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    体外受精の着床前検査「異常が7割」という衝撃

    高年齢の女性が陥る「胚の染色体異常」
    着床前検査について、日本産科婦人科学会はこれまで原則として、重篤な疾患の診断を行う検査のみ、審査のうえで一部だけ容認してきた。だから一般的な胚の検査は本来「禁断」だったわけだが、この検査の不妊・不育症への有用性を調べるとして、臨床試験を開始。約2年の月日をかけ、結果が大体見えた2018年末に行われた暫定値発表は、衝撃的としか言いようがないものだった。

    異常胚を子宮に戻してしまっている現実
    臨床試験は、学会に認定された実績あるクリニック4カ所で得られた、見た目はよいと判断された胚が調べられたのだが、染色体本数が正常だった胚はたった3割ほどしかなかった。

    日本では今、胚を子宮に戻す「胚移植」が全国で年間25万回以上も行われているが、その多くが、実は、染色体異常胚を戻しているということになる。

    異常胚だったとしても検査の意義はあった
    着床前検査をしなければ、今回検査された胚はほとんどが子宮に戻されていただろう。そうしていたら、患者たちは、胚移植の不成功や流産の精神的苦痛、経済的負担に耐えなければならなかった。不妊治療は、必ず妊娠という形でゴールインするわけではない。「不妊治療で最も難しいのは、治療をやめる決心」とつねづね言われていることを思うと、治療を卒業するきっかけがつかめた人がいたことも、検査の恩恵に数えあげていいのではないだろうか。

    着床前検査は「デザイナーベビー」になるのか?
    学会は、これから、臨床研究の結果をふまえて倫理的な議論をしていくと言っている。着床前検査は、異常がある胚を戻さないのは命の選別であるという理由で厳しく規制されてきた。PGT-Aは基本的に生まれない胚を見つける検査なのだが、わずかとはいえ、生まれうる胚も除外されてしまう点が問題視されている。しかし、「命の選別」をめぐる議論は、羊水検査の反対運動までさかのぼり、それは高度経済成長のまっただ中だった1970年代のこと。当時はほとんどの人が20代で出産しており、高齢妊娠や不妊に悩む人はとても少なかった。

    今、着床前検査を望んでいるのは、子どもを選ぶどころか、たったひとつの命を授かることもできず幾歳月を費やしている人たちだ。

    これからの倫理的議論は、今、生殖年齢にある人たちの厳しい現状を理解した上で、本当に必要な規制は何かを考えていくべきだろう。

    詳細はこちら
    https://toyokeizai.net/articles/-/271405

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