子宮内フローラって何だろう?~生理痛・におい・性感染症など“今の悩み”から、将来の妊娠・出産まで関わる菌のこと

目次
子宮内フローラとは何?
子宮内フローラとは子宮の中の多種多様な菌の集まりのことです。
多種多様な菌が集まる様子がお花畑のように見えることからフローラ(flora)と呼ばれるようになりました。
「菌」に対し、“悪いもの”というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、私たち人間は菌と共存しており、とても大事な存在でもあります。
「善玉菌」「悪玉菌」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、善玉菌は良い働きを、悪玉菌は良くない働きをし、その結果、私たちに様々な影響を及ぼします。

(「日和見菌」という、それ自体は良くも悪くもない菌ですが、悪い菌が多いと、悪い菌の方に加担してしまうような菌も存在します。)
例えば
●女性特有のトラブル
・重い生理痛
・デリケートゾーンのにおい
・性感染症 (女性は無症状で気づかないうちに進行しているものも)
・慢性子宮内膜炎
●妊娠・出産
・妊娠できない
・妊娠しても流産してしまう
・早産してしまう
といったトラブルにも菌が関わっていることがあります。
「女性特有のトラブル」と「妊娠・出産」との関係について、それぞれ詳しくご紹介します。
女性特有のトラブルと子宮内フローラ(腟内フローラ)の関係
本来、腟内や子宮内では、善玉菌である乳酸桿菌・ラクトバチルスにより雑菌や病原体が生息しづらい「酸性環境」に保たれています。
しかし、何かしらの影響で善玉菌・ラクトバチルスが減り悪玉菌が増えると、様々な影響が出てくることがわかっています。

*子宮内フローラは子宮内の菌環境のことですが、子宮内フローラは腟内フローラ(腟の菌環境)との相関があるとされています。「上行(じょうこう)感染」といい、腟を経由して子宮に菌が入ることもあるからです。
女性特有のトラブルにおいては、子宮内フローラだけではなく腟内フローラも関係していることがあるため、腟の菌環境にも触れながらご紹介します。
重い生理痛
重い生理痛の原因の一つが子宮内膜症です。
子宮内膜症とは、子宮内膜あるいはその類似組織が子宮内膜以外の場所に存在する疾患です。重い生理痛や月経過多、性交痛、排便時痛などの症状が現れるのが特徴です。
そして、
子宮内膜症の発症を促す要因の一つにフソバクテリウムという細菌がある
ことが近年わかってきました。*

*名古屋大学「フソバクテリウム細菌感染は子宮内膜症の発症を誘導する」
デリケートゾーンのにおい
においの発生には、汗や尿、生理中の経血など様々な要因がありますが、
背景には「細菌の増殖」
も関係しています。
ケース① デリケートゾーンの疾患によるもの
ケース② 皮膚の炎症によるもの
ケース③ 体質によるもの
ケース④ 洗いすぎによるもの
ケース⑤ 免疫力低下によるもの
ケース⑥ 年齢によるもの

①~⑥は、「菌とは関係ないのでは?」と思うものもあるかもしれませんが、実は菌と関係しています。
▼各ケースの詳細は、以下の記事でご紹介しています。
デリケートゾーンの臭い …善玉菌・ラクトバチルスが減っている可能性も
https://varinos.com/contents/knowledge20220712/
性感染症
腟内フローラが乱れ、善玉菌・ラクトバチルスが減ると、性感染症の原因となるウイルス(子宮頸がんの原因菌であるHPVなど)や細菌(クラミジア、梅毒、淋菌など)の増殖を許してしまい、感染しやすくなるとされています。
梅毒は2022年に報告数が急増し、最新の報告である2024年も高い数字を維持しています。また、性器クラミジア感染症や淋菌感染症の感染者は20代で増加していると報告されています。*
HPVや梅毒、クラミジアなどの性感染症は、将来の健康や妊娠・出産にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、感染しないための対策を意識することも大切です。
*厚生労働省「日本の性感染症の発生動向」令和7年8月7日発表
慢性子宮内膜炎
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に長期間にわたって炎症が起きている状態のことです。不妊症や不育症の原因になることもあることがわかってきています。
慢性子宮内膜炎の原因は様々ですが、
最も多いとされているのが細菌感染によるもの
です。
不正性器出血や骨盤痛を認める場合もありますが、基本的に無症状であることが多く、気が付きにくいとされています。

▼詳しくは以下の医師監修記事でご覧いただけます。
慢性子宮内膜炎とは何?代表的な原因菌とは?
https://varinos.com/contents/dr-interview20240216-2/
自分の子宮内環境を知る方法~腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT
菌を味方につけるには、まずご自身の菌環境を知ることが大切です。
手軽にご自身の子宮内フローラを知ることができるのが「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」です。ご自宅に送られてくるキットに入っている綿棒のような採取器具で腟から検体を採取いただき、それを専用の容器に入れ郵送いただくと、腟内フローラから子宮内フローラを予測し、結果がメールで送られてきます。
「今」のご自身の菌環境を知ることが、「未来」のご自身を救うことにつながるかもしれません。

*「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」は確定診断ではありません。またすべての菌を網羅的に検出するものではなく、ラクトバチルスや細菌性腟症の原因菌などを検出しご報告するものです。
*性感染症に感染している可能性のある方や何かしらの異常を感じている方は、婦人科などの医療機関を受診してください。
▼「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」の詳細はこちらから
https://varinos.com/contents/knowledge_checkkit20230510/
妊娠・出産と子宮内フローラの関係
子宮内に菌がいるとわかったのは、実は2015年です。それまで子宮は無菌と考えられていました。その後2016年に、
子宮内に善玉菌・ラクトバチルスが少ないと妊娠率・出産率が低いという発表
(下図)があってから現在に至るまで、子宮内フローラと妊娠・出産について様々な研究がおこなわれています。

なぜ良い菌が少なく、悪い菌が増えると妊娠できないことがあるのか?
善玉菌・ラクトバチルスは、子宮内や腟内を酸性環境にし、悪玉菌が増殖しづらい環境を作ってくれます。
しかし、何かしらの影響でラクトバチルスが減り悪玉菌が増殖すると、悪玉菌を排除しようと、からだの免疫が活性化されます。
本来なら良いことのように思いますが、
精子や胚(受精卵)はお母さんの体からすると異物とみなされ免疫に攻撃され、その結果、妊娠が成立しなくなってしまう
ことがあります。

妊娠できても菌の影響で流産・早産になってしまう可能性があるとはどういうこと?
菌の中には、流産や早産を引き起こすものがあることもわかってきています。
例えば、
性感染症の原因菌であるウレアプラズマやマイコプラズマ
(マイコプラズマ肺炎の菌とは別の種)です 。


▼子宮内フローラと流産・早産との関係は、以下の記事で論文を紹介しながら解説しています。
https://varinos.com/contents/ninkatsukenkyukai240214-1/
子宮内の菌環境は「子宮内フローラ検査」で調べることができる
不妊治療を行う医療機関を中心に、子宮内フローラ検査(Varinos社)が導入されており、子宮内の菌を網羅的に調べることができます。
妊活や不妊治療を始めてもなかなか上手くいかないという場合、妊娠できない原因や流産早産を繰り返してしまう原因を調べる過程で、医師が必要に応じ子宮内フローラ検査を実施します。
▼子宮内フローラ検査に関する詳細はこちらから
https://varinos.com/services/flora/
子宮内フローラ検査の結果が悪かった場合、治療できる?
子宮内フローラ検査の結果が良くなかった場合、菌環境に応じた抗菌薬やプロバイオティクス(ラクトバチルスなどの菌そのもの)やプレバイオティクス(ラクトフェリンなど菌をサポートする役割の栄養素)などのサプリメントにより、多くのケースで改善できることがわかってきています。
そして、最新の研究では、子宮内フローラが「元々良好な方」より「異常があり治療した方」の方が、妊娠率が高いということも示されました。
▼詳細は以下の記事で論文を紹介しつつ解説しています。
https://varinos.com/contents/flora-nldm202511/
子宮内フローラは女性の健康や妊娠・出産に関係する大切な存在
子宮内フローラと女性の健康や妊娠・出産の関係についてご紹介いたしました。
子宮内フローラは目で見ることができません。また、もしフローラが良くなくても目立った症状がないこともあります。
今と未来のご自身の健康のため、また将来的な妊娠・出産したいと考えている方はその時のためにも、まずは「子宮内フローラ」という存在を覚えておいてください。
そして、もし女性特有のトラブルや思うように妊娠・出産できないときが訪れた場合、子宮内フローラや腟内フローラが関係しているかもしれないということを思い出してください。そのときは、「腟内検体採取式 子宮内フローラCHECK KIT」や医療機関で「子宮内フローラ検査」を受検し、一度ご自身の菌環境を調べてみるのも一つの方法です。
▼「子宮内フローラ検査」が受けられる医療機関一覧
https://varinos.com/flora-facility/
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