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    子宮内フローラは改善できる?_妊活研究会での講演レポート(後半)

    ※この記事は2024年2月14日に、妊活研究会でVarinos代表の桜庭が講演させていただいた際のレポート後半です。
    前半の記事「子宮内フローラとは?~妊娠・生児獲得率の関係など~」はこちらから

    前半では、子宮内フローラとは何か、なぜ不妊治療や妊娠・出産において重要視されているのかなどについてお話しました。後半では、子宮内フローラが良くなかった場合、治療・改善できるのか?についてお話したいと思います。

    子宮内フローラを調べる検査とは?

    子宮内フローラは、妊娠率や生児獲得率、早流産に関係することが分かってきています。 そのため子宮内フローラは知っておいた方が良いということになるのですが、子宮内フローラは目で確認することができませんし、乱れていても症状がないことも多いです。

    子宮内の菌環境を調べることが大切な理由。子宮内フローラを調べる検査でしか子宮内の菌環境はわからない

    そのため、患者さんご自身で、子宮内フローラを把握するのは、ほぼ不可能です。

    そこで登場したのが、子宮内フローラを調べる検査です。
    実は、子宮内フローラを調べる検査というのは、世界で数社しか実用化していない難しい技術を要する検査です。

    そして、すべての検査が同じ内容かというと違います。検査会社によって、検体の採取方法や菌の網羅性(どれくらいの種類の菌をみることができるか)、精度が異なることがわかっています。

    我々Varinosは「子宮内フローラ検査」という名前で検査を提供しています。前半パートでもご紹介しましたが、子宮内の菌環境を調べる検査は、我々が世界で初めて実用化しました。

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    Varinosの子宮内フローラ検査の特徴

    子宮内フローラ検査は、ゲノム解析技術を応用し、子宮の中の菌を調べる検査です。他の検査と比べた際に、医師から評価いただいている点としては、主に「網羅性」「精度」「負担軽減」です。

    Varinosの子宮内フローラ検査と他社の検査の違いは、網羅性・精度・検査の負担軽減

    網羅性

    まず、網羅性についてです。
    網羅性というのは、どれくらいの種類の菌を見ることができるかということです。Varinosの子宮内フローラ検査では一度の検査で、バクテリアと言われる細菌であれば、ほぼ全ての菌を見ることができます。 つまり、善玉菌と悪玉菌が、きちんと把握できます。

    精度

    次に精度です。感度とも言われますが、非常に自信を持っています。
    長く無菌と言われてきた子宮の中の菌を調べるため、感度が高くないといけません。検出できないと判定不能になってしまうのですが、Varinosの場合、判定不能率がとても低いのが特徴です。このように微量な菌でも検出できる技術をもっているのがVarinosの強みです。

    検査の負担軽減

    最後が負担軽減です。細長いスポイトのような器具を使い医師が子宮の中の粘液(子宮内腔液)を採取します。つまり、子宮内膜の組織は、取らなくてよい検査です。痛みには個人差がありますが、痛みの軽減につながっていると思います。

    ▶子宮内フローラ検査で痛みを感じる場合、どのような要因があるのかは「子宮内フローラ検査が痛い!と言われる原因と対処法を専門医に聞いてきた」で、詳細をご覧いただけます。

    子宮内フローラ検査でよく出てくる「ゲノム」って何?

    先ほど、子宮内フローラ検査はゲノム解析技術を応用した検査とお伝えしましたが、ゲノムとは何か?についてもご説明したいと思います。

    ゲノムとは?

    ゲノム(genome)は遺伝子を意味するgeneと全てを意味するomeが組み合わさった造語です。つまり、ゲノムというのは「遺伝子の全て」ということになります。生物はすべて 遺伝子の設計図を持っています。人間だけではなく、動物や植物、虫、そして細菌も遺伝情報であるDNAを持っています。
    そこで、ゲノム解析技術により菌のゲノム情報を調べることで菌の種類を特定することができるのです。

    子宮内フローラ検査の流れ

    医療機関にて、子宮の中から子宮内腔液を採取します。それを東京・お台場にあるVarinosのラボに輸送してもらいます。Varinosのラボでは検体から遺伝物質であるDNAを抽出し、抽出したDNAを最新の技術によって解読します。

    Varinosの子宮内フローラ検査の流れ

    DNAはATGCという4つのアルファベットが大量に連なっています。この4つのアルファベットの並びにより生物を特定できるのですが、どのような並びになっているかは、最新の機器が読み解いてくれます。その次に自社のデータデースと照合します。例えば大腸菌だとこの配列、ラクトバチルスはこの配列というのがデータベース上にあるので、そこと照合することで、どの菌がどのくらい子宮内にいるかが詳しく調べられます。

    その結果を検査報告書として医療機関にお戻しします。医師は検査報告書に記載されている菌環境に応じ、(改善が必要な場合は)治療を行っていきます。

    子宮内フローラ検査を受けていただきたい方は?

    子宮内フローラ検査は
    ・これから妊娠を望むすべての方
    ・不妊治療を受けても妊娠しない方
    ・良好胚を移植しても妊娠しない方
    ・流産や早産の経験がある方や流早産を繰り返している方

    に受けていただきたいと思っています。
    現在、子宮内フローラ検査は北海道から沖縄まで、国内の350を超える施設で導入していただいています。検査数も累計3万件以上となっています。(2023年9月末時点)

    子宮内フローラ検査を受けられる医療機関一覧はこちら

    子宮内フローラ検査で結果が良くなかった場合の治療法とは?

    子宮内フローラ検査の結果が良かった場合、不妊の原因はその他にあることがわかります。一方で、子宮内フローラが良くなかった場合のお話をしたいと思います。

    子宮内フローラ検査の結果報告書には子宮内にラクトバチルスが何%いるかや、そのほかにどのような菌がどのくらいの割合でいるかが記載されています。そして、ラクトバチルスが90%以上か未満かでLDM(Lactobacillus-dominated microbiota)、NLDM(non- Lactobacillus-dominated microbiota)というカテゴリー分けされます。

    医師は子宮内フローラ検査の結果をみながら、個々人に応じた治療を行います。ラクトバチルスが100%の方もいれば0%の方もいます。そのため、だれでも同じ治療法で改善できるというわけではないのです。

    ただし、大きく分けると、3つの治療法が挙げられます。

    子宮内フローラ検査の結果に応じた医療機関での治療方法

    ラクトバチルスが少ない場合

    一つ目は、ラクトバチルスが少ない場合です。
    この場合、ラクトフェリンという栄養素を補うことで、ラクトバチルスが増えやすい環境に整え、改善を図ることができます。

    治療した方がよい特定の悪玉菌が検出された場合

    二つ目は、治療した方がよい特定の悪玉菌が検出された場合です。
    悪玉菌は何もしないと、 なかなか消えてくれません。そのため、抗生物質を使うとよいということがわかってきています。そして悪玉菌を排除した上で、ラクトバチルスを増やすためラクトフェリンなどを摂取すると改善の効率が良いことがわかってきています。

    ラクトバチルスが全くいない場合

    三つ目は、ラクトバチルスが全くいない場合です。ラクトバチルスが0%というケースはよくあります。結果を受け、ショックを受ける方もいらっしゃると思いますが、多くの場合で改善できることがわかってきています。
    ラクトバチルスが全くいないというのは、つまり増やす対象がいないということです。そのため、ラクトバチルス自体を摂取して増やしていくことになります。

    今、三つのケースをご紹介しましたが、ラクトフェリンと抗生物質で子宮内フローラが改善したという論文もあります。

    子宮内フローラの改善に関する論文。抗生物質とラクトフェリンによる治療を実施する前と後

    左の棒グラフの上段が治療前で、下段が治療後です。
    黄色がラクトバチルスの割合です。上段の治療前を見ていただくと黄色が少なくその他の色の割合が多い状態です。何かしらの理由でラクトバチルスが90%未満になってしまっている患者さんに対し、抗生物質とラクトフェリンを摂取していただいたところ、下段のように、ほぼラクトバチルスが100パーセントの状態になったというデータです。

    さらに右の表では、どういう治療をして、どういう経過をたどったのかが示されています。
    上から二番目と三番目については、子宮内フローラの改善後に妊娠という結果が得られています。

    子宮内フローラが乱れる要因は何?

    我々が調べている中でわかってきた子宮内フローラが乱れる要因は
    ・喫煙
    ・ストレス
    ・生活習慣
    ・抗生物質
    です。

    子宮内フローラが乱れる要因としては、タバコやストレス、抗生物質などが挙げられる

    子宮内フローラが乱れる要因①タバコ

    まず、子宮内フローラにとって喫煙はネガティブファクターであることがわかっているので、禁煙をお勧めします。

    子宮内フローラが乱れる要因②ストレス

    ストレスが、どのように菌環境を変えているかはまだはっきりしていませんが、免疫状態が悪くなり、悪玉菌が増えてしまうのではないかと考えられています。

    子宮内フローラが乱れる要因③生活習慣

    生活習慣で最近言われているのが、洗いすぎは良くないのではないかということです。
    清潔に保つためには、しっかり洗ったほうが良いと思われている方もいるかもしれませんが、実は洗うことで、大事なラクトバチルスまでもいなくなってしまい、酸性環境が保てず、悪い菌が増えてしまうこともあると言われています。

    子宮内フローラが乱れる要因④抗生物質

    最後に抗生物質ですが、抗生物質は、悪玉菌だけに効くわけではありません。善玉菌にも効いてしまい、善玉菌も減らしてしまいます。そのため子宮内の菌環境を良くするという意味では、うまく使わないといけません。

    このように、子宮内フローラを良い状態をキープするには、生活習慣や食習慣の見直しやラクトフェリンの摂取が有効だと思います。

    ラクトフェリンはなぜ子宮内フローラに良い?

    ここで、先ほどから出てきている「ラクトフェリン」についてご紹介したいと思います。

    ラクトフェリンは菌ではなく、鉄結合性糖タンパク質です。母乳、特に初乳に多く含まれています。生まれたばかりの赤ちゃんを病原菌やウイルスから守っていると言われています。またラクトフェリンは、涙の主成分の一つであり、子宮頚部でも分泌されています。

    ただ、ラクトフェリンは熱や胃液に弱いという性質があります。赤ちゃんは胃の消化機能が未熟のため腸までラクトフェリンが届くのですが 、大人は日々の食事からラクトフェリンを十分な量摂取するのは難しいと言われています。

    そして、鉄結合性糖タンパク質と言われているラクトフェリンは、鉄と結合することで、悪玉菌の餌となる鉄分を奪います。実は、悪玉菌は、増殖するのに鉄が必要なのです。つまり、ラクトフェリンにより、悪玉菌が増殖しづらい環境を作ることができるのです。そもそもラクトフェリンは殺菌作用もあるため、その相乗効果で悪玉菌が減っていくと考えられています。

    ラクトフェリンは、なぜ子宮内フローラに大切と言われているのか。

    もっとラクトフェリンについて詳しく知りたいという方は「ラクトフェリンとは?効果効能や効率的な摂取方法を解説」記事がオススメ

    サプリメントからだけではなく、食品からもラクトフェリンを摂取したいという方は「ラクトフェリンが含まれる食品は何?効率的な摂取方法も紹介」記事がオススメ

    ラクトフェリンに関し、よくいただくご質問

    ラクトフェリンに関して良くいただくご質問の一つが、「子宮内フローラ検査を受ける前から、ラフトフェリンを摂取してもよいですか?」ということです。

    お答えとしては、「良いです」
    ラクトフェリンは妊娠や出産以外にも
    ・免疫力を高める
    ・炎症を抑える
    など様々な効果が期待できるとされています。
    ただし、ラクトフェリンは牛乳が原材料なので、乳アレルギーの方は、医師と相談をしてください。また、他の病気等の治療をされている方も、やはり医師と相談していただけたらと思います。

    ここで一点補足ですが、子宮内フローラのことを考えた場合、ラクトフェリンを摂取していればよいと一概に言えないこともわかってきています。

    子宮内フローラ検査を受ける前から、ラフトフェリンを摂取してもよいのか?

    例えば、子宮の中に、ラクトバチルスという菌がいない場合です。
    先ほどお話したよう、ラクトフェリンはラクトバチルスのサポーター的存在です。そのためラクトバチルスがいない状態でラクトフェリンを摂取しても増やす対象がいないので、ラクトバチルスは増えません。

    もう一つは、悪玉菌と呼ばれる、妊娠や出産に悪影響を及ぼす菌がいる場合です。
    ラクトフェリンも抗菌作用があるので、悪玉菌を少し減らすということはできるかもしれませんが根本的に排除することはできません

    悪玉菌を排除するには、やはり抗生物質など医師による治療が必要になります。 それに加えてラクトフェリンを摂取するというのは効果があることがわかっていますが、ラクトフェリンだけでは少し力不足というところです。

    また、もう一つよくいただく質問が「妊娠してからも、ラクトフェリンは飲んだ方が良いのか?」というご質問です。
    お答えとしては「出産まで飲み続けていただくのが良い」ということになります。

    「妊娠してからも、ラクトフェリンは飲んだ方が良いのか?」という質問の答えは、「出産まで飲み続けていただくのが良い」です

    実は、子宮内の菌環境は着床だけではなく周産期においても大切なことがわかってきています。子宮の中にウレアプラズマなどの悪玉菌がいると流産や早産のリスクを高めてしまうことがわかってきているからです。また、ラクトフェリンは早産予防の観点でも使われていますので、出産まで子宮内フローラを良い状態で維持するという意味でも継続摂取することが望ましいと考えています。

    妊活研究会での講演レポートは以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    講演者

    Varinos株式会社
    創業者 代表取締役CEO
    桜庭 喜行

    埼玉大学大学院で遺伝学を専攻。博士取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターでのゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。その後、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べるNIPTと呼ばれる「新型出生前診断」を導入したほか、医療機関や研究機関に対し、NIPTやPGT-Aと呼ばれる着床前診断などの技術営業を経て、2017年2月にゲノム技術による臨床検査サービスの開発と提供を行うVarinos株式会社を設立。同年、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化するなど、生殖医療分野の検査に精通。

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