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    【医師監修】排卵障害を招くホルモン異常とは?不妊の原因となる疾患と治療法

    【医師監修】排卵障害を招くホルモン異常とは?不妊の原因となる疾患と治療法

    不妊治療を進める中で「排卵障害」という言葉を聞くと、「私がなかなか妊娠できない理由はここにあるのかも…」「ホルモンバランスが崩れるとなぜ妊娠しにくくなるのだろう」と不安や疑問を感じるもいらっしゃると思います。

    排卵障害は、脳から卵巣への司令系統の乱れや、卵巣そのもののトラブル、さらに全身の代謝やホルモンの異常など、さまざまな原因によって引き起こされます。

    今回は、排卵障害を招くホルモン異常とは何か、不妊の原因となる代表的な疾患やそれぞれの治療法について、Kobaレディースクリニック院長・加藤徹医師にお話をうかがいました。


    <この記事のポイント>

    ◆排卵障害とは、脳や卵巣、全身のホルモンバランスが乱れることで、卵子が正常に発育・排出されない状態のこと
    ◆主な原因には、脳のトラブル(高プロラクチン血症など)、卵巣のトラブル(PCOS、黄体機能不全、早発卵巣不全、LUF)、全身疾患(甲状腺ホルモン異常など)がある
    ◆原因に応じた薬物療法や手術、体外受精へのステップアップなどにより、妊娠・出産を目指すことができる


    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

    執筆者:Varinos編集部

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    なぜホルモンバランスが崩れると不妊(排卵障害)になるのか?

    排卵は一見、卵巣だけで起きている現象のように見えますが、実は「脳」と「卵巣」がチームを組んで連動することで成り立つ、非常に緻密なメカニズムです。
    女性の体の中では、まず脳の「視床下部」と「下垂体」という司令塔からホルモンが分泌され、卵巣へ指示が送られます。その指示を受けて卵巣内で卵胞(卵子を包む袋)が育ち、成熟すると排卵が起こります。


    具体的には、以下のようなステップで進みます。

    排卵の仕組みを図解


    脳(視床下部・下垂体)からの指令: FSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌し、卵巣内の卵胞を育てます。
    卵胞の成熟と応答: 卵胞が育つとエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌され、子宮内膜を厚くします。

    排卵のトリガー(LHサージ): 脳から大量のLH(黄体形成ホルモン)が一気に分泌され、その合図で卵胞が破れて排卵が起こります。

    黄体の形成と妊娠準備: 排卵後の卵胞は「黄体」に変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を放出して受精卵が着床しやすい環境を整えます。

    このように、脳からの指令(FSH・LH)と卵巣からの応答(エストロゲン・プロゲステロン)が完璧なタイミングでバトンリレーを行うことで、毎周期の排卵と妊娠準備が整えられています。

    しかし、ストレスや急激な体重変化、あるいは何らかの疾患によってこの脳と卵巣の連携(ホルモンのやり取り)が乱れてしまうと、卵胞が育たない、育っても破裂できない、あるいは排卵後の環境が維持できないといった「排卵障害」が生じます。


    1.脳(視床下部・下垂体)のトラブルによる排卵障害

    排卵障害の原因としてまず挙げられるのが、排卵の指令を出す「脳のトラブル」です。

    脳の視床下部や下垂体は、ホルモン分泌のコントロールセンターとしての役割を担っています。この部分の働きが低下、あるいは機能異常を起こすと、卵巣へ正しい指令が届かず、結果として排卵がスムーズに行われなくなってしまいます。

    脳のトラブルによる代表的な排卵障害には、以下の2つがあります。


    ストレス・過度なダイエット(中枢性排卵障害)

    脳の「視床下部」は、自律神経や感情のコントロールも行っている非常に繊細な部位です。そのため、以下のような日常的な負担や急激な変化に強い影響を受けます。

    精神的・身体的な強いストレス
    過度なダイエットによる急激な体重減少
    激しい運動や環境の急変
    昼夜逆転などの生活リズムの乱れ

    これらが引き金となり、視床下部からのホルモン分泌が滞ると、

    脳から卵巣へ「卵胞を育てなさい」という指令(FSH・LH)が十分に送られなくなります。その結果、卵胞が育たず、無排卵や無月経といった排卵障害が引き起こされます。


    高プロラクチン血症

    「プロラクチン」とは、本来は妊娠中や出産後に多く分泌され、乳腺を発達させて母乳を作り、また次の妊娠を抑えるために排卵をストップさせる働きのあるホルモンです。

    しかし、

    妊娠や授乳中ではない時期にもかかわらず、何らかの理由でプロラクチンの値が高くなってしまう状態を「高プロラクチン血症」

    と呼びます。

    血中のプロラクチン値が高くなると、体は「今は授乳中だから排卵を抑えよう」と判断してしまいます。その結果、

    脳から卵胞を育てるホルモン(FSH)や排卵を促すホルモン(LH)が出にくくなり、排卵の遅れや停止につながります。

    また、排卵できたとしても、妊娠維持に必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が弱まり、着床しにくくなるほか、流産リスクを高めることもあります。

    高プロラクチン血症は自覚症状がほとんどないケースが大半ですが、お薬(ドパミン作動薬など)で比較的容易にコントロールしやすい疾患でもあります。

    ➜ 【関連記事:高プロラクチン血症とは?原因・症状と妊娠・出産に向けた治療の考え方


    2.卵巣そのもののトラブルによる排卵障害

    脳からの指令(FSH・LH)が正常に届いていても、受け手である「卵巣」そのものに原因があることで排卵がうまくいかないケースもあります。

    排卵障害を引き起こす代表的な卵巣のトラブルを4つ解説します。


    PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

    PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、

    卵巣内で小さな卵胞がいくつも育つものの、1つの卵胞が大きく成熟できず、排卵がスムーズにいかなくなる状態

    です。

    血液検査を行うと、男性ホルモン(テストステロン)やLH(黄体形成ホルモン)が高い傾向にあります。テストステロンの影響で卵巣の表面(皮質)が硬くなり、卵子が外へ飛び出しにくくなることも排卵を妨げる要因のひとつです。

    必発症状は「月経異常(2〜3カ月に1回しか来ない、無月経など)」で、不妊症の代表的な原因として知られています。

    しかし、

    排卵誘発剤の内服などでスムーズに排卵・妊娠に至る方もおり、「PCOSだから妊娠できない」と過度に落ち込む必要はありません。

    ➜ 【関連記事:PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは?原因・症状・妊娠するための治療法


    黄体機能不全

    黄体機能不全とは、排卵後に形成される「黄体」からの黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が不十分な状態を指します。

    通常、排卵後の黄体ホルモンは子宮内膜をふかふかに整え、受精卵が着床・妊娠維持しやすい環境を作ります。しかし、このホルモンが不足すると、子宮内膜が十分に維持できず早めにはがれ落ちてしまうため、「高温期が10日未満と短い」「生理前に茶色い不正出血がある」といったサインが現れます。

    排卵自体は起きていることも多いですが、

    着床のしにくさや流産のリスクを高めるため、不妊や不育の一因となります。

    治療では、不足している黄体ホルモンをお薬(内服薬や腟剤など)で補充するアプローチが中心となります。

    ➜ 【関連記事:黄体機能不全とは?症状・原因と妊娠をサポートする治療法


    早発卵巣不全(POI)

    早発卵巣不全(POI)とは、40歳未満の若い年代で卵巣の働きが低下し、月経不順や無月経になる状態です。

    「早期閉経」とは異なり、POIは完全に卵子がゼロになった状態ではなく、卵巣の機能がゆらぎながら低下していく状態を指します。そのため、周期によっては排卵がみられることもあり、妊娠の可能性が完全に閉ざされたわけではありません。

    主なサインは「3か月以上の無月経」や「急激な周期の乱れ」です。原因は不明なケースが多いものの、時間の経過とともに卵子が減ってしまう疾患であるため、カウフマン療法や低刺激での体外受精、早期の卵子凍結など、一人ひとりのライフプランに合わせた迅速な対応がカギとなります。

    ➜ 【関連記事:早発卵巣不全(POI)とは?症状・原因と妊娠の可能性


    黄体化未破裂卵胞(LUF)

    黄体化未破裂卵胞(LUF)とは、超音波や基礎体温で見ると排卵したように見えるのに、実際には卵胞が破裂せず、中に卵子を抱え込んだまま黄体化してしまう状態です。


    卵子が外へ放出されないため精子と出会うことができず、タイミングを合わせても妊娠に至りません。基礎体温は高温期に入るため、患者さんご自身がセルフチェックだけで見抜くのは難しいのが特徴です

    PCOSや子宮内膜症がある場合、繰り返しやすい傾向にありますが、たまたま単発で起きることもよくあります。

    黄体化未破裂卵胞を証明することは難しく、臨床上は過度に気にしすぎる必要はないと言われることもあります。なお、単発であれば経過を観察し、繰り返す場合は体外受精(採卵により直接卵子を回収する)へステップアップすることで根本的に解決できます。

    ➜ 【関連記事:黄体化未破裂卵胞(LUF)~医師は気にしないって本当?原因・検査・対処法を解説


    3.全身疾患や代謝・体型の乱れによる内分泌異常

    排卵障害の原因は、脳や卵巣だけに留まりません。全身の代謝を司る臓器の不調や、体重(体型)の極端な変化もホルモンバランスを崩し、排卵を妨げる大きな要因となります。


    甲状腺ホルモン異常(バセドウ病・橋本病など)

    首の前側にある「甲状腺」は、全身の代謝(体の回転速度)をコントロールするホルモンを分泌しています。

    この甲状腺ホルモンは、月経周期の安定や排卵、受精卵の着床、妊娠維持に至るまで深く関わっています。

    甲状腺機能低下症(橋本病など): ホルモンが不足すると、脳から甲状腺を刺激しようと分泌される物質(TRH)の影響で「高プロラクチン血症」を誘発し、排卵障害や黄体機能不全を引き起こしやすくなります。

    甲状腺機能亢進症(バセドウ病など): ホルモンが過剰になると全身の代謝が過剰に高まり、月経異常や無排卵を招きます。

    甲状腺ホルモンの補充や抗甲状腺薬で数値を適切にコントロールすることで妊娠・出産を目指すことは十分可能です。

    ➜ 【関連記事:甲状腺機能と不妊・流産リスクの関係性


    肥満・痩せすぎ(体型・代謝が与える排卵への影響)

    女性の排卵機能は、体脂肪の割合や体重の変動にも極めて敏感です。BMI(体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)が標準範囲を大きく外れると、ホルモン分泌に乱れが生じます。


    肥満(高BMI): インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」を招きやすく、これが卵巣での男性ホルモン分泌を増やしてPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の排卵障害を悪化させることがあります。また、妊娠後の合併症リスクを高める要因にもなります。

    痩せすぎ(低BMI): 体脂肪が著しく減少すると、体が「生命の維持」を優先して「生殖機能(排卵)」を一時的にストップさせてしまうことがあります。脳の視床下部からの指令が停止し、無月経や重度の排卵障害につながります。

    どちらの場合も、極端な制限や急激な変動を避け、適切な食事と運動で適正体重に近づけることが排卵機能の回復に向けた大切なアプローチとなります。


    4.排卵障害かもしれない…と心配になったときのセルフチェック

    ここまで排卵障害を招くさまざまな原因を解説してきましたが、「もしかして私も排卵障害かも…」と不安を感じた方もいるかもしれません。


    以下にセルフチェックのポイントをまとめました。

    排卵障害が疑われる主なサイン

    ご自身の月経や基礎体温の記録を振り返り、以下のような項目に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

    月経周期の乱れ: 28〜35日程度の周期から大きく外れ、2〜3カ月に1回しか生理が来ない

    無月経: 3か月以上生理が来ない状態が続いている

    基礎体温の乱れ: 高温期と低温期の「二相性」にならず、全体的に体温が平坦である(無排卵の可能性)

    高温期が短い: 基礎体温を測っても高温期が10日未満で終わってしまう

    生理前の不正出血: 生理予定日より前に、少量または茶色い出血が数日間続く

    これらに1つでも当てはまる場合、排卵障害やそれに伴うホルモン異常が隠れている可能性があります。
    なお、ここに当てはまるものがなくても、少しでも不安に思うことがあれば、自己判断せず、なるべく早い段階で医療機関を受診しましょう。


    排卵障害に関するまとめ

    排卵障害は、脳からの指令、卵巣の働き、甲状腺をはじめとする全身のホルモンバランスなど、さまざまな要素が複雑に絡み合うことで引き起こされます。

    排卵障害と診断されると不安になってしまうかもしれませんが、多くの場合、ホルモン薬の補充や排卵誘発、体外受精(採卵)へステップアップにより、妊娠・出産を目指すことができます。

    早期発見/早期治療が妊娠・出産の確率を高めることにつながります。ご自身の体の変化に目を向け、少しでもおかしいと思ったら、専門の医療機関を受診するようにしましょう。


    この記事の監修医

    Kobaレディースクリニック
    加藤 徹 院長

    平成20年3月 兵庫医科大学卒業
    平成20年4月 医師免許取得
    平成22年4月 兵庫医科大学 産科婦人科
    平成22年7月 大阪府 府中病院 産科婦人科
    平成25年4月 兵庫医科大学病院ささやま医療センター 産婦人科
    平成30年3月 兵庫医科大学大学院卒業
    平成31年4月 兵庫医科大学病院 周産期医療センター長
    令和2年4月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 講師
    令和2年10月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 医局長
    令和4年4月 kobaレディースクリニック 副院長
    令和6年6月~ kobaレディースクリニック 院長 兼 理事長

    [所属学会]
    日本産科婦人科学会
    日本生殖医学会
    日本受精着床学会
    日本エンドメトリオーシス学会

    [資格]
    医学博士
    母体保護法指定医
    一般社団法人 日本専門医機構 産婦人科専門医 / 産婦人科指導医
    一般社団法人 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 / 生殖医療指導医

    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

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