流産を繰り返したくない…PGT(着床前遺伝学的検査)の「A」・「SR」・「M」の違いや結果の受け止め方

流産の原因は様々ですが、妊娠初期の流産原因として多いのが赤ちゃんの「染色体異常」と言われています。細胞の核にある染色体には、体の設計図(DNA)が収納されています。ヒトの細胞には、通常46本(23対)の染色体があり、赤ちゃんは両親から1セットずつ受け継ぎます。
この染色体の数や構造に異常があると着床しない、着床しても流産してしまう、あるいは生まれた赤ちゃんに先天性の病気が見つかることが多いとされています。
染色体異常は治療をして治すことができません。しかし、体外受精や顕微授精で得た胚(受精卵)の染色体や遺伝子に異常があるかどうかを検査する方法はあります。*
それがPGT(着床前遺伝学的検査/着床前ゲノム検査)です。
今回は、子宮内フローラ検査やPGTを提供するVarinosの創業者で、両検査に共通する技術「ゲノム解析」に精通する桜庭さんに話を聞きました。
*2026年5月現在、日本において、PGTは誰もが受けられる検査ではありません。詳細は後述。

目次
PGT(着床前遺伝学的検査/着床前ゲノム検査)とは?
PGT(Preimplantation Genetic Testing)とは、体外受精や顕微授精で得た胚(受精卵)の将来胎盤になる細胞の一部を採取し、染色体や遺伝子の異常を調べる検査です。
胚を子宮に移植する前に異常の有無を調べ、正常な胚を優先的に移植することで、流産の確率を下げ、妊娠率を向上させたり、重篤な遺伝性疾患のない子どもを得る可能性を高める目的で行われます。
PGTには、大別するとPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)、PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)、PGT-M(着床前単一遺伝子疾患検査)の3種類があります。
ヒト染色体とは
ヒトは23対の染色体(合計46本)を持っています。各染色体の半分は母親(卵子)から、もう半分は父親(精子)から受け継ぎます。
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配偶子である精子と卵子が生成されるプロセス(減数分裂)を経て、精子と卵子が融合する受精がなされます。この受精卵が細胞分裂を始め、胚となります。

PGTを理解するには、この前提知識が重要となります。
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは
PGT-Aは染色体の数に異常がないかを調べる検査です。染色体の数に異常のない胚を移植することで、
流産率の低下
が期待されます。
染色体の数に異常のある4つのパターン
染色体の数の異常には「異数性」「片親性ダイソミー」「倍数性異常」、そして「モザイク胚」があります。
異数性:
ヒトの染色体は1番~22番とXとYの性染色体がありますが、それぞれ通常2本1セット(性染色体はXXかXY)のところ、一部が1本(モノソミー)、3本(トリソミー)となっている状態。モノソミーの多くは臨床的妊娠が認められる以前に消失あるいは妊娠初期に流産し、トリソミーも多くは妊娠初期に流産するとされている。



片親性ダイソミー:
染色体もしくは染色体の一部のコピーを片方の親からのみ2つ受け継いだ状態。多くの場合、子どもの健康や発育には影響を与えないが、発達の遅れ、知的障害、その他の健康問題につながる可能性もある。

倍数性異常:
本来、染色体は23本が2セット、合計46本(2倍体)で構成されるが、1セットや3セット以上をもつ状態。1倍体(染色体数23本)、3倍体(染色体数69本)や4倍体(染色体数92本)などがある。自然流産することが多い。

モザイク胚:
モザイク胚は、正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在した状態を表す。正常胚に比べ、着床率や出生率は落ちるが、妊娠継続すれば多くは健康な赤ちゃんが生まれる。

[関連記事]
▼年齢別:体外受精の妊娠率と流産率~流産の兆候や流産しないためにできることとは
PGT-Aの検査の対象
PGT-Aの対象となるのは、以下の1)、2)、3)のいずれかに該当する夫婦です。
1)反復する体外受精胚移植の不成功の既往を有する不妊症の夫婦
2)反復する流死産の既往を有する不育症の夫婦
ただし、1)と2)について夫婦のいずれかに染色体構造異常(均衡型染色体転座など)が確認されている場合を除く
3)女性が高年齢の不妊症の夫婦 [女性年齢は35歳以上を目安とする(2025年9月時点)]
PGT-Aの検査方法
体外受精や顕微授精で得た胚盤胞(培養5日目〜6日目の受精卵)から、将来胎盤になる栄養外胚葉の一部(5~10細胞)を採取します。その後、採取した細胞からDNAを抽出・増幅し、次世代シーケンサーという最新の遺伝子解析装置にかけて染色体の数を調べます。

PGT-Aの結果を踏まえた対応
染色体の数に異常がない胚を優先的に移植します。反対に、染色体の数に過不足があれば、着床不全や流産を避けるため、医師の判断で移植を見送るケースが多いと言えます。
モザイク胚はどう考える?
モザイクと判定された胚の中にも低頻度モザイクから高頻度モザイクまでモザイク率は様々で、モザイク変化が単一染色体のみに認められるものから、複数の染色体に認められるものまで多様であることから、胚移植後の予後予測は容易ではありません。
モザイク胚以外に評価の高い胚がない場合、PGT-Aによるモザイク状態の内容や頻度などから医師が慎重に判断し、患者様と相談の上、移植するかどうかを決めます。
不妊治療でPGT-Aが注目される理由
女性の年齢と共に流産率が増加し、特に35歳を過ぎると妊娠率の低下と流産率の上昇が顕著になります。(下図)

この理由の一つが染色体の数の異常です。
年齢が上がるにつれ、胚の染色体の数に異常が生じる割合が高まることから流産率が上昇するとされています。
そこで、年齢や過去の胚移植結果を加味し、PGT-Aが選択される場合があります。ただし、現時点(2026年5月時点)で、PGT-Aは保険適用されていません(保険と併用できる先進医療Bとして承認されていても、誰でも・どこでも受けられる検査ではありません)。
そのため、
保険診療による体外受精や顕微授精で得た胚をPGT-Aで調べることはできず(混合診療)、自費診療で採卵から始めなくてはいけない
ため、費用が高額になる傾向にあると言えます。
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▶不妊治療にも関係する「混合診療」や「先進医療」とは?
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▶流産の兆候と原因は?心拍確認後の流産率や流産後の妊娠可能性・妊娠再開までの目安を解説
PGT-SR(着床前胚染色体構造検査)とは
PGT-SRは、ご夫婦のどちらかに染色体の構造異常(転座や逆位など)がある場合に、受精卵の染色体に部分的な過不足がないかを調べる検査です。不育症の一つである習慣流産を防ぐ目的で実施されます。
染色体の形(形状)や、その中にある遺伝子の並び順・長さのこと
胚に構造異常がある場合、「遺伝子の全体の量に過不足がないか」が赤ちゃんの誕生を左右するポイントとなります。
均衡型と不均衡型とは?
構造異常の場合、遺伝子の並び順が変わるだけで遺伝情報の過不足がない「均衡型(きんこうがた)」と、一部が増える・減るといった過不足が生じる「不均衡型(ふきんこうがた)」があります。
均衡型の場合:
親(本人)に均衡型の構造異常がある場合でも身体的症状はでず、通常の健康状態。ただし、
卵子や精子を作る際に不具合が生じる原因になることがある。
なお、胚に均衡型の構造異常がある場合でも、その胚自体は正常胚と同様に扱われ、移植対象となる。
不均衡型の場合:
胚に不均衡型の構造異常がある場合、遺伝情報に過不足があるため、多くの場合、流産となる。出産に至った場合でも先天性疾患を持って生まれてくることが多いと言われている。
主な構造異常4パターン
主な構造異常のパターンとしては、「欠失/重複」「逆位」「転座」があります。
欠失(けっしつ)/重複:
染色体の一部が途切れて失われている、あるいは染色体の一部が重複し余分に増えてしまっている状態。微小欠失など変化の範囲が小さく、生命維持に必要な遺伝子が保たれている場合、出生の可能性もあるが、先天性疾患や障害を伴うことがある。


逆位(ぎゃくい):
染色体の一部が途中で切れて、逆向きに再結合している状態。
遺伝子の全体の量が増減していなければ、何ら症状を持たずに生まれてくることがほとんど。ただし、ひっくり返った境目で重要な遺伝子が破壊されていた場合は、その部分に関わる症状が出ることがある。

転座(てんざ):
本来あるべき場所ではなく、別の染色体につながってしまっている状態。
遺伝子の全体の量が増減していなければ、何ら症状を持たずに生まれてくることが多い。
「相互転座」と「不均衡型転座」
転座には「相互転座」と「不均衡型転座」があります。

相互転座…本来あるべき場所ではなく、別の染色体につながってしまっているが、その断片がお互いに入れ替わっているため、全体の遺伝子の量としては同じで正常。相互転座は均衡型になりやすい。
相互転座をもつカップルの31 . 9 %は診断後の初回妊娠で出産に至っており、転座保因者の流産率は有意に高いが、累積的には68 . 1 %が自然妊娠により出産可能だという報告もある。*
均衡型相互転座は、400 人に1 人程度だが、不育症カップルの場合、5~10%程度に認めると言われている。*
*出典:公益社団法人 日本産婦人科医会
なお、親が相互転座保因者の場合、精子や卵子(=配偶子)、そして受精卵(=接合子)にどのように影響する可能性があるかまとめたのが下図です。
が子どもに与える影響-1024x796.png)
不均衡型転座…本来あるべき場所ではなく、別の染色体につながっており、かつ遺伝子の全体の量があっていない。失われた部分や重複する部分が比較的軽度、かつ重複や欠失しても命の維持に直接関わる遺伝子を含まない場合、赤ちゃんは生まれてくることができる。
その代表例が、親の「ロバートソン転座」に由来する不均衡型転座(転座型ダウン症など)。
1〜22番のどの染色体でも起こり得る「相互転座」に対し、ロバートソン転座は、短腕(染色体の上部)が非常に短い13・14・15・21・22番同士の間でのみ起こる。このうちの2本が結合して短腕を失い、染色体の総数が45本になった状態をいう。
失われた短腕に含まれる遺伝子は他の染色体でも補えるため、本人(親)に症状はないが、遺伝情報が詰まった長腕(染色体の下部)同士が1本にくっついているため、特定の染色体が余分に子どもに受け継がれるリスク(不均衡型になるリスク)がある。例えば、21番の長腕が余分に受け継がれて3本分になると、「転座型ダウン症」と診断される。
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PGT-SRの検査の対象
・夫婦いずれかの染色体構造異常が確認されている不育症(もしくは不妊症)の夫婦
*妊娠既往もしくは流死産既往の有無は問わない。
染色体構造異常が確認されている場合とは?
Gバンド法(G分染法)という、血液の細胞を顕微鏡で観察し、染色体全体の数や構造(転座・逆位など)に異常がないかを調べる染色体検査があります。
2回以上の流産を繰り返した場合や体外受精(顕微授精)で良好胚を移植しても繰り返し妊娠に至らない場合、親のどちらか、あるいは両方に染色体の構造異常が隠れていないかを確認するために行われます。Gバンド法で異常を認めた場合、PGT-SRが実施されます。
なお、Gバンド法を実施する場合は、事前に夫婦のどちらに構造異常があるか特定したいか(聞きたいか)あるいは特定したくないかも確認し、患者さんの意向に合わせ結果を伝えることになります。

不育症や着床不全以外で、構造異常が疑われる場合とは?
不育症や(繰り返し着床しない)着床不全以外にも、偶発的に構造異常を疑うケースがあります。それがPGT-Aです。
親が均衡型の場合、親自身に目に見えて何か症状が現れるわけではないため、最初から構造異常が疑われることはありません。しかし、不妊治療を進める中で、PGT-Aを受けた際、その結果から構造異常が疑われることがあります。

例えば…
・1本丸ごとの過不足(異数性)だけでなく、染色体の一部がちぎれて無くなっている、あるいは多くなっていることがわかる
→欠失/重複、逆位を疑う
・複数の胚において、常に同じ染色体の末端部分が重複、あるいは特定の染色体の末端が欠失していることがわかる
→転座を疑う
このように、偶発的に、PGT-Aで構造異常を疑う結果が出る場合があります。
ただし、インシデンタル・ファインディングス(Incidental findings)といい、
本来の目的とは無関係の異常が偶然発見された場合、事前同意を得ていない限り、患者さんに伝えるかどうかは慎重に考えなければいけません。
PGT-Aの場合、両親の染色体を直接調べていないため、親に構造異常の素因があるかもしれないということは厳密にはインシデンタル・ファインディングスには該当しません。適切な遺伝カウンセリングを実施したうえで、Gバンド法検査を経てPGT-SRに進むかどうかは、医師が状況に応じて判断することになります。
PGT-SRの検査方法
体外受精や顕微授精で得た胚盤胞(培養5日目〜6日目の受精卵)から、将来胎盤になる栄養外胚葉の一部(5~10細胞)を採取します。その後、採取した細胞からDNAを抽出・増幅し、次世代シーケンサーという最新の遺伝子解析装置にかけて染色体の構造を調べます。

PGT-SRの結果を踏まえた対応
PGT-SRの結果を踏まえ、染色体の構造異常に由来する染色体の過不足のない胚を移植することになります。
PGT-M(着床前胚遺伝子検査)とは
夫婦のどちらか、あるいは両方が持つ重篤な単一遺伝子疾患を子どもに遺伝させないよう、体外受精(顕微授精)で得た胚(受精卵)を子宮に移植する前に、特定の遺伝子変異の有無を調べる検査です。
1つの遺伝子の変異によって引き起こる疾患で、症状が重く生命や日常生活に深刻な影響を与える遺伝性疾患の総称です。筋ジストロフィーや嚢胞性線維症などが挙げられます。
なお、重篤な単一遺伝子疾患として指定されているものはなく、
申請のあった一例毎に審査を行い、審査ではPGT-Mを希望するご夫婦の生活背景、置かれた立場、お考えの内容を考慮した上で適応を判断するため、同一の疾患であっても審査結果の判断が異なる場合が生じます。
第52回日本産科婦人科学会評議員会
としています。
このようにPGT-Mは、患者さんの希望や担当医の判断だけでは実施できず、日本産科婦人科学会への個別の申請と承認が必要なため、日本においては検査を受けること自体に高いハードルが存在します。
どのような場合にPGT-Mが求められる?
日本においては2つのケースが挙げられます。
一つは、子どもを望む方が遺伝子疾患を発症しているケースです。
もう一つは、ご本人は遺伝子疾患を発症していないが保因者(特定の遺伝子や染色体の変化を持っていても自分自身は発症しない方)である場合です。後者の場合、第一子に遺伝子疾患が現れ、第二子以降を考えた際にPGT-Mを希望されることが多いと言えます。
なお、ヒトの場合、2~3万個ある遺伝子の中で病気に関わるのは数百と言われています。そして、その多くが(お父さんの遺伝子とお母さんの遺伝子)2つのうちどちらかが正常であれば発症せず、両方に変異があると発症するとされています。

PGT-Mの適応
PGT-Mの適応について、日本産科婦人科学会は以下のように発表しています。
【4】適応と審査対象および実施要件
「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する見解(日本産科婦人科学会)
1)検査の対象は、本法を希望する夫婦の両者またはいずれかが、重篤な遺伝性疾患児が出生する可能性のある遺伝子変異または染色体異常を保因する場合に限られる。適応の可否は、本会が主導する会議において審査される。
2)着床前遺伝学的検査の適応となる重篤な遺伝性疾患の重篤性の定義は、「原則として、成人に達する前に、日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請(審査)の時点で、そのような状態になることを回避するための有効な治療法がないか、あるいは治療法がある場合でもその治療法が高度かつ侵襲度の高いもの」とする。
3)本法の実施にあたっては、所定の様式に従って本会に申請し、施設の認定と症例の適応に関する承認を得なければならない。なお、症例の審査方法については「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査に関する細則」に定める。
4)本法の申請は、夫婦双方の同意に基づき行われる。本法の実施にあたっては、実施者は実施前に当該夫婦に対して、本法の原理・手法、予想される成績、安全性、他の出生前遺伝学的検査との異同などを動画・文書を用いて説明の上、夫婦の自己決定権を尊重し、文書により同意を得て、これを保管する。また,被実施者夫婦およびその出生児の個人情報の厳重な保護を行うこととする。
5)審査対象には、検査を行う家系の遺伝学的情報(遺伝子・染色体)の詳細、検査法、検査結果の解釈と判定の方法が含まれる。さらに、本法を検討している夫婦に対して実施された検査前の遺伝カウンセリングの内容も審査対象に含まれる。
PGT-Mの検査方法
PGT-Mの前に、まず親が遺伝子疾患に応じた検査を行い、遺伝子内のどの部分に変異があるかを正確に確認します。そして、事前にその遺伝子変異を検出する検査方法を確立します。
その後、体外受精や顕微授精で得た胚盤胞(培養5日目〜6日目の受精卵)から、将来胎盤になる栄養外胚葉の一部(5~10細胞)を採取します。採取した細胞からDNAを抽出・増幅し、遺伝子変異を検出できる検査法を用いて特定の単一遺伝子変異が受け継がれているかどうかを調べます。

ただし、PGT-Mを実施できる医療機関は非常に限られています。
▼日本産科婦人科学会 施設検索
https://jsog.members-web.com/hp/search_facility
*「PGT-M」を選択肢、検索してください。
なお、PGT-Mと併せてPGT-Aを実施できるかについて、
PGT-Mの実施の承認を受けた夫婦がPGT-Aの見解の内容に合致した不妊症あるいは不育症の状
第52回日本産科婦人科学会評議員会
況である場合(2回以上の胚移植不成功もしくは2回以上の流産既往の場合)には同時に行うことは可能です。
としています。
PGT-Mの結果を踏まえた対応
特定の単一遺伝子変異を「受け継いでいない」あるいは「発症しない(保因者)」胚を選別して移植します。
保因者(将来発症はしないが遺伝子は持つ)の胚の扱いについて、
現在、PGT-Mは重篤な遺伝性疾患に罹患している胚の移植を回避するという目的でのみ承認しております。つまり、重篤な遺伝性疾患に罹患していない胚と診断された場合、保因の有無の結果についてはクライアントへ開示しない(移植するとしても)としています。
第52回日本産科婦人科学会評議員会
としています。
PGTは誰もが気軽に受けられる検査ではない
PGTは検査の対象条件(前述)や費用面から、誰もが気軽に受けられる検査ではありません。
PGTの費用
PGT-A、PGT-SR、PGT-Mは保険適用されておらず、検査費用は全額自己負担となります。それだけではなく、保険診療による体外受精や顕微授精で得た胚を検査に回すことができないため(混合診療)、PGTをするためには、排卵誘発や採卵、培養などにかかる費用もすべて自己負担となります。(2026年5月時点)*
*PGT-Aは先進医療Bに承認されている技術もありますが、先進医療Aと違い、限られた医療機関、限られた人数しか実施できません。ただし、先進医療としてPGT-Aを実施できる場合、保険診療と併用できる(保険診療で実施した体外受精や顕微授精で得た胚をPGT-Aできる)、また自治体の先進医療の助成対象や民間保険会社の先進医療特約の保障対象になる可能性があります。
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PGTとカウンセリングの重要性
特にPGT-SR(着床前胚染色体構造検査)とPGT-M(着床前胚遺伝子検査)は、胚の問題だけではなく、親本人あるいはパートナーがもつ「遺伝に関わる情報」を知ることになります。
これから「家族の未来」を築き上げていこうと考えるご夫婦やカップルが後悔のない選択をするためにも遺伝カウンセリングが重要視されています。
日本産科婦人科学会の指針では、PGT-SRおよびPGT-Mの実施にあたっては、検査の『前』と『後』での遺伝カウンセリングを必須としています。特に、特定の遺伝性疾患を対象とするPGT-Mでは、実施前に利害関係のない(=検査を受けるクリニックとも関係のない)『臨床遺伝専門医』による遺伝カウンセリングを受けることが義務づけられています。
詳細は日本産科婦人科学会雑誌第78巻第一号にも記載されています。
PGTに関するまとめ
今回は、PGT-A・PGT-SR・PGT-Mについてご紹介しました。
流産や不育症の原因は様々で、防げない流産や理由がわからない流産もありますが、PGTにより流産の確率を下げられる可能性もあります。
PGTは誰でも受けられる検査ではありませんが、医師からPGTの話があがった際、本記事がPGTを理解する上で、皆様のお役に立てば幸いです。
この記事の監修者
Varinos株式会社
創業者 取締役会長
桜庭 喜行
埼玉大学大学院で遺伝学を専攻。博士取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターでのゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。その後、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べるNIPTと呼ばれる「新型出生前診断」を導入したほか、医療機関や研究機関に対し、NIPTやPGT-Aと呼ばれる着床前診断などの技術営業を経て、2017年2月にゲノム技術による臨床検査サービスの開発と提供を行うVarinos株式会社を設立。同年、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化するなど、生殖医療分野の検査に精通。

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