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    亜鉛はなぜ妊婦や妊活中に必要?不足するとどうなる?

    妊婦や妊活中になぜ亜鉛が大切なのかの画像

    人間の生命活動に必要不可欠な「必須ミネラル」の一つ「亜鉛」が妊活中の方や妊婦さんにとっても大切と言われる理由をご存じですか?
    妊活中の方や妊婦さんに亜鉛が必要な理由や、どのくらいの亜鉛が必要なのか、過剰摂取のリスクはあるのか等について解説します。また、亜鉛は体内で作ることができないため、食事から効率的に摂取するための食材やレシピもご紹介します。

    監修医 俵IVFクリニック 俵理事長/院長の画像

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    亜鉛はどんな栄養素?

    亜鉛は「必須ミネラル」の一つ

    で、成人の体内には、約 2,000 mg 存在していると言われています。多くは、筋肉や骨に存在しますが、皮膚や脳、肝臓、腎臓、膵臓、前立腺、毛髪などの臓器や組織にも存在します。

    亜鉛は数百の酵素(主にたんぱく質で構成されており、生命活動を行う上で必要な化学反応を促進するもの)の構成要素です。そのため、からだの機能を維持する作用や、DNAやタンパク質の合成など細胞を新しくつくる作用、免疫反応の調節など様々な生体内の反応に関与しています。

    亜鉛の特徴を記した画像

    妊婦や妊活中の女性に亜鉛が必要な理由とは?

    そもそも、日本の成人女性は、亜鉛が不足気味といわれていますが、なぜ妊婦や妊活中の女性は、意識的に亜鉛を摂取したほうが良いのか、不足するとどのようなリスクがあるのかを説明します。

    亜鉛が妊婦に必要な理由とは?不足したらどうなる?

    妊婦さんに亜鉛が必要と言われる理由は、主に胎児への影響からです。

    亜鉛は、DNAなどの細胞分裂にも必要とされるため、胎児の成長に欠かせません。また亜鉛は、骨や筋肉の成長にも深く関わっているため、不足すると、

    成長障害や骨格奇形や低身長・低体重のリスクが高まる可能性がある

    と言われています。

    妊娠中は必要な血液量が増えるため、必要な亜鉛の量も増えるのですが、妊娠中・授乳中の女性の亜鉛摂取量は、1日に必要な亜鉛の推奨量に比べると少ないと報告されています。
    亜鉛が不足すると、貧血や免疫機能低下による感染症への罹患などのリスクも高まるため、お母さんのためにも、通常時よりも意識的に亜鉛を摂取すると良いでしょう。

    亜鉛が妊活中に大切と言われる理由とは?不足しているとどうして良くないの?

    亜鉛は、エストロゲン(卵胞刺激ホルモン)やプロゲステロン(黄体化ホルモン)といった

    排卵や着床に関係する女性ホルモンの働きを高めるほか、子宮の環境を整える働きに期待

    ができるため、妊活中に大切と言われています。

    不足すると女性ホルモンが減少し、卵巣機能の低下や排卵がスムーズに行われない、卵子の成長が妨げられるといったことが起こり、月経不順や不妊症を引き起こす可能性があります。

    亜鉛が妊活中の男女に大切な理由の画像

    妊活中の男性にも亜鉛は大切!

    亜鉛は、男性ホルモンであるテストステロンの生成に必要な栄養素です。亜鉛が不足すると、精子量の減少や無精子症、運動率の低下、インポテンツなどを招く可能性があるため、妊活中は男性も亜鉛を意識的に摂取するとよいでしょう。

    妊活・妊娠中(妊婦)に必要な亜鉛の摂取量

    妊婦さんや妊活中の方は、亜鉛を意識的に摂取したほうがよい一方で、摂取量には気を付ける必要があります。

    亜鉛の推奨摂取量

    成人男性では11mg、女性は8mgが亜鉛の1日の推奨量とされていますが、妊婦の血清中亜鉛濃度は、初期 72.7 µg/dL、中期 63.8 µg/dL、後期 62.1 µg/dL、出産時63.3 µg/dLと、妊娠期間が進むにつれて低下することがわかっています。

    これらのことを踏まえ、

    妊娠期間中の妊婦さんは通常より2mg/日を付加することが推奨

    されています。そのため、妊婦さんの亜鉛の摂取推奨量は10mg/日となります。ちなみに、授乳婦は4mg/日の付加が推奨されており、12mg/日が亜鉛の摂取推奨量となります。

    亜鉛の推奨量を記載した画像

    亜鉛の過剰摂取

    18~49歳の女性の場合、亜鉛の摂取上限量(耐容上限量)は35mg/日です。妊婦・授乳婦においては、十分な報告がないことから、特別な耐容上限量は設定されていません。なお、男性の場合は18~29歳で40mg/日、30~49歳は45mg/日とされています。

    「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より

    亜鉛の耐容上限量を記載した画像

    亜鉛サプリメントや亜鉛強化食品等を過剰摂取すると急性亜鉛中毒になる可能性があり、発熱や胃障害、めまい、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。

    また、亜鉛を過剰に摂取してしまうと、鉄や銅の吸収を阻害することによる貧血や銅欠乏を招くほか、HDLコレステロールの低下を引き起こすといった報告もあります。

    亜鉛サプリメントなどを継続して摂り入れる場合は、上限量を超えないようにしましょう。

    亜鉛が含まれている食材(食品)

    亜鉛は体内では作られないので、毎日の食事で摂取する必要があります。
    亜鉛は、魚介類や肉類、豆類、殻類など様々な食品に含まれています。以下に亜鉛を多く含む食材と亜鉛の含有量(可食部100gあたり)を掲載します。日々の食事や献立の検討にお役立てください。

    出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

    亜鉛を多く含む食材の画像

    亜鉛を多く含む魚介類

    魚介類の中では、牡蠣に亜鉛が豊富に含まれています。妊婦さんや妊活をされている方が亜鉛を摂りたい場合、おすすめの食材です。妊娠中は生牡蠣ではなく加熱調理した牡蠣で亜鉛を摂取するのがよいでしょう。
    牡蠣(燻製油漬缶詰)25.0mg
    牡蠣(水煮)18.0mg
    牡蠣(生)14.0mg
    牡蠣(フライ)12.0mg
    ホタテ貝(生)2.7mg
    ウナギ(養殖/生)1.4mg
    かたくちいわしの煮干し7.2mg
    たらばがに(水煮缶)6.3mg
    たらこ(焼き)3.8mg

    亜鉛を多く含む肉類

    身近な肉類にも亜鉛は多く含まれています。
    和牛(肩/赤肉/生)5.7mg
    和牛(もも/赤肉/生)4.7mg
    ビーフジャーキー8.8mg
    コンビーフ(缶詰)4.1mg
    豚肉(レバー/生)6.9mg
    豚肉(ヒレ/赤肉/生)2.2mg
    豚肉(ヒレ/赤肉/とんかつ)2.7mg
    鶏肉(レバー)3.3mg
    ラム(かた/脂身つき/生)5.0mg
    ラム(もも/脂身つき/焼き)4.5mg

    亜鉛を多く含む豆類

    豆類では、凍り豆腐(高野豆腐)が亜鉛を豊富に含みますが、料理などの手間なしに亜鉛を摂取できるという意味では、カシューナッツやアーモンドを間食として取り入れるのも良いでしょう。
    凍り豆腐 5.2mg
     ※「高野豆腐」と「凍み豆腐」の総称
    カシューナッツ(フライ/味付け)5.4mg
    アーモンド(いり/無塩)3.7mg
    きなこ(全粒大豆/黄大豆)4.1mg
    大豆(全粒/黄大豆/国産/乾)3.1mg
    納豆(糸引き納豆)1.9mg

    亜鉛を含む野菜類

    魚介類や肉類、豆類などに比べると、野菜な亜鉛を多く含んでいません。しそのように、100gあたり1.3mg亜鉛が含有しているといっても、1回で100g食べるのが難しい野菜もあります。
    切り干し大根(乾)2.1mg
    えだまめ(生)1.4mg
    しそ(生)1.3mg
    たけのこ(若茎/生)1.3mg

    亜鉛を多く含む穀類

    白米より玄米、玄米よりオートミールに多く亜鉛が含まれます。亜鉛不足を感じる場合は、ごはんをオートミールに切り替えて亜鉛の摂取量を増やすという方法もあります。

    焼き麩(板ふ)2.9mg
    オートミール2.1mg
    とうもろこし(玄穀/黄色種)1.7mg
    こめ(水稲穀粒/玄米)1.8mg
    こめ(水稲めし/玄米)0.8mg
    こめ(水稲穀粒/精白米/うるち米)1.4mg
    こめ(水稲めし/精白米/うるち米)0.6mg
     ※「穀粒」は米粒のことで、「めし」は炊いたご飯のこと。

    亜鉛を含む卵類

    卵にも亜鉛が含まれています。全卵1個(Mサイズ50g)摂取すると、0.55mgの亜鉛を摂取することができます。卵だけで1日の亜鉛の推奨量を満たすことは難しいですが、卵は他の亜鉛を含む食材とも組み合わせやすい食材ですので、上手に取り入れると良いでしょう。

    卵(鶏卵/全卵/生・ゆで)1.1mg

    亜鉛を含む果実類

    果物類は、魚介類や肉類、豆類などに比べると亜鉛を多く含んではいません。その中でも比較的手軽に入手できるものとしては、ドライフルーツがあります。間食で手軽に摂取できますが、糖質も高いので摂取量には気を付けましょう。

    あんず(乾)0.9mg
    なつめ(乾)0.8mg
    いちじく(乾)0.6mg
    バナナ(乾)0.6mg

    食材ごとの亜鉛含有量を記載した画像

    亜鉛を摂り入れる上でのポイント

    亜鉛は、ビタミンCやクエン酸、柑橘系の果物などと一緒に摂取すると吸収効率が高まります。
    また、タンパク質を含む食材と一緒に亜鉛を摂取すると、タンパク質合成が促進されます。


    一方、加工食品に含まれるポリリン酸などの食品添加物は、亜鉛の吸収を阻害すると言われています。また、アルコールを摂り過ぎると、亜鉛の排泄量が増加してしまいます。普段から加工食品を多く食べている方やアルコールを多く摂っている方は、日々の食生活から見直されるのがよいでしょう。

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    妊活中の方や妊婦さんにオススメ!亜鉛を含む食材を活かしたレシピ

    亜鉛を含むレシピ

    亜鉛を含む食材を使ったVarinosのオリジナルレシピをご紹介します。
    ()内の亜鉛の量は、1人前あたり

    「厚揚げとエリンギのベジカレーライス」(亜鉛2.3㎎)

    「鶏肉とシーフードの具だくさんカレーパエリア」(亜鉛3.8mg)

    「ラムのプルコギ風」(亜鉛2.9mg)

    「焼き鮭とチキンのパワーサラダ」(亜鉛3.7mg)

    亜鉛以外に、妊活・妊娠中(妊婦)に大切なラクトフェリン、葉酸、ビタミンD

    亜鉛は、妊婦さんや妊活中の男女に必要な栄養素であること、また、亜鉛は様々な食材にも含まれており、日々の食事を工夫することで食べ物から必要量を摂取できることがお分かりいただけたと思います。
    ただ、妊婦さんや妊活中の女性に大切な栄養素の中には、日々の食事(食べ物)からは十分な量を摂取するのが難しい栄養素もあります。
    それが、ラクトフェリンや葉酸、ビタミンDです。

    赤ちゃんが過ごす子宮にとって大切なラクトフェリン

    ラクトフェリン(Lactoferrin)は、鉄と結合する性質をもった多機能性の鉄結合性糖タンパク質です。
    抗菌・抗ウイルス活性や腸内細菌のバランスを整える作用、鉄吸収調節作用など以外に、

    腟内や子宮内の常在菌のバランスを整える作用がある

    ことから、妊活や妊娠中の妊婦さんにも大切な栄養素として知られています。

    子宮内の菌環境(子宮内フローラ)は、妊娠率や生児獲得率に影響することがわかっています。(下図)

    子宮内ラクトバチルスの妊娠・出産への影響報告データ

    ラクトフェリンは、子宮内の善玉菌・ラクトバチルスが増えやすい環境をつくるのに力を貸してくれる栄養素です。しかし、熱や胃液に弱いことから、食べ物から十分な量を摂取するのが難しい栄養でもあります。

    ラクトフェリンが注目される理由とは?効果効能や効率的な摂取方法

    ラクトフェリンを食材から摂るには?

    赤ちゃんにも妊婦さんにも大切な葉酸

    葉酸は二分脊椎など胎児の神経管閉鎖障害の発症リスク低減のため、妊娠初期に赤ちゃんのために摂取したほうが良い栄養素としてご存じの方も多いかもしれません。しかし、最近では、

    葉酸が十分摂取できていると「妊娠率が上がる」「流産率が下がる」「産後うつが軽減する」

    といったことがわかってきており、

    不妊治療など妊活中から産後まで大切な栄養である

    と言われるようになってきています。

    知ったら絶対摂りたくなる!?~「葉酸」が妊娠前から妊娠中ずっと大切な理由とは?

    葉酸は食べ物からも摂取できますが、日本では2000年に厚生労働省から、妊娠の可能性がある女性は、通常の食事から葉酸240㎍の摂取に加え、サプリメントなどの栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取することによって胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できる可能性についての通知が出されました。
    なお、この通知において、神経管閉鎖障害のリスク低減のための葉酸の摂取時期はおよそ妊娠1か月以上前から妊娠3か月までとされていることからも、妊娠してから葉酸摂取を始めるのではなく、妊活を始めたら摂取を検討するのが良いと言えるでしょう。

    多くの人が欠乏するビタミンDは、妊活中の方や妊婦さんにも大切な栄養素

    ビタミンDは免疫力を高める栄養素として注目されていますが、近年、不妊治療など妊活期や妊娠中の妊婦さんにも必要な栄養素であることがわかってきています。

    血中ビタミンD濃度が充足していると

    ・卵の質(良好胚率が高い)と関係
    ・着床率・妊娠率・出産率が高く、化学流産率・自然流産率が低い
    ・ 40歳以上の女性ではAMH(卵巣予備能検査)が高い

    ということが示唆されています。

    反対に、ビタミンDが不足していると

    ・習慣流産の原因となりうる

    ということも言われています。

    “卵の質と数”の観点でも注目を集める「ビタミンD」とは?~充足群では流産率低減も

    ビタミンDは、鮭や乾燥しいたけなどビタミンDを含む食材からの摂取や日光にあたることで生成することもできますが、食生活やお住まいに地域によっては、これらだけでは充足されないことがあります。
    実際、日本人の多くはビタミンD不足とも言われています。

    そのため、サプリメントなどを効率的に活用し、ビタミンDを充足させるのも一つの方法です。

    妊婦や妊活中の男女に必要な「亜鉛」のまとめ

    今回は、妊婦さんや妊活中の男女に必要な栄養素「亜鉛」についてご紹介しました。亜鉛は、日々の食生活を意識することで、必要量を摂取できる栄養素でもあります。過剰摂取には気を付けながら意識的に亜鉛を摂取していただくとよいでしょう。
    ・人間の生命活動に必要不可欠な「必須ミネラル」の一つ。
    ・DNAなどの細胞分裂にも必要とされるため、胎児の成長に欠かせない栄養素。妊婦や授乳期間中は通常時よりも多くの亜鉛摂取が推奨されており、妊婦さんの摂取推奨量は10mg/日、授乳婦は12mg/日の亜鉛摂取が推奨されている。
    ・魚介類や肉類、豆類に亜鉛を多く含む食材がある。
    ・亜鉛は、ビタミンCやクエン酸、柑橘系の果物などと一緒に摂取すると吸収効率が高まり、タンパク質を含む食材と一緒に亜鉛を摂取すると、タンパク質合成が促進される。
    ・加工食品に含まれるポリリン酸などの食品添加物は、亜鉛の吸収を阻害。また、アルコールを摂り過ぎると、亜鉛の排泄量が増加してしまう。

    この記事の監修者

    医療法人社団 俵IVFクリニック
    俵 史子 理事長/院長

    浜松医科大学 医学部卒業
    平成15年~ 豊成会竹内病院 トヨタ不妊センター
    平成19年 9月 俵史子IVFクリニック 院長
    現在 医療法人社団 俵IVFクリニック 理事長/院長

    [専門医・指導医]
    日本産科婦人科学会 産婦人科専門医 指導医
    日本生殖医学会 生殖医療専門医 指導医
    日本臨床遺伝専門医

    [役職]
    国立大学法人浜松医科大学 臨床教授・非常勤講師
    日本受精着床学会 評議員

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