
    石山 俊輔 医師

    平成20年3月 群馬大学医学部医学科 卒業
    平成20年4月〜平成22年3月 板橋中央総合病院 初期研修医
    平成22年4月〜平成23年3月 東京都立多摩総合医療センター 後期研修医
    平成23年4月〜平成30年3月 東京医科歯科大学 産婦人科医局 関連病院 勤務 
    (東京医科歯科大学附属病院 JAとりで総合医療センター 総合守屋第一病院 キッコーマン総合病院)
    平成30年4月~令和元年12月 アルテミスウィメンズホスピタル 医長
    令和2年1月〜現在 杉山産婦人科 新宿