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    早発卵巣不全(POI)でも妊娠できる?原因や治療法・症状を医師が解説

    早発卵巣不全(POI)でも妊娠できる?原因や治療法・症状を医師が解説


    早発卵巣不全と診断されると、「妊娠できるの?」、「治療法はあるの?」と不安な気持ちに押しつぶされそうになる方もいると思います。

    早発卵巣不全は、40歳未満で卵巣の働きが低下し、生理不順や無月経、不妊などにつながることがある状態を指します。

    今回は、早発卵巣不全の正しい知識や子どもを望む場合、どのような治療や対応があるかなど、Kobaレディースクリニック院長・加藤徹医師にお話をうかがいました。


    <この記事のポイント>
    ・早発卵巣不全(POI)は「すぐに卵子がゼロになる」わけではなく、機能がゆらぎながら低下する状態です。

    ・妊娠率はゼロではなく、カウフマン療法や低刺激の体外受精、早期の卵子凍結など「時間の猶予に応じた対応」がカギとなります。

    ・将来の健康(骨粗しょう症・動脈硬化の予防)を守るため、妊娠希望の有無に関わらず閉経年齢までのホルモン補充療法(HRT)が重要です。


    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

    執筆者:Varinos編集部

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    早発卵巣不全(POI)とは?「早期閉経」との違い

    早発卵巣不全とは、POI(Premature Ovarian Insufficiency)とも言われ、一般に40歳未満で卵巣機能が低下し、月経異常や無月経、女性ホルモンの低下がみられる状態を指します。

    「閉経が早く来ること」とひとまとめに理解されがちですが、早発卵巣不全は「すぐに卵子がゼロになる状態」とは限りません。


    「早期閉経」とは何が違うのか

    早期閉経と早発卵巣不全の違いを解説

    閉経とは、卵巣機能が不可逆的に停止した状態を指します。

    一方、早発卵巣不全は、卵巣内に卵子が残っている可能性があり、機能がゆらぎながら低下していく状態です。

    月経が数か月止まったあとに再開することもあれば、治療や自然な経過の中で排卵がみられることもあります。この点が、完全に機能が止まった閉経との違いです。

    そのため、若い年齢で無月経になったからといって、すぐに「もう妊娠はできない」「完全に閉経した」と受け止めるのは早計です。早発卵巣不全は「卵巣の動きが著しく低下している(波がある)」状態も含まれるため、適切な治療やホルモン管理によって、排卵のチャンスを探っていくことが可能です。


    早発卵巣不全の主な症状とセルフチェック

    20~30代で「月経が何か月も来ない」「急に周期が乱れた」「妊活を始めてから月経異常が目立つ」といった変化は見過ごしてはいけないサインです。

    早発卵巣不全は、月経異常やエストロゲン低下による体調変化、なかなか妊娠できないといったことをきっかけに判明することがあります。

    『「無月経」をきっかけに来院し、検査をして早発卵巣不全と診断されるケースも多いと言えます。(加藤先生)』

    症状の出方には個人差があり、無症状に近いまま検査で判明する例もあります。気になる変化が続くときは、自己判断で様子見をせず、早めに医療機関を受診しましょう。

    早発卵巣不全のセルフチェックリスト


    最も注意すべきサインは「無月経・稀発月経」

    早発卵巣不全でまず注目されるのが、月経回数の減少です。とくに、3か月以上月経が来ない無月経や月経の間隔が著しく空く稀発月経には注意が必要です。何周期も連続して乱れる場合は、卵巣機能が低下している可能性があります。

    – 3か月以上月経が来ていない

    – 以前は規則的だったのに急に不規則になった

    – 40日、50日以上あく周期が続いている

    – 月経が来ても回数が明らかに減った

    月経異常の背景には卵巣だけでなく、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、体重減少、強いストレスなど、別の要因が隠れていることもあります。医療機関で検査を受け、適切な治療を行うことが重要です。

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    ほてり・発汗など更年期障害に似た症状

    月経異常に加えて、ほてり、のぼせ、発汗、動悸、イライラ、不眠などの症状が出ることがあります。これは卵巣機能の低下により、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少し、自律神経のバランスが乱れやすくなるためです。
    ただし、こうした更年期に似た症状の出方には個人差があり、ほとんど自覚症状がないまま月経不順だけが続く方もいます。


    不妊・妊娠しにくい状態

    早発卵巣不全では排卵が不規則になり、止まることもあるため、妊娠しにくい状態になります。月経が来ていても毎周期きちんと排卵しているとは限らず、「月経はあるのになかなか妊娠しない」という形で気づかれることもあります。

    妊活中に注目したいのは、以前より周期が不安定になった、基礎体温が二相性になりにくい、排卵時期が読みにくいといった変化です。

    ただし、基礎体温だけで早発卵巣不全を判断することはできません。排卵障害の背景にはPCOS、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症などもあるため、血液検査を含めた確認が必要です。

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    早発卵巣不全の主な原因

    自然発症の早発卵巣不全は40歳未満で1%,30歳までで0.1%程度の発症率とされています。*

    一方で、生まれつきの要因が関わる場合もあれば、治療や手術の影響で起こる場合もあります。

    *出典:女性医学ガイドブック 更年期医療編(2019 年版)


    最も多いのは「原因不明」

    早発卵巣不全では、現在の医学でも明確な原因を特定できないケースが多いとされています。

    原因不明といわれた場合に大切なのは、原因探しを続けることではなく、今の卵巣機能の状態から、今後の妊娠や健康管理をどう進めるか考えることです。


    染色体・遺伝子の異常

    生まれつきの染色体異常や遺伝子の異常が、早発卵巣不全の背景にあることがあります。代表的なのがターナー症候群で、X染色体が1本しかない、または一部が欠けていることで、卵巣が十分に発達しにくい、あるいは早い時期に卵巣機能が低下することがあります。

    この場合、思春期の月経開始が遅れる、月経が来ても途中で止まるといった形で気づかれることがあります。

    なお、染色体や遺伝子の要因が疑われるときは、ホルモン検査だけでなく、染色体検査なども検討されます。


    自己免疫の関与

    自分の体を守るはずの免疫システムが誤って自分の卵巣組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」が原因となることもあります。甲状腺疾患(橋本病など)やアジソン病といった他の自己免疫疾患を併与している場合もあり、必要に応じて関連する血液検査を行うこともあります。


    卵巣の手術・抗がん剤・放射線治療の影響

    医療行為がきっかけで卵巣機能が低下することもあります。これは医原性POIと呼ばれ、卵巣の手術、抗がん剤治療、放射線治療が代表的です。

    卵巣のう腫や子宮内膜症などで卵巣を手術すると、病変の切除と同時に正常な卵巣組織も一部失われることがあります。特に卵巣予備能、つまり卵巣に残っている卵子の力を反映する機能がもともと低い場合は、手術後の影響が目立つことがあります。

    抗がん剤や放射線治療では、卵子や卵巣組織がダメージを受け、治療後に月経が戻らないことがあります。年齢、薬剤の種類、投与量、照射範囲によって影響は大きく異なります。若いから必ず回復するとも言い切れず、逆に月経が再開しても卵巣機能が十分とは限りません。

    このため、がん治療の開始前に妊孕性温存について相談する流れが重視されています。妊孕性温存とは、将来の妊娠の可能性を残すために卵子や受精卵、場合によっては卵巣組織を保存する考え方です。

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    抗がん剤や放射線治療を行う前に行う「医学的適応」の卵子凍結とは?


    早発卵巣不全の診断と治療法

    早発卵巣不全では、症状だけで判断せず、血液検査を中心に卵巣機能の状態を確認します。

    また、治療においては「妊娠できるか」だけでなく、「今後の健康をどう守るか」まで含めて考える必要があります。


    診断方法:血液検査でホルモン値をチェック

    早発卵巣不全の診断においては、問診での月経状況の確認と血液検査が中心になります。血液検査ではFSH(卵胞刺激ホルモン)とエストロゲン、AMHをメインに確認します。

    FSHは脳から卵巣に向けて「卵胞を育ててください」と指令を出すホルモンです。卵巣の反応が弱くなると、体はもっと強く刺激しようとしてFSHを多く出すため、早発卵巣不全ではFSHが高値になりやすいと言えます。反対に、卵巣から分泌されるエストロゲンは低値を示しやすくなります。

    AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣にどの程度卵胞が残っているか(=卵巣予備能)を推定する検査です。早発卵巣不全ではAMHが極端に低いことが多い傾向にあります。


    治療の基本方針:ホルモン補充療法(HRT)

    早発卵巣不全の治療としては、低下したエストロゲンを補うホルモン補充療法が挙げられます。

    女性ホルモンは閉経年齢(50歳前後)まで、骨粗しょう症や動脈硬化のリスクを抑えるなど、体を守る役割を担っています。しかし、20~30代でエストロゲンが大きく低下すると、その保護が早く失われ健康寿命に関わります。妊娠希望の有無に関わらず、不足したホルモンを補う治療が優先的に行われます。


    妊娠を希望する場合の選択肢

    妊娠を希望する場合は、健康管理としてのホルモン補充療法とは別に、妊娠の可能性を高めるための治療や対応が検討されます。

    卵子の数は生まれた時から決まっており、増えることはなく排卵して減ってしまいます。そのため、元々持っている数が少ない方は減るのも早くなります。

    ピルで排卵を抑制したら卵子の数の減少を止められるかというとそうではありません。そのため、パートナーがいる場合は卵子のあるうちに妊娠を目指す、パートナーがいない場合は卵子凍結という選択になります。

    昨今、プレコンセプションケアに力を入れる自治体も増えており、AMH検査の助成が受けられる場合もあります。こういった制度なども活用し、早期に自分の体を知るのが大事と言えます。(加藤先生)』


    体外受精/顕微授精

    パートナーがいて妊娠を望む場合、体外受精や顕微授精が主な選択肢となります。

    ただし、早発卵巣不全では卵巣の反応が低下しているため、排卵誘発剤を使う一般的な方法では卵胞がうまく育たないケースが多く見られます。そのため、低刺激法や自然周期によって頻繁に超音波やホルモン値をモニターし、偶然育ってきた貴重な卵胞(1〜2個)を見逃さずに採卵するアプローチが中心となります。採卵された卵子は体外受精または顕微授精を行い、受精卵(胚)にして子宮へ移植します。

    胚移植

    カウフマン療法

    カウフマン療法とは、エストロゲンとプロゲステロンの薬を周期的に投与することで、一時的に生理のような出血を起こし、ホルモン環境を整える方法です。

    一度高くなりすぎたFSH(脳からの指令)を薬で抑えて卵巣を休ませることで、再び眠っていた卵胞が反応し、排卵に至ることがあります。その排卵のチャンスを逃さずに採卵し、体外受精や顕微授精につなげていきます。

    カウフマン療法の説明

    『卵子の数が少ない方の場合、普通の排卵誘発では反応しないことがよくあります。その場合、何周期かカウフマン療法を行うと、卵巣が反応することがあります。1つでも採卵できれば不妊治療につなげられる可能性もあります。(加藤先生)』


    卵子凍結

    パートナーの有無にかかわらず検討でき、自分の遺伝的なつながりを持つ妊娠の可能性を将来に残すことができます。

    早発卵巣不全で難しいのは、今周期は反応しても次周期は全く反応しない、という不安定さがあることです。卵子がまだある時期を逃すと、その後は採卵自体が難しくなる場合があります。卵子がなくなってからでは、自分の卵子で妊娠を目指すことはできません。この点で、卵子凍結は「治療」そのものというより、将来の選択肢を守るための備えです。

    ただし、卵子凍結は誰でも必ず実施できるわけではありません。採卵に進めるだけの卵胞発育が得られないケースもあるため、早めに医師と相談することが重要です。



    早発卵巣不全でも妊娠・出産は可能?

    早発卵巣不全と診断されると、「もう妊娠はできないのでは」と強い不安を抱く人は少なくありません。ただ、実際には妊娠の可能性が完全にゼロになるわけではありません。生涯にわたる自然妊娠率は5~10%とも言われています。

    また、

    卵巣機能が不安定ながら機能していることもあるため、そのタイミングを見逃さず適切な治療をすることで妊娠に至るケースがあります。

    『早発卵巣不全の場合、ある程度排卵しているか、卵子がとれるかどうかが妊娠できるかにつながります。例えば、20代でAMHが0.5未満かつ排卵がまちまちという場合でも、若年では採取できた卵子の質が比較的保たれていることなど踏まえると、妊娠の可能性は5~10%よりもう少し高くなると思います。(加藤先生)』

    一方で、時間が大きく影響する疾患でもあります。卵巣内の卵子が完全になくなってしまうと、自身の卵子を使った妊娠を目指すことは極めて難しくなります。そのため、「いま妊娠を希望するのか」「将来に備えて卵子凍結をするのか」など、ご自身のライフプランに合わせた対応を、可能な限り早い段階で専門医と相談しながら進めていくことが何より大切です。


    早発卵巣不全に関するよくある質問

    早発卵巣不全と診断されると、妊娠のことだけでなく、将来の健康についても疑問や不安を抱えやすいといえます。そこで、加藤先生によくある質問にお答えいただきました。

    Q1. ピルを飲んでいれば早発卵巣不全は予防できますか?

    いいえ。ピルで早発卵巣不全を完全に予防することはできません。
    ピルを内服することで排卵を抑える事は多少は可能ですが、卵巣に残っている卵子の数が自然に減っていく流れを、ピルで完全に止めることはできません。

    Q2. 食生活の改善やストレス解消で早発卵巣不全は治りますか?

    生活習慣の改善だけで、低下した卵巣機能が元に戻る(治る)とは言えません。

    食生活の乱れやストレスが体調全体に影響することはありますが、それだけが原因で早発卵巣不全になるわけではありません。

    早発卵巣不全は「治す」ではなく、妊娠希望の有無や将来の健康を見据えた「対応・管理」を行っていくことが重要と言えます。

    Q3. POIと診断されたら、将来どのような健康リスクがありますか?

    エストロゲンの低下により、若くして骨粗しょう症や動脈硬化(心血管疾患)のリスクが高まる可能性があります。
    エストロゲンは生理を起こすためだけに関わっているホルモンではなく、骨粗しょう症や動脈硬化の予防など健康寿命にも関わるホルモンです。通常であれば閉経する50歳くらいまで分泌が続きますが、30歳くらいの若い時期に出なくなると、約20年、普通の人よりエストロゲンの保護を受けられる期間が減ってしまうことになります。そのため早発卵巣不全でエストロゲンが十分に分泌されていない方には、健康寿命の観点でエストロゲンを補う必要があります。


    早発卵巣不全のまとめ

    ◆早発卵巣不全(POI)は40歳未満で卵巣機能が低下する状態であり「すぐに卵子がゼロになる」わけではなく機能が揺らぎながら低下すること

    ◆代表的なサインは3か月以上の無月経や稀発月経などの月経異常

    ◆原因の多くは原因不明とされるが染色体異常や自己免疫の関与、卵巣手術・抗がん剤治療・放射線治療などが原因となることもある

    ◆健康管理の観点では、低下したエストロゲンを補い、骨粗しょう症や動脈硬化を防ぐため閉経年齢(50歳前後)までホルモン補充療法(HRT)が優先的に行われる

    ◆妊娠を希望する場合、パートナーのいる方は低刺激の体外受精やカウフマン療法等で卵子のあるうちに妊娠を目指し、未婚の方などは早期の卵子凍結が大切になる


    この記事の監修医

    Kobaレディースクリニック
    加藤 徹 院長

    平成20年3月 兵庫医科大学卒業
    平成20年4月 医師免許取得
    平成22年4月 兵庫医科大学 産科婦人科
    平成22年7月 大阪府 府中病院 産科婦人科
    平成25年4月 兵庫医科大学病院ささやま医療センター 産婦人科
    平成30年3月 兵庫医科大学大学院卒業
    平成31年4月 兵庫医科大学病院 周産期医療センター長
    令和2年4月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 講師
    令和2年10月 兵庫医科大学病院 産科婦人科 医局長
    令和4年4月 kobaレディースクリニック 副院長
    令和6年6月~ kobaレディースクリニック 院長 兼 理事長

    [所属学会]
    日本産科婦人科学会
    日本生殖医学会
    日本受精着床学会
    日本エンドメトリオーシス学会

    [資格]
    医学博士
    母体保護法指定医
    一般社団法人 日本専門医機構 産婦人科専門医 / 産婦人科指導医
    一般社団法人 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 / 生殖医療指導医

    監修医:Kobaレディースクリニック 加藤徹 院長

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