POC(流死産絨毛・胎児組織)染色体検査とは?検査でわかること・費用・受ける流れを解説

流産のあとに「なぜ流産してしまったのか」「流産を繰り返さないために何をすればよいのか」と悩んでいる方は少なくありません。
特に流産を繰り返す場合、原因を探るため、流産後に胎児の組織から染色体の状態を確認するPOC(流死産絨毛・胎児組織)染色体検査が検討されることがあります。
POC検査は、流産組織のうち胎児由来の主に絨毛(じゅうもう)組織を用いて、染色体の数や一部の変化を調べる検査です。
今回はPOC検査を提供するVarinos株式会社・創業者で遺伝子検査に精通する桜庭さんに、検査の意義やPOC検査の種類と特徴、費用の目安、検査の流れなどを解説してもらいました。検査を受けるべきか迷っている場合の判断材料として、お役立ていただければ幸いです。

目次
POC(流死産絨毛・胎児組織)染色体検査とは?
POC(流死産絨毛・胎児組織)染色体検査は、流産した組織のうち胎児由来の絨毛組織を調べ、染色体の数や一部の構造変化を確認する検査です。
流産の背景にはさまざまな要因がありますが、
赤ちゃんの染色体異常が関係するケースは少なくありません。
原因を推定する手がかりが得られると、次の妊娠に向けた検査や対策を検討しやすくなります。
POC検査は「Products of Conception」の略で、日本語では流死産絨毛・胎児組織染色体検査とも言われます。検査手法は複数ありますが、大きくは培養を必要とする方法と、DNAを直接調べる方法で特徴が分かれます。

POC検査の基本
POC検査で使うのは、主に絨毛組織です。
絨毛は将来胎盤になる組織で、胎児由来の遺伝情報を含みます。この組織を調べることで、流産した胎児に染色体異常があったかを確認することができます。
ここで注意したいのは、「流産した組織なら何でもよい」わけではない点です。母体側の組織が多く混ざると、正常な結果に見えても母体細胞を見ている可能性が残ります。
POC検査は、採取段階で絨毛を見分けること、検査前に不要な組織をできるだけ除くなど、検体の扱いが結果の精度にも影響します。
「胎盤は赤ちゃんとお母さんの組織が混ざり合っていますが、へその緒から胎盤の赤ちゃん側までは赤ちゃん由来となります。(桜庭さん)」

なお、従来から使われてきたG分染法(Gバンド法)は、細胞を培養して染色体を観察する方法です。一方、現在はNGS(次世代シーケンシング)やマイクロアレイ法のように、DNAを直接解析する手法も用いられています。後者は細胞培養が不要なため、検体保存や輸送の面で扱いやすいという利点があります。(詳細は後述)
どんな場面で検討されるか
POC検査は、
とくに流産を繰り返している場合などに、原因を調べ、次の妊娠に向けての治療方針を検討するために候補に挙がる検査
です。
ただし、POC検査は流産の原因をすべて特定できる検査ではありません。染色体異常が確認できれば一つの重要な手がかりになりますが、異常が見つからないからといって他の原因が否定されるわけではありません。子宮の形態や内分泌、免疫、精子や卵子の要因など、別の視点での評価が必要になることもあります。検査の位置づけは「原因の全解明」ではなく、「次に取るべき方法を絞るための判断材料」です。
検査名が似た検査との違い
POC検査は、PGT-A(着床前遺伝学的検査)やPGT-SR(着床前胚染色体構造検査)と混同されやすい検査です。いずれも染色体の量的変化をみる点では共通しますが、目的が異なります。
●PGT-A
PGT-Aは体外受精で得られた胚の数的異常を移植前に調べ、異常のない胚を優先的に移植することで流産率の低下、妊娠率の向上を目指す検査です。これに対してPOC検査は、流産した組織を調べて流産の背景を探る検査です。
●PGT-SR
PGT-SRは、親に均衡型転座などの構造異常がある場合に、移植前に胚が親の構造異常の影響を受けていないか調べる検査です。
POC検査の結果から、染色体の部分的な増減パターンが見え、親の構造異常が示唆されることがあります。その場合は、両親の染色体検査や、その後体外受精で得た胚を移植前にPGT-SRで調べるといった方針が取られることもあります。
[関連記事]
流産を繰り返したくない…PGT(着床前遺伝学的検査)の「A」・「SR」・「M」の違いや結果の受け止め方
POC検査でわかることと結果の活かし方
POC検査だけで流産の原因がすべて確定するわけではありません。結果を正しく受け止めるためには、「何がわかるか」と同時に「何は断定できないか」を理解しておくことが大切です。
検査でわかる主な内容
POC検査では、流産組織に含まれる胎児由来の染色体情報を調べます。特に重要なのは、染色体の本数に増減があるかという点です。たとえば、通常は2本あるはずの染色体が1本しかない、あるいは3本あるといった変化は、流産に関与する代表的な要因として知られています。
こうした数的異常の有無がわかると、今回の流産が偶発的な染色体異常によるものだったのか、それとも別の原因も検討すべきかを整理しやすくなります。実際の検査では、全染色体を広く確認する形式が多いと言えます。
検査法によっては、染色体の一部が欠けている、重複しているといった部分的な増減が示唆されることもあります。これは「構造異常そのものを直接見ている」というより、DNA量の偏りから変化を推定している形です。そのため、結果の読み取りは単純ではなく、必要に応じて両親の染色体検査など次の評価につながります。
結果の読み方で大切な点
検査結果に「正常」と書かれていても、必ずしも胎児側に問題がなかったと断定はできません。
POC検査では、採取された組織の中に母体の細胞が混ざると、判定が難しくなることがあるためです。
とくにXX(性染色体/女性はXX、男性はXY)という結果は、胎児が女児で本当に正常だった場合と、母体細胞の混入でそのように見えている場合の区別が課題になることがあります。
そういった意味では、検体採取の際、胎盤になる絨毛組織を適切に選ぶこと、検査の段階で不要な組織をできるだけ除くことが結果の信頼性につながります。なお、施設の方針や医師の判断によりますが、母体DNAを比較用に採取する方法もあります。
一方で、染色体異常が見つかった場合は、少なくとも今回の流産については胎児側の要因が関与した可能性を考えやすくなります。
結果を次の治療方針にどう活かすか
POC検査の価値は、結果を次の判断につなげられる点にあります。たとえば染色体の数的異常が確認された場合、偶発的な流産であった可能性もありますが、女性(母体)が高齢であるケースでは、加齢に伴う卵子の染色体異常などを加味し、体外受精で得た胚をPGT-Aで調べ、染色体異常がない胚を優先的に移植するなどの方針が取られることもあります。

一方、染色体の数的異常が見当たらない場合は、評価の軸が変わります。不育症の検査、子宮内の形態評価、ホルモン環境、甲状腺機能、自己抗体、血液凝固関連の確認など、母体側を含めた検討が行われます。ここで大切なのは、「異常なし=原因不明で終わり」ではなく、つぎの妊娠に向けた治療を検討する材料として使うことです。
構造変化が疑われる場合
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一部の染色体で部分的な増減がみられると、転座などの構造的な変化が背景にある可能性が検討されます。この段階で親のどちらかに均衡型転座があるかを確認するため、両親の染色体検査が提案されることがあります。
もし親側の構造異常が確認された場合、体外受精とPGT-SRの検討など、状況に応じて医師が判断します。
正常結果だった場合
正常結果は安心材料になる面がある一方、解釈に慎重さも必要です。前述の母体細胞混入に加え、検体の状態によっては十分な情報が取れないことがあるためです。結果が正常でも流産の理由が確定したわけではなく、臨床経過や超音波所見、既往歴とあわせて判断する流れになります。
特に流産を繰り返している場合は、POC検査を1回の結果だけで切り離して考えないことが重要です。過去の妊娠経過と並べてみることで、偶発的な染色体異常が重なったのか、別の共通要因がありそうか、などが見えやすくなります。
受ける意義をどう考えるか
POC検査は、繰り返し流産を経験されている方が次の治療へとつなげる足掛かりになる検査と言えます。また、現状では、実施できる医療機関が限られていることや保険適用となるには流産回数や検査方法に制限があり、希望すれば誰もが受けられる検査とは言えません(2026年7月時点)
POC検査の種類とそれぞれの特徴
POC検査は「流産組織の染色体をどの方法で調べるか」によって、必要な検体の状態、結果が出るまでの期間などが変わります。名称だけを見ると難しく感じますが、実際の違いは大きく3つです。培養して染色体を直接見る方法、DNAを網羅的に比べる方法、DNA配列情報をもとに量的な変化を読む方法です。
検査方法ごとの優劣を一概に決めることはできません。採取できた組織の状態、自然流産か手術検体か、どこまで詳しく調べたいか、費用をどこまでかけられるか等で選択は変わります。ここでは、POC検査で使われる代表的な方法をご紹介します。
G分染法(Gバンド法)
G分染法(Gバンド法)は、染色体をギムザ液で染色した際の縞模様を顕微鏡で観察する、以前よりある染色体検査です。一般の染色体検査でも広く知られてきた方法で、POC検査でも従来から使われてきました。実際に染色体の形を見て判断するため、数の異常だけでなく、大きな構造異常を把握しやすい点が特徴です。

一方で、この方法には細胞培養が必要となります。
流産組織の細胞を一定期間育て、分裂中の染色体を取り出して観察するため、結果が出るまでに時間を要します。
なお、培養検査であるがゆえ、採取から搬送までの条件が悪いと培養がうまく進まず、判定不能になることがあります。
自然流産で自宅排出となったケースでは扱いが難しい
と言え、基本的には手術で回収した検体が用いられます。
現在、保険診療となっているPOC検査はこのG分染法(Gバンド法)です。
ただし、妊娠22週未満における自然流産の既往が過去に1回以上ある方が対象であること、また施設基準を満たし、地方厚生局に届け出ている認定施設でないと実施できません。
マイクロアレイ法
マイクロアレイ法は、DNAの量的な増減を高解像度で調べる方法です。基板上に並べられた既知のDNAとDNAプローブ(特定の遺伝子やウイルスを検出するために使う目印をつけた短いDNAやRNAの断片)との結合パターンを読み取り、染色体の欠失や重複を解析します。
G分染法(Gバンド法)のような細胞培養を前提としないため、
DNAが確保できれば検査できる利点があります。

POC検査では、流産組織の染色体異常をより細かく見たいときに候補になります。特に、染色体の一部だけが増えている、減っているといった部分的なコピー数変化を拾いやすい点が強みです。顕微鏡で形を観察する方法では見えにくい微細な異常に対応しやすく、解析の解像度を重視する場面で検討されます。
ただし、すべての構造異常をそのまま「形」として見ているわけではありません。わかるのはあくまでDNA量の増減が中心です。均衡型転座のように、量の増減を伴わない変化は単独では捉えにくいことがあります。結果の読み方には前提知識が必要で、必要に応じて親側の染色体検査などを追加して判断する流れになります。
NGS法
NGS法は次世代シーケンシングと呼ばれる方法で、現在のPOC検査でよく使われる技術の一つです。DNA配列を大量に読み取り、その情報から染色体全体または一部の増減を解析します。
POC検査では、流産組織の染色体数的異常を効率よく確認する目的で使われることが多く
、PGT-AやPGT-SRと技術的な考え方が近いと言えます。

G分染法(Gバンド法)のように培養前提ではないため、検体保存(細胞を生かしたまま運ぶ必要がない)や搬送の自由度が高くなります。
DNAが抽出できれば解析可能なため、自宅等で自然流産した場合でも流産物を(NGS法を取り扱う)医療機関に持参することで検査が可能です。また、培養期間が不要なため、比較的早く結果を返せる検査方法です。
「例えば細胞は冷凍すると死んでしまいますが、DNAは影響を受けません。自宅で流産した場合ですぐに医療機関に持っていけない場合など、(医療機関の指示に従っていただくのが前提ですが)ラップや保存容器に入れ冷凍や冷蔵で保管いただければ検査自体は可能です。なお、Varinosの場合、検体受付をした日を起算日とし、基本的には10営業日以内に報告書をお送りしています。(桜庭さん)」

NGS法の注意点
NGS法も万能ではありません。見ているのは主にDNA量の変化であり、染色体の立体的な並び替えそのものを直接見ているわけではありません。そのため、構造異常が疑われる所見が出ても、親の染色体検査を含めた追加評価が必要になることがあります。
もう一つの注意点は、母体細胞混入です。POC検査では胎児由来の絨毛組織を適切に採取できるかが精度を左右します。母体由来の細胞が多く混ざると、正常に見える結果が本当に胎児由来なのか判断しにくくなります。実際の検査では、医療機関での採取時の見極めと検査会社のラボでの組織確認が重要になります。
どの方法が選ばれやすいか
最近のPOC検査では、培養不要で扱いやすいNGS法やマイクロアレイ法が選ばれるケースも増えています。自然流産や自宅排出、搬送に時間がかかるケースでは、NGS法やマイクロアレイ法が選ばれる傾向にあり、また特にこれらの検査は、検体を冷凍保存することも可能なため、検査するかどうか即決できない場合であっても、一旦は保存し、少し時間をおきよく考えてから検査に回すことができるという利点もあります。
一方で、G分染法(Gバンド法)にも、条件が合致すれば保険適用で検査ができること、大きな構造異常を直接観察できるという強みがあります。
どの方法が適しているかは、検査の目的や検体の状態によっても変わります。

検査法の違いは、結果の見え方だけでなく、そもそも検査が成立しやすいかどうかにも関わります。医師が状況に応じ、適した検査方法を判断することになりますが、検査ごとに得意なこと・苦手なことがある、また費用も異なる点を把握されておくとよいでしょう。
POC検査の費用と保険適用について
POC検査の費用は、検査法、医療機関の運用、保険診療か自費診療かで差が出ます。金額は意思決定に大きく関係しますが、費用だけで決めると、知りたかった情報に届かないことがあります。「どの方法で調べるのか」「どこまで結果を読み解くのか」を含め、金額と検査内容をセットで確認する視点が欠かせません。
なお、保険適用となっているのはG分染法(Gバンド法)ですが、NGS法は先進医療として実施できることもあります(2026年7月時点)。また、自治体によっては不育症検査への助成を行っている場合もあります。制度は改定や運用差の影響を受けるため、受診前に医療機関や自治体に確認すると良いでしょう。
[関連記事]
不妊治療にも関係する「混合診療」や「先進医療」とは?
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東京都:不育症検査助成事業の概要
費用の目安
一般的な目安として、POC検査の費用は保険診療と自費診療で大きく分かれます。保険が使えるケースでは自己負担額を抑えやすい一方、対象となる検査はG分染法(Gバンド法)のみで、流産回数や検体条件に制約があります。
<POC検査をG分染法(Gバンド法)で行い保険適用となる場合の自己負担費用>
(4,465点+386点(分染法加算))×10×0.3=14,553円
このほかに流産手術費などが別途必要になります。
[参考]
今日の臨床サポート
<マイクロアレイ法やNGS法を自費診療で行う場合の費用>
マイクロアレイ法やNGS法は自費診療となり負担額は上がりますが、培養を前提としない方法や、より扱いやすい検体条件を選べる場合があります。なおNGS法においては先進医療という保険診療と併用することができ、かつ保険診療は3割負担のまま、先進医療分のみ自己負担で検査を受けることができる場合もあります。
自費診療の金額は医療機関ごとに設定することができます。そのため、数万円台後半から十数万円台と医療機関によって開きがあります。注意点としては、検査そのものの料金と、周辺費用が別建てになっているケースがあるということ、また、医療機関によっては母体側の検体を追加で採取するなどの費用が発生するケースもあります。検査実施前に、検査費だけでなく「採取から結果説明までの総額」を確認するとよいでしょう。
費用に差が出る要因
– 検査法の違い
– 保険診療か自費診療(先進医療)か
– 採取方法や手術の有無
– 母体側検体の追加有無
– 診察料、結果説明料、送料の含有有無
保険適用の考え方
POC検査だということだけで、保険適用となるかあるいは自由診療になるかは判断できません。流産の回数や検体採取方法、検査手法等によっても変わります。
保険で行われやすいケース
現在保険適用となっているのはG分染法(Gバンド法)のみです。ただし、保険適用となるには条件があります。
<主な条件>
流産・死産の既往:妊娠22週未満における自然流産の既往が過去に1回以上ある方。
対象となる検査方法:G分染法(Gバンド法)
施設基準の認定:厚生労働省が定める施設基準(遺伝カウンセリングの体制など)を満たし、地方厚生局に届け出ている認定施設での実施。
なお、G分染法(Gバンド法)の場合は、基本的には手術で採取した検体を用いる必要があります。自然流産で自宅から持参した検体では、実施できない場合が多いです。
自費になるケース
NGSやマイクロアレイ法は、DNAが得られれば検査を進められる利点があります。培養を必要としないため、物流や保存の面では扱いやすい方法です。ただし、現時点では保険適用にはなっていません。
POC検査を受ける流れと準備
POC検査は、検査法そのものよりも「いつ、どのように検体を扱うか」で進めやすさが大きく変わります。特に流産後は心身の負担が大きく、短時間で判断を迫られる場面もあります。受けるかどうかを落ち着いて考えるためにも、事前に流れを知っておく意味は大きいと言えます。
POC検査は、医療機関ごとに案内方法や採取手順が異なります。検査を希望する可能性がある段階で、POC検査に対応している施設か、院内で検体を採取できるかなど確認しておくとよいでしょう。
受ける前に確認したいこと
最初に押さえたいのは、POC検査を希望しても、すべてのケースで同じ形で進むわけではないという点です。妊娠週数、流産の経過、手術の有無、自然排出かどうか、通院先の体制によって、提出できる検体や検査法が変わることがあります。
確認項目は多く見えますが、大きくは次の4点で整理されます。
1.通院先がPOC検査に対応しているか
2.どの方法で検査する予定か
3.検体の採取を院内で行うか、自宅での対応が必要か
4.結果説明の時期と、追加で必要になる検査があるか
この段階で重要なのは、検査名だけで判断しないことです。同じ「流死産絨毛・胎児組織染色体検査」と案内されていても、培養を要する方法と、DNAを用いる方法では取り扱い条件が異なります。自然流産後の持参検体に対応しやすいかどうかも、方法によって差が出ます。
検査当日までの一般的な流れ
POC検査は、流産の確認後にそのまま話が進むこともあれば、改めて外来で相談して決めることもあります。どちらの流れでも、基本は「検査の適応確認」「検体の確保」「提出」の順です。
院内で子宮内容除去術や流産手術を行う場合は、その際に採取した組織の一部を検査に回す形が一般的です。一方、自然に排出された組織を用いるケースでは、自宅で回収して医療機関へ持参する運用になることがあります。
自宅での対応が必要な場合
自然流産で自宅排出となった場合は、事前の指示の有無が非常に重要です。自己判断で処分すると検査に回せなくなるため、POC検査を少しでも考えているなら、流産が疑われた時点で医療機関に連絡し、持参方法の指示を受けるようにしてください。
DNAを用いる検査では、細胞が生きていること自体は必須ではありません。そのため、培養前提の方法より取り扱いやすい面があります。ただし、何でもよいわけではなく、乾燥、高温、長時間の放置は避けたほうが良いと言えます。
一般には、清潔な容器やラップなどで保管し、できるだけ早く受診する流れになります。
冷所保管を案内されることもありますが、方法は施設ごとに異なるため、必ず医療機関に確認しましょう。
なお、自宅での回収は心理的につらいと感じる方も多いと思います。その場合は、家族に協力してもらう、医療機関に相談するなど、一人で抱え込まないようにしましょう。
母体検体が追加されることがある
医療機関によっては、流産組織だけでなく、母体の頬粘膜や血液などをあわせて提出することがあります。目的は、母体細胞の混入が疑われたときに判定を補助するためです。特に結果が正常に見える場合、その正常所見が胎児由来なのか、母体由来なのかを見分けにくいことがあります。
「Varinosの場合、医療機関からの依頼があれば母体の頬粘膜での検査を行っています(桜庭さん)」
結果説明までにしておく準備
結果が出た後に大切なのは、数値や染色体名だけを見ることではありません。次の妊娠に向けて、何が判断材料になり、残る論点は何なのかを整理することです。そのため、結果説明の前に聞きたい内容をメモしておくと役立ちます。
たとえば、「今回の流産原因として染色体異常が示唆されるのか」「追加で夫婦の検査が必要か」「次周期ですぐ妊活再開を考えてよいのか」「体外受精や着床前検査の検討が必要な状況か」といった点です。POC検査の結果だけで治療方針が自動的に決まるわけではありません。年齢や不育症の評価、これまでの流産回数、治療歴等と合わせて検討する必要があります。
どの検査にも言えることではありますが、検査は結果をどう受け止め、次の治療につなげるかが重要です。そのためにも、結果を聞く前に検査結果の受け止め方やその後の流れを把握しておくとよいでしょう。
POC検査に関するよくある質問
検査を受けるか迷っている段階では、検査の内容や費用だけでなく「検査を受けられないことはあるのか」「結果をどのように受け止めたらよいのか」など様々な疑問があると思います。
そこで、POC検査に関し、多くの方が疑問や不安に思う点について解説します。
1回の流産でも受けられる?
受けられるかどうかは、医療機関の方針と採取できた検体の状態で決まります。一般に、POC検査は反復流産の評価で検討されることが多い一方、1回の流産でも原因確認のために提案されることがあります。
実際には、保険診療の条件と自費検査の扱いが同じではありません。保険での検査を希望する場合、過去の流産経験が条件に入ってきます。またNGS法は先進医療と自費診療がありますが、先進医療の場合には「適応条件」や実施できる医療機関も限られます。マイクロアレイ法は自費診療になりますが、かかりつけの医療機関がマイクロアレイ法に対応しているか確認が必要です。
*[参考]先進医療の各技術の概要(厚生労働省)
結果が正常なら原因なし?
正常という結果だけで、「原因がなかった」とは言い切れません。ここでいう正常は、提出した検体から染色体数の異常や一部の量的変化が確認されなかった、という意味合いです。流産の背景には、子宮形態や内分泌、免疫学的要因、感染、偶発的な異常など、染色体以外の要素が関わることもあります。
もう一つの注意点は、母体細胞の混入です。とくに結果がXX(性染色体)で正常に見える場合は、胎児由来組織ではなく母体側の細胞が多く含まれていた可能性も検討対象になります。必要に応じて母体DNAを照合する運用が取られることがあるのは、この判定精度を補うためです。
自宅での流産でも検査できる?
ケースによっては可能です。G分染法(Gバンド法)のように生きた細胞の培養を前提とする方法は、検体の鮮度や採取条件の影響を強く受けます。一方、NGSやマイクロアレイ法はDNA解析が中心のため、適切に回収できれば検査につながる場合があります。
ただし、保管方法については必ず医療機関に確認しましょう。時間経過、温度、組織の損傷、血液や子宮内膜の混在で判定しにくくなるからです。受診先から事前に案内を受けている場合を除き、流産が疑われた時点でできるだけ早く医療機関へ連絡し、持参方法の指示を受けるようにしましょう。
検査結果は次の妊娠にどう活かせる?
検査結果は、次に何を調べるか、どのような治療が望ましいかを検討する材料になります。たとえば、染色体数の異常が確認された場合は、偶発的な受精卵側の要因として判断し、年齢や既往歴と合わせて、次周期の方針を過度に変えず経過を見ることもあります。
反対に、部分的な増減などから構造変化が疑われる場合は、両親の染色体検査が検討されることがあります。その結果次第で、体外受精でのPGT-SRなど次の選択肢を具体化しやすくなります。POC検査の価値は、結果そのものより、その後の診療の分岐を明確にする点にあります。
検査できないことはある?
あります。代表的なのは、絨毛組織を十分に採取できない場合、母体細胞の混入が多い場合、検体の損傷が強い場合です。検査法によっては結果が出ない、あるいは解釈に幅が残ることがあります。
また、POC検査ですべての遺伝学的異常がわかるわけではありません。方法ごとに得意な範囲が異なり、染色体の数的異常には強くても、非常に小さな変化や別種類の異常は対象外となることがあります。検査前には「何がわかるか」と同じくらい、「何はわからないか」を確認しておくと、結果の受け止め方にズレが出にくくなります。
結果を聞くときに確認したいこと
結果説明では、異常の有無だけを聞いて終わらせないことが大切です。短い診察時間でも、次の3点は確認しておくと判断しやすくなります。
1.その結果の信頼性に影響する検体条件。
2.第二に、追加で親側の検査が必要かどうか。
3.第三に、次の妊娠や治療方針に変更があるかどうかです。
POC検査を含め、遺伝学的検査は結果の意味づけまで含めて説明を受ける重要性が示されています。数値や染色体名だけで理解しようとせず、今後の治療にどう結びつくかまで確認するとよいでしょう。
まとめ:原因を知ることが、未来への確かな一歩になる
検査結果を次につなげる視点
POC(流死産絨毛・胎児組織)染色体検査は、流産の原因として染色体の変化が関与していたかを確かめるための検査です。結果そのものが気持ちをすぐに整理してくれるわけではありませんが、「何が起きたのか」を医療的に把握する材料になります。原因が染色体の数的異常にあったのか、追加の評価を考えるべき状況なのかが見えてくると、次の妊娠に向け検討しやすくなります。
特に、結果を単独で受け止めるのではなく、年齢、流産回数、これまでの妊娠経過、不妊治療の有無とあわせて主治医と整理することが大切です。検査は答えを一つに決めるものではなく、今後の方針を組み立てるための判断材料です。
知ることに自体にも意味がある
原因がわからない状態は、身体面だけでなく心理面の負担にもつながります。POC検査で染色体異常が確認された場合は、偶発的に起きた可能性を踏まえて経過を見る判断につながることがあります。反対に、結果の出方によっては、両親側の検査や次の治療戦略を検討することになります。
検査の価値は「異常の有無」の確認だけではありません。次の一歩を踏み出すためのステップでもあります。
この記事の監修者
Varinos株式会社
創業者 取締役会長
桜庭 喜行
埼玉大学大学院で遺伝学を専攻。博士取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターでのゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。その後、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べるNIPTと呼ばれる「新型出生前診断」を導入したほか、医療機関や研究機関に対し、NIPTやPGT-Aと呼ばれる着床前診断などの技術営業を経て、2017年2月にゲノム技術による臨床検査サービスの開発と提供を行うVarinos株式会社を設立。同年、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化するなど、生殖医療分野の検査に精通。

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