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    デリケートゾーンの臭い …善玉菌・ラクトバチルスが減っている可能性も

    こんにちは。
    子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」など、ゲノムテクノロジーを応用した検査の開発・提供をしているVarinos(バリノス)です。

    おそらく誰もが一度は気になったことがある「デリケートゾーンの臭い」。
    暑い季節は特に汗や蒸れにより、あれ?ちょっと臭うかも。と気になってしまうこともありますよね。
    臭いの発生には、汗や尿、生理中の経血など様々な要因がありますが、背景には「細菌の増殖」も関係しています。

    今回は、なるべく抑えたいデリケートゾーンの臭いを「細菌」との関係から考えてみましょう。

    まず初めに腟の「自浄作用」についてご紹介します。

    腟の自浄作用について

    私たちのカラダには自浄作用(自ら清浄し防衛してくれる力)が働いています。この作用はデリケートゾーン・腟でも働いていることがわかっています。

    下の図はそのイメージとなります。

    簡単にご紹介しますと…
    腟内の粘膜(上皮細胞)の中には「グリコーゲン」という炭水化物の一種が蓄積されています。そのグリコーゲンはエネルギー代謝により「ブドウ糖」になります。ブドウ糖は腟内に生息している善玉菌・ラクトバチルスのエサとして取り込まれ、分解後、「乳酸」が生成されます。その乳酸により腟内は酸性環境となります。
    この酸性環境は良い細菌(善玉菌)にとっては住みやすい環境、反対に悪い細菌(雑菌や病原体)にとっては住みにくい環境となり、腟を正常な環境(善玉菌優位な環境)に整え、悪い細菌から防衛してくれています。

    この自浄作用が乱れてしまう、すなわち善玉菌が減り、悪い細菌が増えると、嫌な臭いの一因となると考えられています。
    ではどのような場合、この自浄作用が乱れて、臭いの発生を引き起こしてしまうのでしょうか?

    自浄作用が乱れてしまい、臭いの一因となるケース

    【ケース①】デリケートゾーンの疾患によるもの

    代表的なものとして、細菌性腟症、腟カンジダ、クラミジア感染症などの婦人科系の疾患があげられます。
    上記の自浄作用が乱れ、善玉菌が減り、このような疾患を引き起こす悪い細菌に感染、増殖することで、痛み、かゆみ、不正出血などの症状に加えて、生臭さを伴うにおいが発生することがあります。

    【ケース②】皮膚の炎症によるもの

    デリケートゾーンは常に高温多湿な環境です。生理中のナプキンや、長時間のおりものシートの使用などでもさらに蒸れてしまい、悪い細菌にとっては好都合な環境に。このような場合、自浄作用が正常でないと、悪い細菌は増殖をし続け、皮膚のかぶれや炎症、臭いの発生へと繋がってしまいます。

    【ケース③】体質によるもの

    デリケートゾーンには多くの汗腺(汗が出る場所)が存在します。汗腺には2種類あり、さらりとした臭いの少ない汗と、油っぽい臭いの強い汗を出すものがあります。デリケートゾーンにはこのうち、においの強い汗を出す汗腺が多く、そこから汗を出しやすい体質の方は、臭いに悩まされることもあるようです。
    そのような体質になりやすい要因としては、悪い細菌の増殖、腸内環境の乱れ、ストレスなど多岐に渡ります。

    【ケース④】洗いすぎによるもの

    デリケートゾーンを清潔に保ちたい、臭いが気になるので念入りに洗いたい、そのような思いから必要以上に洗いすぎてしまうことがあるかと思います。しかし石鹸の多くは、アルカリ性なので、自浄作用によってせっかく酸性に保たれていた環境を崩してしまうことになります。

    【ケース⑤】免疫力低下によるもの

    日頃の疲れやストレス、様々な要因から免疫が低下してしまうと、通常ならば、防衛できるくらいの雑菌でも、通常通りの自浄作用の効果を発揮できずに、雑菌の増殖が進んでしまうことがあります。

    【ケース⑥】年齢によるもの

    自浄作用には年齢の積み重ねも関係しています。

    年齢を積み重ねると「エストロゲン」という卵巣から出されるホルモンの量が低下します。エスロトゲンはグリコーゲンを蓄えることができる腟粘膜を分厚くさせるなどの効果がありますが、量が減ることで、粘膜は薄くなってしまいます。するとグリコーゲンの蓄積量は減少し、それに伴い善玉菌のエサとなるブドウ糖も減少、さらに酸性環境にしてくれる乳酸も減少してしまい、善玉菌は住みにくく、臭いの原因ともなる悪い菌が増殖しやすい環境となってしまいます。

    ↓年齢と子宮・腟の菌環境の関係についてはこちらから
    年齢に負けない良い菌環境を作るには?

    細菌と臭い発生の関係

    様々なケースをご紹介させていただきましたが、どれか一つが原因、いつもそれが原因、とは限りません。
    しかしどちらのケースでもその背景には共通して、「細菌」が一因として大きく関わっている可能性があります。

    腸内で善玉菌を増やしましょう、といった話は昔から言われておりますが、腟や子宮にも細菌は生息していて、その種類によって様々な影響を及ぼすことがわかってきました。

    様々な感染症やそれが引き起こす不快な症状、臭いなどを防ぐためには、良い細菌(善玉菌)による、自浄作用が正常に働いていることが重要になってきます。

    自浄作用を正常に保つには

    食生活や生活習慣の見直しなどに加えて、自浄作用の要でもある善玉菌をしっかりと定着させ、増殖してあげることが大切です。

    元々私たちの腟や子宮の中には善玉菌(ラクトバチルス)が存在しています。しかし何らかの要因でそのラクトバチルスが減ってしまう、もしくはいなくなってしまうと、自浄作用は正常に働かなくなり、悪い菌(雑菌や病原体)が増殖しやすい環境へと変わってしまいます。

    増殖してしまった有害な雑菌や病原体は医療機関で抗生剤投与などの対処が必要です。加えて、善玉菌・ラクトバチルスを補助してあげる目的で「ラクトフェリン」というサプリメントを取り入れるという方法も婦人科や不妊治療クリニックでは行われています。

    今回はデリケートゾーンの「臭い」と「細菌」の関係についてご紹介しましたが、腟や子宮内の悪い菌の影響は、不快な症状や臭いだけではなく、妊娠や出産率にも影響するということが近年の研究でわかってきました。善玉菌は大切な場所であるデリケートゾーンを自浄作用というメカニズムで守ってくれています。

    ラクトフェリンを通じて、善玉菌の応援を私たちはできるかもしれませんね。

    ↓「子宮内フローラと妊娠率・生児獲得率の関係」はこちら
    【専門家に聞く】子宮内フローラと妊娠率・生児獲得率の関係

    この記事の監修者

    Varinos株式会社
    創業者 代表取締役CEO
    桜庭 喜行

    埼玉大学大学院で遺伝学を専攻。博士取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターでのゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。その後、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べるNIPTと呼ばれる「新型出生前診断」を導入したほか、医療機関や研究機関に対し、NIPTやPGT-Aと呼ばれる着床前診断などの技術営業を経て、2017年2月にゲノム技術による臨床検査サービスの開発と提供を行うVarinos株式会社を設立。同年、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化するなど、生殖医療分野の検査に精通。