• TOP
  • > Contents > 医療従事者様向け > 子宮内フローラを改善する方法についての研究

    Contents

    子宮内フローラを改善する方法についての研究

    子宮内フローラが乱れている時に、何をすれば善玉菌であるLactobacillus(ラクトバチルス・乳酸桿菌)が増えて、細菌のバランスが改善するのか、とても大きな課題でした。


    元々、腟内のLactobacillusが減少すると、細菌性腟症と呼ばれる病気として診断されるため、抗生剤による治療や、ラクトフェリン、生きた菌カプセルを用いた臨床研究が進められています。しかし、子宮内の菌環境も同じように改善するかどうかはわかっていませんでした。


    今回、京野アートクリニックの京野先生らは、(私の知る限り)世界で初めて、子宮内フローラを改善する方法を見つけました。


    京野アートクリニックにて子宮内フローラ検査を受けた不妊治療患者92名のうち、Lactobacillus の占有率が90%以上(LDM)だった患者さんは47名、90%未満(NLDM)だった患者さんは45名でした。


    不妊治療患者の約半数の人で、Lactobacillusが少ないことがわかりました。


    そこで、Lactobacillusが少ない患者さんに対して、抗菌薬、生菌膣剤のプロバイオティクス、ラクトフェリンなどのプレバイオティクスを組み合わせて試したところ、子宮内のLactobacillusの割合が増え子宮内菌環境が改善することを発見しました。さらに、改善した患者さんで、妊娠に成功したことが報告されました。


    改善した患者さんを含めたLactobacillusが豊かな群(n=47+9)の患者あたりの妊娠率は58.9%で、Lactobacillusが豊かでない群(n=36)の妊娠率は47.2%でした。Lactobacillusが90%未満でも妊娠した患者さんを詳細に調べてみたところ、5名はLactobacillusが80%以上であり、2名はBifidobacteriumが豊富でした。


    BifidobacteirumはLactobacillusと同じ乳酸菌のため、Bifidobacteirumが多い患者さんは悪くないと考えて解析から除外しました。

    次に、Lactobacillusの占有率が80%以上と80%未満の2群に分けて再解析したところ、Lactobacillus 80%以上の群の患者当たりの妊娠率は61.3%に対し、Lactobacillus 80%未満の群の妊娠率は40%で、妊娠成績に有意差が認められました。


    この論文では、子宮内フローラが改善できること、改善することで妊娠する可能性が高まること、Lactobacillusが多いほど妊娠成績が良いことがわかりました。更なる研究が楽しみですね。


    【出典】
    A pilot study and case reports on endometrial microbiota and pregnancy outcome: An analysis using 16S rRNA gene sequencing among IVF patients, and trial therapeutic intervention for dysbiotic endometrium.


    Kyono K et al, Reproductive Medicine and Biology