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    【専門家に聞く】ゲノムと妊娠の関係

    ゲノムと妊娠の関係を解説

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    以前のnoteで、以下のようなお話をさせていただきました。
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    人間だけではなく、動物や植物、そして細菌も皆「DNA」を持っています。その「DNA」がもつ遺伝情報を「ゲノム」といい、「ゲノム」により生物の特徴が決まります。

    https://note.com/varinos/n/n9b4f6c41e12a

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    ゲノムって本当に奥深く、かつ妊娠、生命の誕生にも大きく関わっています。
    そこで、今回はVarinosで実際に検査、研究開発に携わり、ゲノム研究に関して、たくさんの論文も発表している臨床検査本部の芦川さんに「ゲノムと妊娠の関係」について、解説してもらいます。

    ゲノム・遺伝子・DNA…聞いたことはあるけど、一体なんなの??

    編集部:そもそもなのですが…。遺伝子やDNAという言葉は聞いたことがありますが、ゲノムってあまり聞きなじみがないです。これらによってからだが作られているというのは、なんとなくわかるのですが、どれも同じような意味じゃないのですか?

    芦川さん:
    “生物を作り上げるために重要なもの”という意味では同じですが、それぞれ何を指しているかが違います。

    まず、DNAにはどんなイメージを持っていますか?

    こんな、らせん状のものをイメージする方も多いのではないでしょうか。正解です。

    DNAはアデニン、シトシン、グリシン、チミンという物質でできています。それぞれの頭文字を取って、A、C、G、Tと表記します。この4種類のDNAの並び(配列)が生物の設計図の正体です。

    そして、ゲノムというのは遺伝子(gene)と全てを意味する(-ome)を掛け合わせた造語で、DNAの中にある「遺伝情報のすべて」を指す言葉です。

    編集部:
    ちょっと待ってください!DNA全部が遺伝情報を持っているわけではないということですか?

    芦川さん:
    そういうことです。ここでやっと「遺伝子」が出てきます。DNAの中で遺伝情報を持つ部分のことを「遺伝子」と言います。
    そして、繰り返しですが、遺伝情報のすべてを「ゲノム」というので、ゲノムを解析するとその生物の遺伝情報がわかるのです。

    【Point】=======================
    ● DNA…生物の設計図の正体
    ● ゲノム…DNAの中にある遺伝情報のすべてを指す概念
    ● 遺伝子…DNAの中で遺伝情報を持つ部分のこと
    ===========================

    ゲノムは、「生物の設計図」にあたります。生物を作り上げるために必要な情報が書いてあるセットです。セットというのは、百科事典のような本をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

    ヒトの場合、細胞の核の中に23種類、各種類2本ずつで合計46本の染色体があります。(性染色体だけは別で、女性の場合はX染色体が2本、男性の場合はX染色体とY染色体という別々の種類を1本ずつ持っています。)
    百科事典でいうと1巻〜23巻まであるのに相当します。この染色体の正体は、DNAが折りたたまれているものです。そして、通常、お母さんから1ゲノム、お父さんから1ゲノムを受け継いでいるので、標準で2ゲノム(百科事典を2セット)持っていることになります。同じ様な設計図を持つ意味は、様々な理由が考えられますが、仮に、お母さんからもらったゲノム(設計図)のある一部分が無くなってしまった場合、お父さんのゲノム(設計図)を使うことで補完できるのですね。

    少し難しくなってきましたか?

    お父さんとお母さんから赤ちゃんはゲノムを受け継ぐ

    編集部:
    何とかついていけている気がします!そして、ゲノムと妊娠の関係もわかりました。
    お母さんとお父さん、つまり卵子と精子から1ゲノムずつ受け継いで、親の遺伝情報が子どもに引き継がれるということですね!

    芦川さん:
    そういうことです!
    ちなみに、ヒトの1ゲノムは、どのくらいの文字の配列からできていると思います?

    編集部:
    予想もつきませんが、きっとすごく多いんでしょうね?

    芦川さん:
    おおよそ30億の配列からできています。

    編集部:
    さっきDNAの説明ででてきた4種類の文字(A,C,G,T)が30億文字並んでできているということですか!?

    芦川さん:
    そういうことです。2022年4月に様々なメディアが『「ヒトゲノム」を完全な形で解読した』と報じていたのを見たことありませんか?米国立ヒトゲノム研究所などの国際チームが科学誌「サイエンス」でヒトゲノムの完全解読を発表したことを受け、日本でも多数のメディアが報道していました。実は、ヒトゲノムの解読は、2003年に完了宣言されていたのですが、実際には8%解読できていない部分があったのです。技術の進歩もあり、残りの8%も解読でき、30億の配列を完全に解読できたのです。

    これにより、今後、遺伝性疾患の研究や検査開発がどんどん進むと思います。ゲノム情報を医療に役立てるという「ゲノム医療」という言葉も出てきていますよね。
    でも、ゲノムは究極の個人情報です。その取扱いについて日本政府も動き始めています。この話をしだすと長くなってしまうので、今日はこのくらいに!

    編集部:
    ありがとうございます!自分のからだの中のことではありますが、目に見えない世界で起こっていることがわかってきました!生命の誕生とゲノムの関係もだいぶ理解できました!

    専門家プロフィール

    Varinos株式会社 
    臨床検査本部 臨床検査部長
    芦川享大

    宇都宮大学大学院 修士(農学)課程修了後、2003年、理化学研究所に入所。遺伝子多型研究センターでの国際HapMapプロジェクトやゲノム医科学研究センターでのオーダーメイド医療実現化プロジェクト、統合生命医科学研究センターでの次世代シークエンサーによる疾患ゲノム解析に従事。2017年Varinos株式会社に入社し、子宮内フローラ検査の開発に携わる。現在は、臨床検査本部 臨床検査部長として同社の研究・開発、検査における責任者を務める。

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