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    不妊治療は時間との闘い!短期間で結果を出すことにこだわる―馬車道レディスクリニック・池永秀幸院長

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    不妊治療に向き合う医師に直接お話を聞かせていただくインタビュー企画。

    今回は、不妊治療は時間との闘いだからこそ、短期間で結果を出すことをモットーにする馬車道レディスクリニック・池永院長に
    ◇不妊治療において、いかに「時間」を意識することが大事か
    ◇不妊治療に対する「夫婦の温度差」にどう対処しているか
    ◇体外受精前と二人目を凍結卵の移植で望む方に子宮内フローラ検査を勧める理由

    などを伺いました。

    何より大事な「時間」を無駄に浪費しないため、可能性の低い治療に時間をかけない

    ―馬車道レディスクリニックが不妊治療において、重視していることを教えてください。

    池永先生:
    「(妊娠という)結果を早く出す」ことです。当院では、不妊学級という不妊治療に取り組んでいる方や始めようとしている方を対象としたセミナーを毎月1回行っています。そこでも毎回、不妊治療において一番大切なのは「時間」とお話しています。

    ただ、患者さんが治療方針に納得しつつ、短期間で結果を出すというのは、すごく難しいことなのです。私は、多くの患者さんを治療してきた経験から個々人の状況に合わせた短期間で結果を出すためのベストな方法を提案しますが、いきなり体外受精をすることに抵抗がある方もいますし、なるべく自然に近いかたちで治療を望まれる方も多いです。治療に関しては、患者さんの意思が一番大事ですので、最短の治療方法でなくても、患者さんが希望される治療からスタートすることもあります。ですので、患者さんが納得するために必要な時間も加味しつつ、なるべく短期間で結果を出すということを大事にしています

    ―不妊学級は2時間半とかなり長い時間開催していますが、どういったことをお話されているのでしょうか。

    池永先生:
    不妊治療にとって「時間」がとても大事という話を中心にしているのですが、まずはじまりとしては、妊娠にとって夫婦の協力が不可欠という話から始めます。そのため、夫婦そろって聞いていただくようにしています。
    その後、1時間くらいかけて、妊娠のプロセスとして排卵から子宮内膜に受精卵が着床するまでの道のりを話します。皆さん意外と思い違いされていることが多いんです。それに続いて、妊娠と年齢についての話をします。若いということが妊娠にとってどれだけ有利に働くかということです。だから、「時間」が重要なんですよ、と。

    ―確かに、時を戻すことはできないですもんね…。

    池永先生:
    そうなんです。なので、可能性の少ない方法に時間をかけてしまい、時間を経過させてしまうのはとてももったいないことです。

    当院では、卵管造影検査を最初に行うのですが、卵管の通過性がある方は自然妊娠の可能性もありますので、若い方でそれまでの不妊期間が1年前後でしたら、半年程度タイミング法を行っても良いと思います。しかし、40歳を過ぎてタイミング法を希望される場合は、3か月以上は勧めません。

    このように、個々人の状態に合わせ、ベストな治療と選択肢を最初に提案しますが、ご本人の希望と違う場合は、期間を決めて取り組み、うまくいかなかった場合、ご本人が治療のステップアップを納得できるようにお話しています

    ―不妊学級とは別に個別相談カウンセリングも実施されていますが、どういった相談が多いのでしょうか。

    池永先生:
    例えば、「ステップアップしたいけど、旦那さんとの意見が合わない。どうしたらよいか」といった相談は多いです。これが他の診療科にはない不妊治療の難しいところでもあります。夫婦で足並みを揃えないと上手くいかないんですね。
    ご夫婦で温度差があることは珍しくありません。女性は妊娠するための手段は選ばず、男性は自然に授かることを望む傾向にあります。夫婦で意見が合わず、時間ばかり過ぎてしまうということがないよう、アドバイスをしたり、不妊学級に夫婦で参加いただいたりしています。

     

    体の状態はもちろん、仕事や生活環境なども配慮し採卵方法を決定

    ―採卵方法についてはどういった方針なのでしょうか。

    池永先生:AMH(アンチミューラリアンホルモン)という卵巣にあとどのくらい卵子が残っているかを把握できる検査が保険適用となったため、この結果などを踏まえ、その方にあった採卵法を行っています。

    自然排卵をほぼ完全に抑制し、より多くの卵胞を育てる調節卵巣刺激法のロング法やアンタゴニスト法、クロミッドを使っての排卵誘発など、その方の体の状態やお仕事などの状況に配慮した採卵を行っています。

    ただ、卵子の数はある程度採れたほうがよいと考えています。10個程度であれば、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の心配もさほどありません。

    若いうちにできるだけ採卵して凍結しておけば、何年か後に胚移植することも可能です。当院だと、10年近く卵子を凍結保存している方もいらっしゃいますし、10年かけて解凍胚移植でお子さんを三人出産された方もいます。

    ※卵巣過剰刺激症候群(OHSS)…
    不妊治療の排卵誘発剤で卵巣が過剰に刺激されると、投与後2~3日で発症。 症状は、卵巣が膨れ上がり腹水が溜まることによる、おなかの不快感や張り、嘔気、息苦しさなど。

     

    「体外受精」と「二人目不妊で凍結卵の移植希望」の方には子宮内フローラ検査を提案

    ―池永先生は、子宮内フローラ検査が誕生する以前から炎症と妊娠の関係に注目されていたそうですね。

    池永先生:
    子宮内膜炎が初めて文献として話題になった際、まだ子宮内フローラ検査はなく、今でも行っているCD138という検査や子宮鏡検査をしなくてはいけませんでした。ただ、採血やおりものを採ればよいという検査ではないので、全員に行うのは不向きでした。そこで、腟炎を起こしている場合、子宮も炎症を起こしている可能性があると考え、腟炎を治してから移植するようにしました。すると、腟炎を治した後に自然妊娠をする方が出てきたんですね。それで、子宮内の炎症と妊娠は関係があると思ったんです。なので、子宮内の細菌が調べられる検査が登場した際、これは役立つはずだと、すぐに導入を決めました。

    その後、凍結卵で二人目の妊娠を希望される方に、子宮内フローラ検査を行い、ラクトバチルス率が90%を下回った方に治療を行ったところ、それだけで移植前に自然妊娠をされる方が立て続けにでてきて、これはもう軽視できないなと思いました

    ―現在、子宮内フローラ検査はどういった方にどのタイミングで実施されていますか。

    池永先生:
    体外受精で初めて胚移植をする前と二人目不妊で凍結胚の移植を希望される方には勧めています。

    そして、子宮内フローラ検査により、乳酸菌・ラクトバチルスの割合が90%を下回った方には、全員治療を行っています。子宮内フローラ検査で子宮内にどのような菌がいるかわかるので、良くない菌がいれば、それに合う抗生剤を使った上で、ラクトバチルスのサプリメントやラクトフェリンのサプリメントを飲んでいただいています。検査で、ラクトバチルスが0%だった方は2か月程度、割合が少なかった方は1か月程度、治療を継続します。

    ―どのくらいの方が1~2か月で改善されますか?

    池永先生:
    治療後には必ず再検査を行い、治ったかを確認しているのですが、約8割の方が、2回目の検査時にはラクトバチルス率が90%以上になり、すんなり移植に移ることができています。
    ただ、約2割の方が90%に達することができず、治療を継続しています。1回目と同じ菌が検出されれば、使用する抗生物質を変えてみるといったことも行います。また、ラクトバチルスがなかなか増えない方には、ラクトバチルスの腟剤を処方することもあります。

    ―ラクトバチルスやラクトフェリンのサプリメントは、どのくらい飲み続けることを推奨されていますか。

    池永先生:
    まずは、子宮内フローラ検査でラクトバチルス率が90%以上になるまでです。その後も妊娠が成立するまでは、飲み続けることを勧めています。というのも、検査の結果でラクトバチルスの割合が少なかった方というのは、体質的に少なくなる可能性のある方です。それをサプリメントで補って増やしたのであれば、供給しなくなったらまた足りなくなってしまう可能性があるからです。

     

    凍結卵を無駄にしないために!二人目を希望する場合は、改めて子宮内フローラを確認

    ―二人目不妊の方には、どのような理由で子宮内フローラ検査を勧めていらっしゃるのでしょうか。

    池永先生:
    当院では、開院当初から、二人目のお子さんを希望する場合は、「一人目で採卵した凍結卵を戻すだけでいいようにしましょう」とお話させていただいています。以前は、二人目の移植を希望された場合、生理開始とともに子宮内膜を厚くするホルモン補充療法を行いすぐに戻していました。しかし、現在は、子宮内フローラ検査を行ってから移植するようにしています。

    なぜなら、お産や時間の経過により、子宮内の環境も変わるからです。一人目の時に採卵した貴重な卵を無駄にしないためにも、子宮内フローラ検査を行ってから戻しましょうとお話しています。結果をみると、ラクトバチルス率が十分ではない方が結構いらっしゃいます。しかし、治療を行ってから移植することで、1回で妊娠されるというケースも多いです。

    反対に、子宮内フローラ検査をせずに、移植し妊娠に至らなかった方で、子宮内フローラ検査とその結果に応じた治療を行うと、次の移植では妊娠するというケースが非常に目立ちます

    ―二人目不妊の原因には、どういったことが考えられますか。

    池永先生:
    不妊症の原因としてはっきりわかっているのは子宮内膜症です。内膜症も初期段階では、妊孕力への影響力はほとんどありません。しかし、時間と共に進行していきます。例えば、25歳のときに内膜症を発症していても、その時は初期状態で、年齢も若く妊娠ができた方も、5年経過し30歳になったらチョコレート嚢腫ができ癒着もあり卵管の通りが悪くなり不妊になるといったケースもあります。
    あるいは、一人目出産後にかかったことのないクラミジアに感染し不妊になるなど、年齢とともにリスクが上がっていくといえます。

    子宮内フローラも一人目の時に問題なかったとしても、時間が経過し二人目を考えた際に環境が変わっている可能性は十分あります。
    子宮内フローラは数カ月単位で変わる可能性があるので、移植する際は直前に調べています。

     

    理想は初期検査で子宮内フローラ検査も行うこと

    ―今後については、どのようにお考えでしょうか。

    池永先生:
    本当は、不妊治療を行う方には早い段階で採血で行うホルモン検査などと同様にルーティン検査の一つとして子宮内フローラ検査を入れても良いのではないかと考えています。
    ただ、先進医療には認定されていますが(2022年7月から適用)、保険は適用されないため、保険適用範囲内で不妊治療を行いたいと考える方にとっては、すこしハードルが高いのかもしれません。

    ただ、私としては、早い段階で検査をした方が良いと思っています。

    ―患者さんの気持ちや環境にも配慮しながら、短期間で結果を出す治療を提案されていることがよくわかりました!池永先生、ありがとうございました。

    ▶子宮内フローラ検査について、文章や動画で理解!詳しくはこちら

    ≪池永秀幸(いけなが ひでゆき)医師プロフィール≫

    横浜(神奈川県)生まれ聖光学院高等学校 卒業
    東邦大学医学部 入学
    1986年~ 東邦大学大森病院第1産婦人科 入局
    周産期医学、体外受精を中心とした不妊症やその合併症
    (多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群など)などの治療にあたる。
    さらに東邦大学リプロダクションセンターとチームを組み、
    閉塞性無精子症などの男性不妊の治療を行う。
    2001年 馬車道レディスクリニック開業東邦大学大森病院 第1産婦人科客員講師 医学博士
    日本産科婦人科学会認定医 日本生殖医学会会員
    日本受精着床学会会員

    ≪「馬車道レディスクリニック」について≫

    クリニック名:馬車道レディスクリニック
    院長:池永秀幸 医師
    住所:〒231-0012
    神奈川県横浜市中区相生町4-65-3
    HP URL:https://www.bashamichi-lc.com/

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