• TOP
  • > Contents > 医師インタビュー > 黄体化未破裂卵胞(LUF)~医師は気にしないって本当?原因・検査・対処法を解説

    Contents

    黄体化未破裂卵胞(LUF)~医師は気にしないって本当?原因・検査・対処法を解説

    黄体化未破裂卵胞(LUF)~医師は気にしないって本当?原因・検査・対処法を解説


    不妊治療を進める中で初めて「黄体化未破裂卵胞(LUF)」という言葉を耳にする方も多いのではないでしょうか。

    黄体化未破裂卵胞(LUF)とは、卵胞が排卵せずに黄体化してしまう状態を指し、排卵障害の一つです。

    今回は、黄体化未破裂卵胞と不妊との関係や検査でどう見極めるか、また対応策について、Kobaレディースクリニック院長・加藤徹医師にお話をうかがいました。



    <この記事のポイント>

    ・黄体化未破裂卵胞(LUF)とは、卵胞が破裂せず卵子が外に出ないまま黄体化する排卵障害のこと
    ・超音波のみでの完全な判定は難しく、単発の発生であれば過度に心配する必要はない
    ・繰り返し起こる場合は背景にあるPCOSや子宮内膜症の治療、または体外受精(採卵)へのステップアップが有効



    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

    執筆者:Varinos編集部

    LINE登録バナー


    黄体化未破裂卵胞(LUF)とは?排卵の仕組みと妊娠への影響

    黄体化未破裂卵胞(LUF)は、

    見た目には排卵後のように進んでいるのに、実際には卵子が卵胞の外へ出ていない状態を指します。

    そのため、LUFは排卵障害のひとつと言えます。

    正常な排卵と黄体化未破裂卵胞(LUF)の違いを図解


    排卵はしていないにもかかわらず、卵胞が黄体化してプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されるため、排卵後と同じように基礎体温が上昇します。

    そのため、

    「高温期がある=排卵している」とは限りません。

    実際の診療でも、基礎体温や排卵検査薬だけでは判断できず、超音波(エコー)検査などを組み合わせて見極めます。

    『大前提として、LUFは証明するのが難しいと言えます。卵胞が育った後に20mmを超えるサイズでLUFと言える病変があることもありますが、本当に排卵できていないかは証明できません。そのため、臨床上はあまり気にしません。(加藤先生)』


    正常な排卵と黄体化未破裂卵胞(LUF)の違い

    正常な排卵では、卵巣の中で育った成熟卵胞が排卵のタイミングで破れ、中の卵子が卵管へ向かって放出されます。ここで初めて、精子と出会う準備が整います。排卵後は、卵胞の残った部分が黄体に変化し、プロゲステロンという黄体ホルモンを分泌して子宮内膜を妊娠しやすい状態へ整えます。

    LUFでは、この流れの途中までは進みます。卵胞は成熟し、黄体化も起こりますが、

    肝心の「卵胞が破れて卵子が外へ出る」という段階が完了しません。

    つまり、卵胞の中に卵子を残したまま、見かけ上は排卵後のような変化が起こる状態です。

    卵胞が一定の大きさまで育っているのに、その後も消えずに残っていることでLUFを疑うこともあります。


    なぜLUFだと妊娠しにくくなるのか?

    LUFでは卵子が卵巣の外に放出されていないため、どれだけ排卵のタイミングを合わせても精子と出会うことができません。

    つまり

    「受精の機会そのものが作れないこと」が、妊娠に至らない直接の理由

    です。


    黄体化未破裂卵胞(LUF)になりやすい人とは?

    黄体化未破裂卵胞(LUF)の原因を一つ特定することはできませんが、なりやすい方もいます。

    それが、

    多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症の既往がある方

    です。


    原因①:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

    『PCOSの場合、卵巣の皮質が硬いことがあり、そうすると穴を開けないと卵子が外に出られないため、排卵しづらいと言えます。また、そもそも卵胞が育ちづらいことから、LUFになりやすいと言えます。(加藤先生)』 

    ただし、PCOSだから必ずLUFになるわけではありません。


    [関連記事]
    PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)でも妊娠できる?原因から治療まで医師が解説


    原因②:子宮内膜症

    子宮内膜症では、本来子宮の内側にあるはずの組織に似たものが骨盤内で炎症を起こし、周囲の組織どうしがくっつく「癒着」を生じることがあります。

    この癒着が卵巣や卵管の周囲に及ぶと、卵巣そのものの動きや、排卵に伴う微細な変化が妨げられるため、卵胞が育っても破裂しにくくなる可能性があります。特に卵巣にチョコレート嚢胞を伴うタイプでは、卵巣の正常な構造や反応性に影響が及ぶことがあります。

    子宮内膜症の図解


    LUFは繰り返す?高い再発率の理由

    文献によっては、

    黄体化未破裂卵胞の再発率は80~90%に達する

    と報告されているものもあります*。

    ただし、これは誰にでも当てはまるわけではありません。再発しやすい主な理由は、背景に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症といった「排卵障害を引き起こす明確な原因疾患」が存在していることが多いためです。原因疾患がない方の単発的なLUFであれば、翌周期には正常に排卵することも少なくありません。

    そのため、LUFへの対策としては、単にその周期の排卵を促すだけでなく、

    原因となっているPCOSや子宮内膜症といった根本的な病態へアプローチしていくことが重要

    となります。

    *出典:H Qublan, et al. Hum Reprod. 2006. DOI: 10.1093/humrep/del113


    黄体化未破裂卵胞(LUF)の検査と診断方法

    黄体化未破裂卵胞(LUF)の診断は、主に超音波(エコー)検査と基礎体温の変化を組み合わせて総合的に推測します。

    一般的な排卵チェックでは、排卵推定日を過ぎたあとに超音波で卵巣を確認し、卵胞が小さくなっている(または消えている)か、子宮内膜が排卵後の状態に変化しているかを観察します。また、排卵後に基礎体温がしっかりと高温期に入っているかも判断材料の一つです。

    黄体化未破裂卵胞(LUF)の診断方法

    『ただし、超音波の画像だけで「完全に排卵していない(LUFである)」と完璧に証明することはできません。排卵後の黄体がただ見えているだけのケースもあり、厳密な見極めには限界があります。

    実際の臨床現場で「毎周期必ずLUFになって一度も排卵できない」という患者さんに出会ったことはなく、過度に「LUFかもしれない」と心配しすぎる必要はないと言えます。(加藤先生)』


    黄体化未破裂卵胞(LUF)の不妊治療と改善策

    黄体化未破裂卵胞(LUF)の治療は、「排卵しなかった」という結果だけを追いかけるのではなく、なぜその状態が起きたのかを見極めて、考えられる原因に対処することが大切です。

    実際の治療では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症のような原因疾患へのアプローチ、排卵のタイミングを整える薬物療法、そして必要に応じた体外受精へのステップアップが検討されます。


    基本方針:根本原因(PCOS・子宮内膜症)の治療

    『PCOSが原因で排卵しづらい場合は、hCG注射を用いてLHサージ(排卵指令)を人工的に起こす、あるいは排卵誘発剤で卵胞をしっかり育てて排卵を導きます。

    一方、子宮内膜症の場合は、骨盤内の癒着の影響で卵胞がうまく破裂できないことがあります。その場合は、原因となっている炎症や癒着の状態を考慮しながら治療を進めます。(加藤先生)』


    ステップアップ:体外受精(採卵)が最も有効な解決策

    薬物療法を行ってもLUFを繰り返してしまう場合、最も有効な解決策となるのが「体外受精」へのステップアップです。

    体外受精の最大のメリットは、

    「卵胞が自然に破裂するのを待たず、針を刺して卵子を直接回収(採卵)できる」点

    にあります。つまり、LUFの問題である「排卵(破裂)しない」というプロセスそのものを回避できるのです。

    タイミング法や人工授精でLUFが疑われ、なかなか妊娠に至らない場合は、同じ方法を繰り返すよりも採卵に進む方が効率的と言えます。特にご年齢や卵巣予備能(AMH)の観点から時間を優先したい場合は、体外受精への移行を遅らせすぎないことがポイントとなります。

    【体外受精へのステップアップを検討したいケース】
    ・hCG注射などを使ってもLUFが繰り返される
    ・PCOSがあり、排卵誘発のコントロールが難しい
    ・子宮内膜症などの不妊要因が重なっている
    ・年齢や卵巣予備能(AMH)の面から早めに結果を出したい
    ・タイミング法や人工授精で結果につながらない


    腹腔鏡下卵巣多孔術(卵巣ドリリングなど)を検討する場合

    PCOSが強く関与しており、薬物療法を行っても排卵が安定しない場合には、手術療法(腹腔鏡下手術)が検討されることもあります。代表的なのが「卵巣ドリリング」で、硬くなった卵巣表面に小さな穴を開けることで、排卵しやすい状態を目指す方法です。

    ただし、手術には麻酔や身体への負担(侵襲)が伴い、処置によってかえって卵巣機能の低下につながるリスクもゼロではありません。そのため、現在の不妊治療ではいきなり手術を選ぶのではなく、身体への負担を抑えて効率よく卵子を回収できる「体外受精」を優先して提案されるケースが多くなっています。


    黄体化未破裂卵胞(LUF)に関するよくある質問

    黄体化未破裂卵胞(LUF)と不妊治療に関してよくあがる疑問について、加藤先生にお答えいただきました。

    Q1. LUFは毎周期起こるものですか?

    毎周期必ず起こるとは限りません。臨床上は、正常に排卵する周期とLUFが疑われる周期が混在しているケースが多く、毎回同じように起こる例は多くありません。

    周期ごとに卵胞の育ち方やホルモンの動きが変わるため、次周期には通常どおり排卵することもあります。

    Q2. LUFを自分で予防・改善する方法はありますか?

    LUFそのものを直接防ぐセルフケアは確立していません。

    ただし、背景にPCOSや子宮内膜症が関わる場合は、体調管理が間接的に役立つことがあります。特にPCOSでは、体重変動や代謝の乱れが排卵管理に影響しやすいため、生活習慣の見直しは無駄になりません。基本になるのは、栄養の偏りを減らした食事、無理のない運動、睡眠の確保、過度な体重増減の回避です。

    Q3. LUFが疑われても自然妊娠の可能性はありますか?

    自然妊娠の可能性はあります。LUFが毎周期続くとは限らないため、正常に排卵した周期にタイミングが合えば妊娠につながる可能性はあります。

    ただし、LUFが頻回に起こると、見かけ上は排卵したように見えても実際には卵子が放出されていない周期が増えます。その分だけ妊娠のチャンスは少なくなります。年齢や他の不妊要因が重なる場合は、自然経過を長く待つのではなく体外受精なども視野に入れるとよいでしょう。


    黄体化未破裂卵胞(LUF)のまとめ

    ◆黄体化未破裂卵胞(LUF)は卵胞が破裂せず卵子が外に出ないまま黄体化する排卵障害の一種で不妊の原因となる

    ◆超音波検査や基礎体温の測定だけで完璧に見極めることは難しく単発の発生であれば過度に心配する必要はない

    ◆背景に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症などの原因疾患が存在するケースでは繰り返しやすい傾向がある

    ◆根本的な治療には背景にある原因疾患へのアプローチや排卵誘発剤などでの治療が検討される

    ◆LUFを繰り返す場合の最も有効な解決策は排卵プロセス自体を回避できる体外受精(採卵)へのステップアップ


    この記事の監修医

    Kobaレディースクリニック
    加藤 徹 院長

    平成20年3月 兵庫医科大学卒業
    平成20年4月 医師免許取得
    平成22年4月 兵庫医科大学 産科婦人科
    平成22年7月 大阪府 府中病院 産科婦人科
    平成25年4月 兵庫医科大学病院ささやま医療センター 産婦人科
    平成30年3月 兵庫医科大学大学院卒業
    平成31年4月 兵庫医科大学病院 周産期医療センター長
    令和2年4月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 講師
    令和2年10月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 医局長
    令和4年4月 kobaレディースクリニック 副院長
    令和6年6月~ kobaレディースクリニック 院長 兼 理事長

    [所属学会]
    日本産科婦人科学会
    日本生殖医学会
    日本受精着床学会
    日本エンドメトリオーシス学会

    [資格]
    医学博士
    母体保護法指定医
    一般社団法人 日本専門医機構 産婦人科専門医 / 産婦人科指導医
    一般社団法人 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 / 生殖医療指導医

    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

    LINEバナー